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一級建築士構造鉄骨構造S造高力ボルト溶接幅厚比文章題2026年

一級建築士【構造】鉄骨構造の知識まとめ|高力ボルト・溶接・幅厚比・柱脚のポイント

構造文章題シリーズ第3弾は鉄骨(S)構造です。

S造の出題は大きく「接合(高力ボルト・溶接)」「座屈(幅厚比・細長比・横座屈)」「鋼材の性質」の3つ。それぞれ整理していきます。


鋼材の性質——「強度が変わってもヤング係数は同じ」

まず材料から。最重要知識はこれです。

鋼材のヤング係数は約2.05×10⁵ N/mm²で、強度(種類)にかかわらずほぼ一定

つまり、高強度の鋼材を使っても変形のしにくさ(剛性)は変わりません。「SN490はSN400よりヤング係数が大きい」という選択肢は誤りです。

用語内容
降伏比降伏点÷引張強さ。小さいほど降伏後の余力が大きく、塑性変形能力(粘り)に優れる
SN材建築構造用圧延鋼材。耐震性に配慮した規格(B種・C種は降伏比の上限などを規定)
数値の意味SN400の「400」は引張強さ(N/mm²)の下限値
  • 鋼材は温度が上がると強度が低下する(約350℃で常温の約2/3程度に低下)。耐火被覆が必要な理由
  • 炭素量が増えると強度は上がるが、伸び(粘り)・溶接性は低下する

鋼材の種類——SS・SM・SNの違い

建築構造用の鋼材記号も問われます。

記号名称用途
SS材一般構造用圧延鋼材一般用途。溶接性の保証は限定的
SM材溶接構造用圧延鋼材溶接性を確保
SN材建築構造用圧延鋼材耐震性に配慮。建築の主要構造部に推奨

SN材はさらに3種に分かれます。

  • A種:一般部材用(塑性変形をあまり期待しない部位)
  • B種:主要な構造部材用。降伏比の上限・シャルピー衝撃値などを規定(粘りを保証)
  • C種:B種に加え、**板厚方向の性能(ラメラテア対策)**を保証。柱梁接合部のダイアフラム等

地震で粘らせたい主要部材はSN-B種」が基本。降伏比に上限があるのは、降伏後にすぐ破断せず変形できる(靭性のある)鋼にするためです。

鋼の弱点——脆性破壊・疲労・ラメラテア

現象内容・対策
脆性破壊低温・切欠き・衝撃で、粘らずに突然割れる。ノッチ(切欠き)を避ける
疲労繰り返し応力で、降伏点以下でも割れが進む。溶接欠陥が起点になりやすい
ラメラテア板厚方向の引張で層状に裂ける。SN-C種で対策

高力ボルト摩擦接合——「摩擦」で力を伝える

S造の現場接合の主役です。原理の理解がそのまま得点になります。

【高力ボルト摩擦接合の原理】

ボルトを強く締め付ける
 ↓
板と板が強い力で圧着される
 ↓
板どうしの「摩擦力」でせん断力を伝える
(ボルトの軸が直接せん断力を受けるのではない!)
高力ボルト摩擦接合=締めて「摩擦」で伝える 強い締付け力 圧着された板の「摩擦」で力が伝わる(軸のせん断ではない)
項目規定・知識
すべり係数摩擦面は0.45以上を確保(赤錆面・ブラスト処理など)
摩擦面の処理塗装してはならない(摩擦力が落ちる)。赤錆はOKどころか推奨
ボルト相互間の中心距離径の2.5倍以上(令第68条)
ボルト孔の径高力ボルトではボルト径+2mm以下(径27mm以上では+3mm以下とできる)
引張力との併用ボルト軸方向に引張力が作用すると圧着力が減り、摩擦力(すべり耐力)は低下する

普通ボルトには使用制限がある(令第67条)

普通ボルト接合(支圧接合)は、ナットの緩みのおそれがあるため、使える建物が制限されています。

延べ面積3,000㎡以下、かつ軒高9m以下・張り間13m以下の建築物に限る(緩み止め措置をした場合)

「大規模建築物に普通ボルトは使えない」と覚えましょう。


溶接——種類と弱点を押さえる

種類特徴強度の考え方
完全溶込み溶接(突合せ)部材断面の全部を溶接で一体化母材と同等の耐力を期待できる
隅肉溶接部材の隅に三角形の溶接有効のど厚=サイズ×0.7 で計算
部分溶込み溶接一部だけ溶け込ませる繰り返し応力や曲げを受ける箇所には使えない

試験で狙われる知識

  • 隅肉溶接のサイズは、薄い方の母材の厚さ以下とする
  • 溶接と高力ボルトを併用する場合、先に溶接すると高力ボルトに力を負担させられない(溶接で固まった後ではボルトの圧着が効かない)→ 高力ボルトを先に締めれば両方の耐力を加算できる
  • 溶接の主な欠陥:ブローホール(気泡)、アンダーカット(母材のえぐれ)、溶込み不良
  • エンドタブ:溶接の始端・終端は欠陥が出やすいため、仮設の板(タブ)の上で始めて終わらせる

接合部の設計思想——「保有耐力接合」

S造で最も重要な設計の考え方がこれです。

継手・仕口(接合部)は、接合される部材が降伏するより先に壊れないように設計する。これを保有耐力接合という。

理由はRCの「曲げ破壊先行」と同じ。地震エネルギーは部材が降伏して粘ることで吸収します。もし接合部が先に壊れると、部材が粘る前に崩壊してしまう。だから接合部を部材より強くしておくのです。

「部材を主役に粘らせ、接合部は脇役として先に壊れさせない」——S造設計の根幹です。


座屈との戦い——S造設計の本質

鋼材は強いぶん部材を細く薄くできます。その結果、S造の設計は座屈との戦いになります。座屈には「板が部分的に折れる局部座屈」「部材全体が曲がる全体座屈」「梁が横にはらむ横座屈」の3種類があります。

座屈の3タイプ 局部座屈 薄い板が部分的に 波打つ(幅厚比) 全体座屈 細長い柱全体が 曲がる(細長比) 横座屈 梁が横へはらむ (横補剛で対策)

① 幅厚比——局部座屈を防ぐ

幅厚比=板要素の幅÷板厚。

幅厚比が大きい(薄くて幅広い)ほど、局部座屈しやすい

地震エネルギーを塑性変形で吸収するには、局部座屈する前に十分変形できる必要があります。だから靭性を期待する部材ほど幅厚比を小さく制限します。

② 細長比——全体座屈を防ぐ(令第65条)

部材有効細長比の上限
200以下
柱以外(梁・筋かいなど)250以下

細長比が大きい(細長い)ほど座屈しやすく、許容圧縮応力度は小さくなります。

③ 横座屈——梁の弱軸方向の座屈

曲げを受ける梁は、圧縮側フランジが**横にはらみ出す「横座屈」**を起こすことがあります。

対策は横補剛材を設けること。「均等間隔で配置する」または「端部(応力の大きい部分)に近いほど密に配置する」方法があります。H形鋼では弱軸まわりの細長比で横座屈のしやすさが決まります。


柱脚——3つの形式

鉄骨柱と基礎の接合部(柱脚)は3形式。固定度の違いが出題の核心です。

形式構造固定度
露出柱脚ベースプレート+アンカーボルト小さい(回転しやすい)
根巻き柱脚柱脚部をRCで巻く中間
埋込み柱脚柱を基礎に埋め込む大きい(固定に近い)

押さえどころ:

  • 露出柱脚は施工が容易だが、回転剛性が低いため設計でその影響を考慮する
  • 根巻き柱脚は、根巻き部分の高さを柱せいの2.5倍以上とする
  • 埋込み柱脚は、埋込み深さを柱せいの2倍以上とする

○×で総チェック

Q1. SN490材のヤング係数は、SN400材より大きい。

×。ヤング係数は鋼材の強度によらずほぼ一定(約2.05×10⁵ N/mm²)。

Q2. 高力ボルト摩擦接合は、ボルト軸部のせん断力で応力を伝達する。

×。締付けによる板間の摩擦力で伝達する。

Q3. 高力ボルト摩擦接合の摩擦面には、すべり係数を高めるため塗装を行う。

×。塗装は摩擦力を低下させるため不可。赤錆状態やブラスト処理で0.45以上を確保する。

Q4. 隅肉溶接の有効のど厚は、サイズの0.7倍として計算する。

Q5. 溶接と高力ボルトを併用する場合、先に溶接を行えば両方の許容耐力を加算できる。

×。高力ボルトを先に締め付けた場合は加算できるが、溶接が先では加算できない。

Q6. 鋼材の幅厚比が大きいほど、局部座屈は生じにくい。

×。幅厚比が大きい(薄い)ほど局部座屈しやすい

Q7. 柱の有効細長比は250以下とする。

×。柱は200以下。250以下は柱以外の部材。

Q8. 露出柱脚は、埋込み柱脚に比べて回転剛性が高い。

×。固定度は露出<根巻き<埋込み

Q9. 地震時に粘らせたい主要な構造部材には、SN材のB種が適している。

。降伏比の上限等で靭性を保証。板厚方向の性能まで要るならC種。

Q10. 保有耐力接合では、接合される部材より先に接合部が降伏するように設計する。

×。部材が降伏する前に接合部が壊れないようにする(接合部を強く)。

Q11. 降伏比が大きい鋼材ほど、塑性変形能力(粘り)に優れる。

×。降伏比は小さいほど降伏後の余力が大きく、粘りに優れる。

Q12. ラメラテアは、鋼材の板厚方向の引張力によって層状に裂ける現象である。

。SN-C種で対策する。


まとめ

  • ヤング係数は強度によらず一定——S造最頻出のひっかけ
  • 鋼材はSS・SM・SN、主要部材はSN-B種(粘りを保証)。弱点は脆性破壊・疲労・ラメラテア
  • 高力ボルトは摩擦で伝達:すべり係数0.45・塗装NG・孔径**+2mm**・中心距離2.5d
  • 普通ボルトは3,000㎡・軒高9m・張り間13mの制限
  • 隅肉溶接:のど厚=0.7×サイズ、併用はボルト先行なら加算可
  • 設計思想は保有耐力接合(接合部を部材より先に壊さない)
  • 座屈3兄弟:幅厚比(局部)・細長比(全体:柱200)・横座屈(横補剛で対処)
  • 柱脚の固定度:露出<根巻き(2.5倍)<埋込み(2倍)

S造は「強い材料を細く薄く使う」構造。だからこそ、あらゆる規定が座屈と接合部に集中しています。この視点で整理すると、バラバラの数値が一本につながります。


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