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一級建築士施工鉄骨工事高力ボルト溶接建方精度スタッド2026年

一級建築士【施工】鉄骨工事の数値は「理由」で覚える|高力ボルト・溶接・建方精度・スタッドを図解

施工シリーズ第4弾は、ボリューム最大の鉄骨工事です。

高力ボルトの締付け、建方精度、溶接、スタッド溶接……数値も用語も多い分野ですが、ここまでのコンクリート鉄筋型枠と同じく、鉄骨という構造の性格を理解すれば、数値は理由から導けます

じっくり丁寧に進めていきましょう。

⚠️ 数値はJASS 6(鉄骨工事)・建築工事標準仕様書等に基づく代表値です。実務・最新版では条件により異なる場合があります。


鉄骨工事の性格——「工場で精密に作り、現場で組む」

鉄骨造(S造)の最大の特徴は、部材を工場で精密に製作し、現場では組み立てる(建てる)だけという点です。コンクリートのように現場で「材料から作る」のとは対照的です。

ここから、鉄骨工事の数値を貫く3つの軸が出てきます。

① 接合が命——部材どうしのつなぎ目(高力ボルト・溶接)の品質がそのまま建物の強さになる ② 精度が命——工場製作・現場建方ともに、ミリ単位の精度管理が要る ③ 熱に弱い——鋼材は火に弱いので、耐火被覆で守る

「接合・精度・耐火」。この3点で鉄骨工事の数字はほぼ説明できます。

鉄骨工事の流れ

鉄骨工事の流れ(工場 → 現場) ① 工場製作 切断・孔あけ・溶接 ② 運搬 現場へ ③ 建方 仮ボルトで組む ④ 接合(本締め) 高力ボルト・溶接 ⑤検査 精度・溶接

① 鋼材と耐火被覆——「強いが熱に弱い」

鋼材の性質はS造の構造記事で詳しく扱いましたが、施工で外せない1点を復習します。

鋼材は約350℃で強度が常温の約2/3に低下し、さらに高温になると急激に弱くなる。

火災で鋼材が高温になると、建物が一気に崩れる危険がある。だから耐火被覆で鉄骨を守ります。

耐火被覆の方法特徴
吹付けロックウール繊維状の材料を吹き付ける。一般的
巻付け・成形板張りロックウールフェルト等を巻く/板を張る
耐火塗料火災時に発泡して断熱層を作る。鉄骨を見せたいときに有効

「鋼材は熱に弱い→だから耐火被覆」という因果を押さえておきましょう。


② 工場製作(加工)——精度はここから始まる

部材は工場で加工されます。施工の出題ポイントを整理します。

工程ポイント
けがき加工の基準線を引く。490N/mm²級以上の鋼材には、強度低下の原因になるたがね・ポンチの打こん(傷)を残さない
切断ガス切断・機械切断など。切断面の精度を確保
孔あけ高力ボルト孔はドリルあけが原則(せん断あけは精度・品質が劣る)
開先(かいさき)溶接のために部材端を斜めに加工。溶接が奥まで届くようにする溝

「高張力鋼に打こんを残さない」は頻出。傷が応力集中・割れの起点になるためです。


③ 建方——ミリ単位の精度で組み立てる

工場から運ばれた部材を現場で組み立てる工程。手順に沿って数値の理由を見ます。

アンカーボルトとベースモルタル

柱脚は、基礎から出たアンカーボルトに固定します。柱を据える前に、レベル調整用のベースモルタルを施工します。

  • アンカーボルトは二重ナット等で緩み止めをする
  • ねじ山は、ナットから**外に出る(突き出る)**ように余長を確保

仮ボルト——「とりあえず留める」段階

建方では、まず仮ボルトで部材を仮留めし、全体の形と精度を調整してから本締めします。

仮ボルトの本数(ボルト1群あたり) 高力ボルト継手 1/3程度 かつ 2本以上 中ボルトを使う 混用・併用継手 1/2程度 かつ 2本以上 より多めに留める
  • 高力ボルト継手:仮ボルトは1群に対し1/3程度かつ2本以上
  • 混用・併用継手:1/2程度かつ2本以上(より多め)
  • 仮ボルトには中ボルト(普通ボルト)を使う。本締め用の高力ボルトを流用すると、建入れ直しのときに動いてボルトが傷むため

建入れ直しと建方精度

組み上げた骨組の倒れ・ねじれを直す作業が建入れ直し(ワイヤーロープ・ターンバックル等で調整)。最終的に建方精度の許容差に収めます。

項目管理許容差限界許容差
建物の倒れ(高さH)H/4000+7mm かつ 30mm以下H/2500+10mm かつ 50mm以下
  • 管理許容差=施工の大半(おおむね95%以上)が収まるべき目標値
  • 限界許容差=これを超えてはならない限界値

2段階あるのは「目標は管理許容差、最低でも限界許容差は死守」という品質管理の考え方です。


④ 高力ボルト接合——「摩擦」で留める

高力ボルトは、強く締め付けて板どうしを圧着し、その摩擦力で力を伝える接合(摩擦接合)。原理はS造の構造記事で扱ったので、ここでは**施工(締め方・検査)**を深掘りします。

高力ボルト摩擦接合の断面 母材を添え板で挟み高力ボルトで締め付け、接触面(摩擦面)の摩擦で引張力を伝える。ボルト頭・座金2枚・ナット・余長を示す。 高力ボルト摩擦接合のしくみ(断面) 引張力 引張力 摩擦面 ボルト頭 座金(2枚) ナット 余長(1〜6山) 添え板 母材 強く締めて板を圧着 → 接触面の摩擦で力を伝える(添え板=スプライスプレート/孔径は公称+2mm以下)

摩擦面の処理

摩擦で伝えるので、接触面の状態が命。

  • すべり係数0.45以上を確保する(赤錆を発生させる、またはブラスト処理)
  • 塗装してはならない(つるつるで摩擦が落ちる)
  • 黒皮(ミルスケール)は除去する

締付けの2方法

高力ボルト 締付けの2方法 トルクコントロール法 目標トルク値まで締める トルク∝張力を利用 トルシア形が代表 ナット回転法 一次締め後、ナットを 120°回転 回転角で管理
方法締め方確認
トルクコントロール法目標トルク値まで締める(締付トルクと張力が比例)トルシア形ならピンテールの破断
ナット回転法一次締め後、ナットを120°回転マーキングのずれ角

締付けの手順と順序

締付けは必ず3段階で行います。

① 一次締め(仮に締める)

② マーキング(ボルト・ナット・座金・母材に一直線の印)

③ 本締め(トルクor120°回転)

マーキングをするのは、本締めでナットがちゃんと回ったか・共回りしていないかを線のずれで確認するため。

そして締付けの順序も重要。

ボルト1群の中央部から端部(外側)へ向かって締めていく。

外側から締めると、内側に板の浮き・すき間が残ってしまう。中央から締めれば、すき間を外へ逃がしながら確実に圧着できます。

トルシア形高力ボルトと確認方法

  • トルシア形:本締めすると先端のピンテールが破断する。破断していれば本締め完了が一目でわかる
  • 高力六角ボルト:マーキングのずれを目視し、締め忘れ・共回りをチェック
  • ボルトの余長:ねじ山がナットから1〜6山程度突き出ているのが適正

「ピンテールが折れた=ちゃんと締まった印」と、検査の数字を意味で覚えましょう。


⑤ 溶接接合——「溶かして一体化する」

もう一つの接合が溶接。母材を溶かして一体化するため、品質管理がシビアです。

溶接の種類と部位の名称

開先溶接とすみ肉溶接 完全溶込みの開先溶接(開先・ルート間隔・裏当て金・余盛)と、すみ肉溶接(脚長Sとのど厚a≒0.7S)の断面図。 開先溶接(完全溶込み) すみ肉溶接 開先角度 余盛 ルート間隔 裏当て金 のど厚 a ≒ 0.7S 脚長 S 脚長 S 余盛 完全溶込み=開先+裏当て金(始終端はエンドタブ)/すみ肉=のど厚 a ≒ 0.7×脚長S
用語意味・役割
開先(グルーブ)溶接金属を奥まで充填するための溝。完全溶込み溶接で重要
エンドタブ始端・終端に付ける仮設の板。欠陥が出やすい両端を母材の外に逃がす
スカラップ溶接線どうしの交差を避けるための扇形の切欠き。応力集中を防ぐためノンスカラップ工法も増加
裏当て金完全溶込み溶接で、裏側から溶け落ちを防ぐ

溶接の品質を左右する条件

  • 予熱:厚板・低温時は、溶接前に母材を温める。急冷による割れを防ぐため
  • 気象気温−5℃未満では溶接しない。−5〜5℃では接合部を適切に加熱すれば可。雨・強風時も原則中止(品質が不安定)
  • 開先内・溶接部の水分・油・錆は除去(欠陥の原因)

溶接欠陥と検査

溶接は内部が見えないので、欠陥の種類と検査方法がセットで問われます。

主な欠陥内容
ブローホール・ピット内部・表面の気泡
アンダーカット母材がえぐれて溝になる
オーバーラップ溶接金属が母材に乗り上げ未融合
溶込み不良・スラグ巻込み溶け込み不足・不純物の混入

検査は**外観検査+超音波探傷試験(UT)が基本。UTは内部の欠陥を壊さずに調べる(非破壊検査)**ため、完全溶込み溶接部の内部品質確認に使われます。


⑥ スタッド溶接——床(デッキ)と鉄骨を一体化

スタッドとは、鉄骨梁の上に植える頭付きの棒。コンクリート床と鉄骨を一体化させる(ずれ止めの)役割です。アーク放電で一気に溶接します。

検査基準が頻出なので、数値の意味とともに押さえます。

スタッド溶接の検査 頭付きスタッドの各部(頭・軸・カラー)と検査基準(仕上り高さ±2mm以内、傾き5°以内、アンダーカット0.5mm未満で合格)、および打撃曲げ試験(施工後15°曲げて割れなければ合格)を示す断面図。 スタッド溶接の検査 ① 各部と検査寸法 仕上り 高さ ±2mm 頭付きスタッド カラー 全周に出ればOK 傾き 5°以内 アンダーカット 0.5mm未満で合格 ② 打撃曲げ試験 15° 打撃 施工後 15° 曲げて割れなければ合格 (施工前の試験は30°)
検査基準なぜ
仕上り高さ±2mm以内規定どおり溶け込んでいる証
傾き5°以内まっすぐ植わっているか
カラー(根元のふくらみ)全周に包囲溶接が全周でできた証
アンダーカット0.5mm以上は不良えぐれは欠陥
打撃曲げ試験施工後**15°**まで曲げて割れなし溶接部の健全性を実際に曲げて確認

打撃曲げで合格したスタッドは、曲げたまま元に戻さず使用してよい、という点もよく出ます。


○×で総チェック

Q1. 高力ボルトの摩擦面は、すべり係数を高めるため塗装する。

×。塗装は摩擦を低下させる。赤錆・ブラストで0.45以上を確保。

Q2. ナット回転法では、一次締め後にナットを120°回転させて本締めする。

。トルクコントロール法は目標トルクで管理。

Q3. 高力ボルトの締付けは、ボルト群の端部から中央へ向かって行う。

×中央から端部へ。すき間を外へ逃がすため。

Q4. 仮ボルトには、本締めに用いる高力ボルトを使用する。

×中ボルトを使う。高力ボルトを流用すると建入れ直しで傷む。

Q5. 建方時の仮ボルトは、高力ボルト継手1群に対し1/3程度かつ2本以上とする。

。混用・併用継手は1/2程度かつ2本以上。

Q6. 溶接の始端・終端の欠陥を避けるため、エンドタブを用いる。

。欠陥が出やすい両端を母材の外に逃がす。

Q7. 気温が−5℃未満でも、接合部を加熱すれば溶接してよい。

×。−5℃未満は溶接しない。−5〜5℃なら加熱して可。

Q8. スタッド溶接の打撃曲げ試験(施工後)は、15°まで曲げて欠陥がないか確認する。

。合格品は曲げたまま使用してよい。

Q9. 建物の倒れの管理許容差は、H/4000+7mm かつ30mm以下である。

。限界許容差はH/2500+10mm かつ50mm以下。


まとめ——鉄骨工事の数値も「理由」で導ける

  • 鉄骨工事は①接合が命 ②精度が命 ③熱に弱いの3軸で整理できる
  • 鋼材は350℃で2/3に低下→耐火被覆で守る
  • 高力ボルトは摩擦接合:塗装NG・0.45、一次締め→マーキング→本締め中央から端部へ、ナット回転法は120°、トルシア形はピンテール破断で確認
  • 仮ボルトは中ボルトで1/3かつ2本(混用1/2かつ2本)
  • 建方精度(倒れ)はH/4000+7mm・30mm以下(管理許容差)
  • 溶接はエンドタブ・スカラップ・予熱・−5℃未満は不可、検査は外観+超音波探傷(UT)
  • スタッド溶接は仕上り高さ±2mm・傾き5°・打撃曲げ15°

鉄骨は「工場で精密に作った部材を、現場で正確に組んで、確実につなぐ」構造。だからこそ、接合の品質と精度にあらゆる数値が集中している——この視点を持てば、バラバラの数字が一本の筋でつながります。

施工シリーズは今後、地業工事・仕上げ工事なども順次公開予定です。


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