一級建築士【施工】型枠工事の数値は「理由」で覚える|側圧・存置期間・支保工を図解
施工シリーズ第3弾は型枠工事です。
「存置期間が5N/mm²で4日で、支保工は85%で……」と数字が入り乱れて挫折しがちな分野。でも、ここまでのコンクリート工事・鉄筋工事と同じく、型枠が何のための仮設物かを理解すれば、数字は理由から導けます。
⚠️ 数値は建築基準法施行令第76条・告示、JASS 5に基づく代表値です。実務・最新版では条件により異なる場合があります。
型枠とは——「固まる前のコンクリートを受け止める器」
型枠は、まだドロドロのコンクリートを目的の形に固めるまで支える仮設の器です。
ここから、型枠工事の数値を貫く2つの軸が出てきます。
① 打込み時:ドロドロのコンクリートが押す力(側圧)と重さに耐えられること ② 取り外し時:コンクリートが自分で立てる強度になるまで外さないこと
「①打つときは支える・②固まるまで待つ」。この2点で型枠の数字はほぼ説明できます。
型枠の構成
| 部材 | 役割 |
|---|---|
| せき板 | コンクリートに直接触れる板(合板など)。形をつくる面 |
| 支保工(支柱) | せき板や床を下から支える仮設の柱 |
| セパレータ | 対向するせき板の間隔を一定に保つ |
| フォームタイ(締付け金物) | 側圧でせき板が開かないよう外から締め付ける |
セパレータが「広がらないよう内側で突っ張る」、フォームタイが「外から締める」——側圧と戦う2役、と理解しましょう。
補足すると、せき板を外したあとの仕上げに応じてセパレータを使い分けます。
- コーン付き(C型など):端にコーンを付け、解体後にコーン跡をモルタルで埋められる。打放し仕上げや防水下地など、仕上げに配慮する面に使う
- コーンなし(B型):ねじ切り跡が残るが、内部に隠れる面など仕上げを気にしない箇所に使う
床(スラブ)の型枠には、そのまま埋め殺せる**鋼製デッキ(フラットデッキ)**を使うこともあり、支保工を減らせます。
① 側圧——なぜ型枠は「開こう」とするのか
打込み直後のコンクリートは液体に近く、水のように**側面を外へ押す力(側圧)**を生みます。この側圧が型枠を開かせ、最悪はらみ・破壊します。だから締付け金物で対抗するわけです。
試験頻出は「側圧が大きくなる条件」。すべて「コンクリートが液体っぽいほど側圧が大きい」で説明できます。
- 打込み速度が速い/高さが高い → 下が固まる前に上まで積み上がり、液体の高さ(水頭)が増す
- 温度が低い → 固まるのが遅く、長く液体のまま
- スランプが大きい(軟らかい) → そもそも液体に近い
- バイブレータで締め固める → 一時的に流動化して側圧が増す
すべて「固まらず液体でいるほど側圧が大きい」に集約されます。丸暗記でなくこの一語で判断できます。
①-2 型枠に作用する荷重——「縦」と「横」で考える
型枠を設計するとき、想定する荷重は**鉛直(縦)と水平(横)**に分けて考えます。
| 方向 | 荷重 | 中身 |
|---|---|---|
| 鉛直荷重 | コンクリートの自重+作業荷重・衝撃荷重 | コンクリート・鉄筋の重さに加え、作業員・運搬機械・打込み時の衝撃 |
| 水平荷重 | 側圧+風荷重 | 前述の側圧、屋外では風も |
特に**支保工(床・梁の下)**は鉛直荷重を支えるので、コンクリートの重さ+作業荷重+衝撃に耐える設計が必要。せき板(側面)は水平の側圧に耐える設計、という対応関係です。
①-3 支保工の種類と安全——「倒れ・座屈」を防ぐ
支保工(支柱)は仮設とはいえ、コンクリートの重さを支える間に座屈・倒壊すると大事故になります。労働安全衛生規則に具体的な数値があり、頻出です。
主な支保工
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| パイプサポート | 鋼管の支柱。最も一般的 |
| 枠組支保工 | 枠組足場の部材を組んだ支柱。高い荷重・高さに対応 |
| 組立て鋼柱・補助支柱 | 重荷重・大スパン用 |
パイプサポートの安全規定(労働安全衛生規則)
| 規定 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 継ぎ本数 | パイプサポートは3本以上継いで用いない(継ぐのは2本まで) | 継ぎが多いほど座屈しやすい |
| 継手 | 継ぐときは4以上のボルトまたは専用金具で固定 | 継目のがたつき・ずれを防ぐ |
| 水平つなぎ | 高さ3.5mを超えるときは、高さ2m以内ごとに水平つなぎを2方向に設ける | 細長い支柱の座屈・倒れを防ぐ |
| 脚部 | 敷板・根がらみで滑動・沈下を防ぐ | 脚が動くと全体が倒れる |
数値は多いですが、すべて「細長い支柱が座屈・倒壊しないように」という一点のため。「継ぎは少なく、つなぎで横ずれを止める」と理由で押さえます。
⚠️ 型枠支保工は、高さ3.5m以上のものを設置する場合、労働基準監督署への設置届が必要(組立図の作成も義務)。
② 存置期間——「自分で立てる強度」になるまで待つ
型枠を外していいのは、コンクリートが自力で形と荷重を保てる強度に達してから。早く外すと変形・ひび割れ・崩落を招きます。
ここで超重要なのが、せき板と支保工で外せるタイミングが違うこと。理由は役割の違いです。
せき板は側面を覆うだけで自重を支えていないので早く外せる。一方、支保工は床や梁の重さを下から支え続けているので、コンクリートがその重さに耐えられるまで残す必要があります。
せき板(基礎・梁側・柱・壁)の存置——「強度」または「日数」
次のどちらかを満たせばOKです。
A. 圧縮強度で判断(JASS 5)
| 計画供用期間の級 | 必要な圧縮強度 |
|---|---|
| 短期・標準 | 5 N/mm² 以上 |
| 長期・超長期 | 10 N/mm² 以上 |
※せき板を外したあと湿潤養生を続けない場合は、より高い強度(短期・標準で10、長期・超長期で15 N/mm²)が必要。
B. 材齢(日数)で判断(令76条・告示/例:気温と普通ポルトランド)
| 平均気温 | 普通ポルトランド | 早強ポルトランド |
|---|---|---|
| 20℃以上 | 4日 | 2日 |
| 10℃以上20℃未満 | 6日 | 3日 |
寒いほど固まりが遅い→日数が伸びる。早強は速く固まる→短い。コンクリートの記事の養生の話と同じ理屈です。高炉B種など混合セメントはさらに長くなります。
支保工(スラブ下・梁下)の存置——せき板より厳しい
床・梁の重さを支えるので、せき板より高い強度を要求します。
| 部位 | 必要な圧縮強度 |
|---|---|
| スラブ下の支保工 | 設計基準強度の85%以上、または 12 N/mm² 以上(かつ後続の施工荷重に耐える) |
| 梁下の支保工 | 設計基準強度の100%以上(設計基準強度に達するまで) |
梁はスラブより大きな荷重を負担するので、より厳しい(100%)。「支える荷重が大きいほど長く残す」と理由で覚えられます。
③ 取り外しの順序——「荷重を受けない所から」
外す順番にもルールがあります。
荷重を支えていない部分から先に外す。支えている支保工は後。
具体的には、側面のせき板 → 床・梁を支える支保工の順。逆にやると、まだ自立できないコンクリートから支えを抜くことになり危険です。
また、片持ちスラブ(バルコニー等)の支保工は、特に慎重に。先端に行くほど自重で下がろうとするため、十分な強度を確認してから外します。
④ 施工上の注意——細部にも理由がある
| 項目 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| はく離剤 | せき板内面に塗る | コンクリートと型枠がくっつかず、きれいに外れる |
| 打込み前の清掃・水湿し | ごみを除き、せき板を湿らせる | 木製せき板が水を吸ってコンクリート表面が硬化不良になるのを防ぐ |
| セパレータの間隔 | 側圧に応じて配置 | 間隔が広すぎるとせき板がはらむ |
| 締付け過ぎ | 締めすぎない | 締めすぎるとせき板が内側に変形し、断面不足に |
「水湿し」は意外な頻出。乾いた木のせき板がコンクリートの水を奪うと、表面がうまく固まらないためです。
○×で総チェック
Q1. コンクリートの打込み速度が速いほど、型枠に作用する側圧は小さくなる。
→ ×。速いほど液体の高さが増し、側圧は大きくなる。
Q2. コンクリートの温度が低いほど、側圧は大きくなる。
→ ○。固まるのが遅く、長く液体のままだから。
Q3. 基礎・梁側・柱・壁のせき板は、短期・標準の建物では圧縮強度5N/mm²以上で取り外せる。
→ ○。長期・超長期では10N/mm²以上。
Q4. せき板の存置日数は、平均気温が低いほど短くてよい。
→ ×。低いほど固まりが遅いので長くなる(普通ポルトランド20℃以上4日→10〜20℃6日)。
Q5. スラブ下の支保工は、せき板より早く取り外してよい。
→ ×。支保工は床の重さを支えるので、せき板より**高い強度(85%or12N以上)**まで残す。
Q6. 型枠の取り外しは、支保工を先に、側面のせき板を後に行う。
→ ×。逆。荷重を支えないせき板を先に、支保工を後に外す。
Q7. 木製せき板は、打込み前に乾燥させておくとよい。
→ ×。乾いた木がコンクリートの水を奪い硬化不良を招く。水湿ししておく。
Q8. パイプサポートは、3本継いで支柱として用いてよい。
→ ×。3本以上継いではならない(継ぐのは2本まで)。継ぐときは4以上のボルト等で固定。
Q9. パイプサポートを支柱とし高さが3.5mを超えるときは、高さ2m以内ごとに水平つなぎを2方向に設ける。
→ ○。細長い支柱の座屈・倒れを防ぐため。
Q10. 型枠に作用する鉛直荷重には、コンクリートの自重のほか、作業荷重や打込み時の衝撃荷重も含める。
→ ○。水平荷重は側圧+風。
- 型枠の数値は①打つとき支える ②固まるまで待つの2軸で説明できる
- 側圧は「液体っぽいほど大」(速い・低温・軟らかい・高い・加振)
- せき板(側面)は早く外せる:強度5N/mm²(短期標準)/10(長期超長期)、または材齢(普通20℃4日/10℃6日)
- 支保工(床梁下)は長く残す:スラブ下85%or12N、梁下100%
- 取り外しは荷重を支えないせき板が先・支保工が後
- 木製せき板は水湿し(水を奪わせない)
型枠は「縁の下の力持ち」。コンクリートが主役として固まるまで、側圧と重さに耐えて支え続ける仮設物だと分かれば、存置期間も側圧の条件も自然と納得できます。
施工シリーズは今後、鉄骨工事・地業工事・仕上げ工事なども順次公開予定です。
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