一級建築士【環境・設備】電気・防災・搬送設備を丁寧に解説|受変電・非常用照明・排煙・EV
環境・設備シリーズ、最終回(第7弾)は電気・防災・搬送設備です。
(設備①空調・給排水の続きです)
電気・防災は数値(電圧区分・高さ制限)と、似た設備の使い分け(非常用照明と誘導灯など)が問われます。**「平常時の設備」と「非常時の設備」**に分けて整理すると、混乱しません。
⚠️ 内容は建築基準法・消防法等に基づく一般的な解説です。
電気設備——「電圧の区分」と「受変電」
電圧の区分
電気設備の基本は、電圧の3区分。
| 区分 | 電圧(交流) |
|---|---|
| 低圧 | 600V以下 |
| 高圧 | 600V超〜7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000V超 |
一般の建物が電力会社から受け取るのは、多くが高圧6,600V。これを建物内で使える低圧(200V・100V)に下げる必要があります。
受変電設備
- キュービクル:屋外・屋上等に置く金属箱に収めた受変電設備。高圧6,600Vを受けて変圧する
- 高圧の電気工作物の工事には、原則第1種電気工事士が必要
- 幹線→分電盤→各室のコンセント・照明へ分配する
非常用の電源
停電時にも、避難・消火のための設備(非常用EV・排煙・非常照明など)は動かす必要があります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 自家発電設備 | 燃料で発電。比較的長時間運転できる(始動に少し時間) |
| 蓄電池設備 | 瞬時に給電できるが容量・時間に限り |
「瞬時の蓄電池・長時間の発電機」と役割を分けて押さえます。
電気の「質」——力率・需要率・接地
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 力率改善 | 進相コンデンサで力率を上げ、無効電力を減らして送電損失を低減 |
| 需要率 | 設備容量に対する実際の最大需要電力の割合。幹線・変圧器の容量決定に使う |
| 接地(アース) | 漏電時の感電・機器損傷を防ぐ。用途で種別が分かれる |
| 幹線・分岐回路 | 受変電→幹線→分電盤→分岐回路と段階的に分配 |
「力率は進相コンデンサで改善」「需要率で容量を決める」。電気は量だけでなく**質(力率)と安全(接地)**も問われる。
防災設備①:避雷・非常用照明・誘導灯
避雷設備(建築基準法)
高さ20mを超える建築物には、原則として避雷設備を設けなければならない。
雷を安全に地面へ逃がす設備。「20m超」の数字が頻出です。
非常用照明と誘導灯——似て非なる2つ
最頻出のひっかけ。目的が違う2つを区別します。
| 設備 | 根拠法 | 目的・基準 |
|---|---|---|
| 非常用照明 | 建築基準法 | 停電時に床面で1ルクス以上(蛍光灯・LEDは2ルクス以上)を確保。予備電源で30分以上点灯し、避難の明るさを確保 |
| 誘導灯 | 消防法 | 避難口・避難方向を示す(緑のサイン)。明るさではなく「どっちへ逃げるか」を示す |
「非常用照明=明るさ(建基法)/誘導灯=方向(消防法)」。根拠法も違うので、セットで覚えます。
防災設備②:消火・排煙・火災報知
消火設備
| 設備 | 使う人・しくみ |
|---|---|
| 屋内消火栓 | 人がホースで消火 |
| スプリンクラー | 天井のヘッドが熱を感知して自動で散水 |
| 連結送水管 | 消防隊が使う送水設備(高層・地下で重要) |
「スプリンクラーは自動・消火栓は人・連結送水管は消防隊」と使い手で区別します。
排煙設備
火災の煙は、炎より早く人の命を奪います。煙を排出するのが排煙設備。
| 方式 | しくみ |
|---|---|
| 自然排煙 | 排煙窓を開けて煙を自然に逃がす |
| 機械排煙 | 排煙機(ファン)で強制的に排出 |
- 防煙区画:煙の広がりを抑えるため、500m²以内ごとに防煙垂れ壁等で区画する
- 排煙口は、防煙区画の各部分から一定距離内に設ける
自動火災報知設備と感知器の種類
熱・煙の感知器が火災を感知し、ベル等で知らせます。感知器は種類ごとに向く場所が違います。
| 感知器 | 反応のしかた | 向く場所 |
|---|---|---|
| 差動式(熱) | 温度の急な上昇率で感知 | 居室など一般 |
| 定温式(熱) | 一定温度に達すると感知 | 厨房・ボイラー室(平常時から高温) |
| 煙感知器 | 煙を感知。熱より早く反応 | 階段・廊下・たて穴 |
ひっかけ:厨房は定温式(差動式だと調理の熱で誤作動)。早期発見が要る避難経路は煙感知器。火災で煙が広がるのを防ぐ防火ダンパー(FD)・防火戸も合わせて押さえる。
搬送設備——エレベーター・エスカレーター
エレベーター
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| ロープ式 | 巻上機でロープを動かす。中〜高層で主流 |
| 油圧式 | 油圧で押し上げる。低層・大荷重向き |
最重要は非常用エレベーター。
高さ31mを超える建築物には、原則として非常用エレベーターを設けなければならない(消防隊の活動用)。
「避雷は20m超・非常用EVは31m超」の数字をセットで覚えると効率的です。
エレベーターの台数計画
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 5分間輸送能力 | ピーク時の5分間に運べる人数。これを基に必要台数を算定 |
| 群管理 | 複数台をまとめて制御し、呼びに最適なかごを割り当てて待ち時間を短縮 |
エスカレーター
- 勾配は原則30度以下(速度・安全のため)
- 定員・積載などの基準がある
- 輸送能力が大きく、連続的に多人数を運べる(待ち時間がない)のが特徴。一方で輸送方向が限定され、車椅子には不向き
○×で総チェック
Q1. 交流の電圧区分で、低圧は600V以下である。
→ ○。高圧は600V超〜7,000V、特別高圧は7,000V超。
Q2. 建物が電力会社から受ける高圧は、一般に6,600Vである。
→ ○。受変電設備で200V・100Vに変圧する。
Q3. 高さ15mの建築物には、避雷設備の設置が義務づけられる。
→ ×。避雷設備は高さ20mを超える建築物。
Q4. 非常用照明は、避難の方向を示すための設備である。
→ ×。それは誘導灯(消防法)。非常用照明(建基法)は**床面の明るさ(1lx以上)**を確保する。
Q5. スプリンクラー設備は、人がホースを操作して消火する設備である。
→ ×。それは屋内消火栓。スプリンクラーは熱感知で自動散水。
Q6. 防煙区画は、面積500m²以内ごとに区画する。
→ ○。煙の拡散を抑える。
Q7. 非常用エレベーターは、高さ31mを超える建築物に原則として設置する。
→ ○。消防隊の活動用。避雷は20m超。
Q8. 蓄電池設備は、自家発電設備に比べて長時間の連続運転に適している。
→ ×。蓄電池は瞬時給電向き。長時間は自家発電設備。
Q9. 厨房やボイラー室の火災感知には、温度上昇率で感知する差動式熱感知器が最も適する。
→ ×。平常時から高温で誤作動しやすい。定温式が適する。
Q10. 進相コンデンサは、力率を改善して無効電力を減らすために用いられる。
→ ○。送電損失の低減につながる。
Q11. エレベーターの群管理は、複数台を制御して待ち時間を短縮する方式である。
→ ○。ピーク時の輸送効率を高める。
まとめ——電気・防災は「平常時/非常時」で整理
- 電圧区分:低圧600V以下・高圧〜7,000V・特別高圧7,000V超。受電は6,600Vを変圧
- 非常用電源は蓄電池(瞬時)・自家発電(長時間)
- 避雷設備=20m超、非常用EV=31m超(数字をセットで)
- 非常用照明=明るさ(建基法・1lx)/誘導灯=方向(消防法)
- 消火は自動(スプリンクラー)・人(消火栓)・消防隊(連結送水管)
- 排煙は自然・機械、防煙区画500m²以内/感知器は差動式(一般)・定温式(厨房)・煙(避難経路)
- 電気の質は力率改善(進相コンデンサ)・需要率で容量決定・接地/搬送は5分間輸送能力・群管理
「平常時に使う設備(受変電・空調)」と「非常時に働く設備(非常照明・排煙・非常用EV)」を分けて捉えると、設備分野は一気に見通しがよくなります。
環境・設備シリーズ完結
これで環境・設備シリーズは全7記事がそろいました。
環境工学(光・熱・空気・音)から設備まで、「なぜそうなるか」を軸に一通り押さえました。構造・施工とあわせて、一級建築士の学科を着実に攻略していきましょう。
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