一級建築士【環境・設備】空調・給排水設備を丁寧に解説|空調方式・給水方式・排水トラップ
環境・設備シリーズもいよいよ設備分野へ。範囲が広いので2回に分けます。
- 設備①:空調・給排水衛生(←この記事)
- 設備②:電気・照明・防災・搬送
第6弾は、建物の快適さと衛生を支える空調・給排水衛生設備です。設備は用語が多いですが、**「何のための設備か」「水や空気をどう流すか」**で整理すれば頭に入ります。
⚠️ 内容は建築設備の一般的な解説に基づきます。数値は代表値です。
空調設備——「空気の4条件」を整える
空調(空気調和)は、室内の空気を快適な状態に保つこと。整える対象は4つです。
温度・湿度・気流(風)・清浄度(きれいさ)——この4条件を制御するのが空調。
「冷暖房だけ」ではなく、湿度・気流・空気のきれいさまで含むのが「空気調和」だと押さえます。
中央式と個別式
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| 中央式 | 機械室の熱源で作った冷温水・空気を各室へ。大規模で効率的だが、個別制御は弱い |
| 個別式 | パッケージエアコンなど部屋ごとに設置。個別の発停・更新が容易、中小規模向き |
主な中央式空調方式
| 方式 | しくみ・特徴 |
|---|---|
| 単一ダクト(定風量CAV) | 一定風量で温度を変える。シンプルだが各室個別制御が苦手 |
| 単一ダクト(変風量VAV) | 風量を変えて各室制御+送風動力を省エネできる |
| ファンコイルユニット(FCU) | 各室に小型ユニット(冷温水)を置く。個別制御しやすい。外気処理は別途必要 |
| 二重ダクト | 温風・冷風を別々に送り混合。制御性は高いがエネルギー的に不利 |
「VAVは省エネ・FCUは個別制御」が頻出ポイントです。
熱源機器と効率
冷温水・熱をつくる機器です。効率の指標とセットで押さえます。
| 機器 | 内容 |
|---|---|
| ヒートポンプ | 少ない電力で大気・地中の熱をくみ上げる。COP(成績係数)が大きいほど高効率 |
| 吸収冷凍機 | 熱(ガス・排熱)で冷水をつくる。電力ピークを抑えられる |
| 遠心(ターボ)冷凍機 | 電動・大容量。大規模建物向き |
| 蓄熱槽 | 夜間電力で冷温熱をためて昼に使う。電力負荷を平準化(ピークカット) |
| コージェネレーション | 発電+排熱利用で総合効率を高める |
効率はCOP・APFが大きいほど省エネ。日射・人体などで増える冷房負荷を抑える計画(日射遮蔽・断熱)が設備の小型化につながる。
省エネ運転と放射空調
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| 外気冷房 | 中間期に冷たい外気を取り入れて冷房代わりに |
| ペリメータ/インテリア | 窓際(ペリメータ)は外気の影響大、室内側(インテリア)は安定。ゾーン分けして制御 |
| 放射(輻射)冷暖房 | 床・天井のパネルで放射により冷暖房。気流感が少なく快適だが結露に注意 |
全熱交換器
換気で捨てる排気の熱(温度)と湿度を、取り入れる外気に回収する装置。冬は暖かさ、夏は冷たさを無駄なく再利用でき、換気による熱損失を減らせます(換気の記事とつながる省エネ手法)。
給水設備——「どう水を届けるか」
建物に水を供給する方式は、規模・用途で使い分けます。
| 方式 | しくみ | 向く規模 |
|---|---|---|
| 水道直結直圧 | 本管の圧力で直接給水 | 小規模・低層 |
| 水道直結増圧 | 増圧ポンプで押し上げる(受水槽なし) | 中規模 |
| 高置水槽方式 | 受水槽→揚水ポンプ→高置水槽→重力で給水 | 大規模・圧力安定 |
| ポンプ直送方式 | 受水槽→ポンプで直接送水(高置水槽なし) | 大規模 |
高置水槽方式は「給水圧が安定し、停電・断水時も水槽の水が使える」のが利点。一方で水槽内の**水質管理(滞留・汚染)**が課題です。
逆流防止——「汚水を飲み水に戻さない」
衛生上の最重要テーマ。飲み水の系統に汚れた水が逆流するのを防ぐしくみが問われます。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| クロスコネクション | 飲料水系統と、それ以外(井水・雑用水等)の系統を直接接続すること=禁止 |
| 吐水口空間 | 給水栓の吐水口と、器具のあふれ縁との間の垂直距離。これがあると逆流しない |
| バキュームブレーカー | 配管が負圧になったとき空気を入れ、逆サイホン(吸い戻し)を防ぐ装置 |
「飲み水を汚さない」ための3点。とくにクロスコネクションは絶対禁止が頻出です。
受水槽
- 内部を点検・清掃できるよう、六面点検できる space を確保(周囲・下60cm以上、上部100cm以上が目安)
- 水槽の水が汚染されないよう、オーバーフロー管・通気・防虫網などを設ける
給湯設備とウォーターハンマー
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 中央給湯/局所給湯 | まとめて供給/必要箇所で個別に加熱 |
| レジオネラ属菌対策 | 貯湯式は60℃以上で貯湯し菌の繁殖を防ぐ |
| ウォーターハンマー(水撃) | 弁の急閉で配管に衝撃・騒音。エアチャンバー等で緩和。流速を抑える |
| 逃し弁・膨張 | 加熱で膨張した湯の圧力を逃がす |
「貯湯は60℃以上(レジオネラ)」「急閉で水撃→エアチャンバー」。給湯は温度と圧力の管理が要点。
排水・通気設備——「トラップ」が主役
排水で最重要なのが排水トラップ。排水管の途中に水をためて(封水)、下水の臭気・虫が室内へ上がってくるのを防ぐしくみです。
封水深は50〜100mm
トラップにためる水の深さ(封水深)は50〜100mm。
- **浅すぎる(50mm未満)**と、わずかな圧力変化や蒸発で水が切れて臭気が上がる(破封)
- 深すぎる(100mm超)と、流れが悪く自浄作用が低下して汚れがたまる
「浅いと破封・深いと汚れる」だから50〜100mm、と理由で覚えます。
破封(封水が切れる)の原因
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 自己サイホン作用 | その器具自身の排水で封水が吸い出される |
| 誘導サイホン作用 | 他の器具の排水で配管内が負圧になり吸い出される |
| 蒸発 | 長期間使わず封水が乾く |
| 毛管現象 | 髪の毛などを伝って封水が抜ける |
通気管と二重トラップ禁止
- 通気管:排水管に空気を補い、サイホン作用による破封を防ぐ。各器具ごとに付ける各個通気が自己サイホン防止に最も有効
- 二重トラップの禁止:1つの排水経路にトラップを直列に2個以上設けると、間の空気が逃げ場を失い排水の流れが悪くなるため禁止
「臭気を止めるのがトラップ、流れを助けるのが通気管」。役割を分けて覚えます。
排水方式と阻集器
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 合流式/分流式(公共下水) | 汚水と雨水を同一管で流す/別々に流す。分流式は雨水を直接放流でき処理場負荷を抑える |
| 汚水・雑排水・雨水 | 建物内では系統を分けて計画 |
| 阻集器(グリストラップ等) | 油・砂など下水に流せないものを分離・捕集(厨房はグリス阻集器) |
| 排水槽・排水ポンプ | 地下など自然流下できない排水を一時貯留しポンプアップ |
「雨水と汚水を分けるのが分流式」「厨房の油はグリス阻集器」。トラップ(封水深50〜100mm)と合わせて排水計画の頻出。
○×で総チェック
Q1. 空気調和(空調)は、温度と湿度の2つを制御するものである。
→ ×。温度・湿度に加え気流・清浄度を含む4条件。
Q2. 変風量(VAV)方式は、送風動力の省エネに有効である。
→ ○。負荷に応じて風量を変える。FCUは個別制御に有利。
Q3. 高置水槽方式は、停電・断水時にも水槽内の水を利用できる。
→ ○。一方で水槽の水質管理が課題。
Q4. 飲料水系統と井水系統を直接接続することを、クロスコネクションといい、衛生上推奨される。
→ ×。クロスコネクションは禁止。逆流で飲み水が汚染される。
Q5. 排水トラップの封水深は、深いほど良いので150mm以上とする。
→ ×。50〜100mm。深すぎると自浄作用が低下する。
Q6. 各個通気方式は、自己サイホン作用による破封の防止に有効である。
→ ○。器具ごとに通気管を設ける。
Q7. 1つの排水系統にトラップを直列に2個設けると、排水がスムーズになる。
→ ×。二重トラップは禁止。流れが悪くなる。
Q8. 全熱交換器は、換気の際に排気の熱と湿気を回収して省エネに役立つ。
→ ○。換気による熱損失を減らせる。
Q9. ヒートポンプのCOP(成績係数)は、値が小さいほど高効率である。
→ ×。逆。COPは大きいほど高効率。
Q10. 貯湯式給湯では、レジオネラ属菌の繁殖を防ぐため貯湯温度を60℃以上に保つ。
→ ○。低温の滞留は菌繁殖の原因。
Q11. 蓄熱槽は、夜間電力で蓄熱して昼間に利用し、電力負荷の平準化に役立つ。
→ ○。ピークカット・ピークシフトに有効。
まとめ——空調・給排水は「流れ」で整理
- 空調は温度・湿度・気流・清浄度の4条件。中央式(大規模)/個別式(中小)
- 中央式はVAV=省エネ・FCU=個別制御。全熱交換器で換気の熱を回収
- 熱源はCOP・APFが大きいほど高効率/蓄熱槽でピークシフト/放射空調は気流感が少ない
- 給水は直結直圧/直結増圧/高置水槽(圧力安定)/ポンプ直送
- 逆流防止:クロスコネクション禁止・吐水口空間・バキュームブレーカー/給湯は60℃以上(レジオネラ)・水撃対策
- 排水トラップの封水深50〜100mm(浅いと破封・深いと汚れる)/各個通気で破封防止・二重トラップ禁止/厨房はグリス阻集器
設備は「空気・水をどう作り、どう流し、どう守るか」。流れを追えば、用語も数値も自然につながります。
次回は環境・設備シリーズ最終回、電気・照明・防災・搬送設備です。
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