一級建築士【環境・設備】換気・通風を「理由」で覚える|必要換気量・換気方式・シックハウスを図解
環境・設備シリーズ第3弾は換気・通風です。
換気は「汚れた空気を出して、新鮮な空気を入れる」こと。シンプルですが、必要換気量の計算・換気方式・自然換気のしくみと、出題範囲は広めです。**「何を薄めたいのか」「どうやって空気を動かすのか」**で整理すれば一本につながります。
⚠️ 内容は建築環境工学・建築基準法(シックハウス対策・換気設備)に基づく一般的な解説です。
なぜ換気するのか——「汚染を薄める」
室内では、人の呼吸・燃焼・建材から、CO₂・水蒸気・臭気・有害物質などが出続けます。換気はこれらを外気で薄めて排出します。
換気の指標として代表的なのが二酸化炭素(CO₂)濃度。
建築基準法では、室内のCO₂濃度を0.1%(1000ppm)以下に保つことが目安。これを満たすには、成人1人あたり約30m³/hの換気量が必要。
CO₂自体が少量で害があるわけではなく、**「人の活動で出る汚染全体の代表選手」**として測りやすいから指標に使う、という点を押さえましょう。
必要換気量と換気回数
必要換気量の考え方(ザイデルの式)
ある汚染物質を許容濃度以下に保つのに必要な換気量は、次の関係で決まります。
必要換気量 Q = 室内の汚染発生量 M ÷(室内の許容濃度 Ci − 外気濃度 Co)
- 汚染の発生量が多いほど、必要換気量は増える
- 許容濃度と外気濃度の差が小さいほど、必要換気量は増える(薄めにくい)
「たくさん汚れる部屋・厳しい基準の部屋ほど、たくさん換気が要る」と理由で読めます。
換気回数
換気量を部屋の体積で割ったのが換気回数(1時間に部屋の空気が何回入れ替わるか)。
換気回数 n(回/h)= 換気量 Q(m³/h)÷ 室容積 V(m³)
- 住宅の居室は、シックハウス対策として0.5回/h以上が義務(後述)
- 同じ換気量でも、部屋が小さいほど換気回数は大きくなる
換気の方式——自然換気と機械換気
機械換気(ファンを使う)は、給気・排気のどちらを機械にするかで3種類に分かれます。室内が正圧(外より高い)か負圧(外より低い)かがカギです。
| 方式 | 給気 | 排気 | 室圧 | 向く部屋 |
|---|---|---|---|---|
| 第1種 | 機械 | 機械 | 制御可 | 確実な換気が要る所(熱交換換気も可) |
| 第2種 | 機械 | 自然 | 正圧 | きれいな空気を保ちたい所(手術室・クリーンルーム) |
| 第3種 | 自然 | 機械 | 負圧 | 汚染・臭気・湿気を出したい所(トイレ・浴室・台所) |
理由で覚えます。
- 第2種=正圧:室内の気圧を高くして、外の汚れた空気が入ってこないようにする → クリーンルーム
- 第3種=負圧:室内の気圧を低くして、臭い・湿気が他室へ漏れず確実に排気される → トイレ・浴室
「きれいに保ちたい=正圧(第2種)/汚染を出したい=負圧(第3種)」が判断軸です。
熱交換換気(第1種でできる省エネ)
第1種(給排気とも機械)では、排気の熱を給気に移す熱交換器を組み込めます。
| 種類 | 回収するもの |
|---|---|
| 顕熱交換器 | 温度(熱)のみ回収 |
| 全熱交換器 | **温度+湿気(潜熱)**を回収。冷暖房負荷をより低減 |
換気で捨てる熱を回収して省エネできるのが第1種の利点。全熱交換器は湿気も回収する点が顕熱との違い(頻出)。
自然換気——「温度差」と「風」で動かす
機械を使わない自然換気は、空気を動かす力が2つあります。
① 温度差(重力)換気
暖かい空気は軽く上昇し、上の開口から出ていく。代わりに冷たい外気が下の開口から入る——これが温度差換気(重力換気)。
温度差換気の換気量は、室内外の温度差が大きいほど、また給気口と排気口の高低差が大きいほど大きくなる。
吹抜けや高窓が換気に効くのはこのため。給排気口の中間あたりに圧力差ゼロの中性帯ができます。
② 風力換気
風が当たる面(風上)は正圧、反対側(風下)は負圧になり、その差で空気が流れます。
風力換気の換気量は、風速に比例し、開口の取り方(風上・風下の配置)で変わる。
風上と風下の両方に開口を設けると、風が通り抜けて換気量が増えます(通風)。
全般換気と局所換気
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 全般換気 | 部屋全体の空気を入れ替える |
| 局所換気 | 汚染の発生源の近くで捕集して排出(台所のレンジフード、トイレの排気) |
汚染源が決まっている所は、部屋全体を薄めるより発生源で直接捕まえる局所換気のほうが効率的。「汚れるところでつかまえる」が局所換気の考え方です。
置換換気と空気齢——「換気の質」
同じ換気量でも、新鮮な空気が居住域に届くかで効果が変わります。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 置換換気 | 床付近に低速で冷たい新鮮空気を供給し、汚染・熱で暖まった空気を上へ押し上げて天井から排出。汚染を撹拌せず効率的 |
| 混合換気 | 給気を室内とよく混ぜて薄める一般的な方式 |
| 空気齢 | その地点の空気が室内に入ってからの経過時間。小さいほど新鮮(換気が良い) |
「置換換気=かき混ぜず下から上へ押し出す」「空気齢が小さい=新鮮」。量だけでなく**新鮮な空気の届き方(質)**も問われる。
必要換気量の数値(混同に注意)
| 基準 | 値 |
|---|---|
| CO₂を1000ppm以下に保つ目安 | 1人あたり約30m³/h |
| 建築基準法の機械換気(居室の有効換気量) | 1人あたり20m³/hが基本 |
| シックハウスの住宅居室 | 換気回数0.5回/h以上 |
「CO₂目安=30/建基法の有効換気量=20/住宅居室=0.5回/h」。数字が複数あるので、何の基準かとセットで覚える。
シックハウス対策(建築基準法)
2003年に、建材から出る化学物質による健康被害(シックハウス症候群)対策が建築基準法に盛り込まれました。頻出です。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 24時間換気の義務化 | 原則すべての居室に機械換気設備。住宅等の居室は換気回数0.5回/h以上 |
| ホルムアルデヒド | 発散等級で規制。F☆☆☆☆(最高等級)は使用制限なし。等級が下がる(F☆☆☆・F☆☆)ほど使用面積が制限される |
| クロルピリホス | (シロアリ駆除剤)建材への添加が禁止=使用不可 |
「F☆☆☆☆は無制限・クロルピリホスは禁止・24時間換気0.5回」の3点セットで覚えます。星の数が多い(フォースター)ほど安全で自由に使える、と直感的に押さえましょう。
○×で総チェック
Q1. 室内CO₂濃度を1000ppm以下に保つには、成人1人あたり約30m³/hの換気量が目安となる。
→ ○。CO₂は汚染の代表指標。
Q2. 必要換気量は、汚染物質の発生量が多いほど小さくなる。
→ ×。発生量が多いほど大きくなる(薄めるのに多くの換気が要る)。
Q3. 同じ換気量なら、室容積が小さいほど換気回数は大きくなる。
→ ○。換気回数=換気量÷室容積。
Q4. 第3種換気(排気のみ機械)では、室内は周囲より正圧になる。
→ ×。排気が機械なので室内は負圧。トイレ・浴室向き。
Q5. 手術室など清浄さが必要な室には、室内を正圧にできる第2種換気が適する。
→ ○。正圧で外の汚染空気の侵入を防ぐ。
Q6. 温度差換気の換気量は、室内外の温度差が大きいほど、開口部の高低差が大きいほど大きい。
→ ○。重力換気の基本。
Q7. 風力換気では、風上側が負圧、風下側が正圧になる。
→ ×。逆。風上が正圧・風下が負圧。
Q8. ホルムアルデヒドの発散等級がF☆☆☆☆の建材は、内装仕上げに使用制限がない。
→ ○。最高等級。クロルピリホスは添加禁止。
Q9. 全熱交換器は、排気から温度(顕熱)のみを回収し、湿気(潜熱)は回収しない。
→ ×。全熱交換器は温度+湿気を回収。温度のみは顕熱交換器。
Q10. 置換換気は、新鮮空気を室全体とよく撹拌して汚染を薄める方式である。
→ ×。それは混合換気。置換換気は撹拌せず下から上へ押し上げる。
Q11. 空気齢は、値が小さいほどその地点の空気が新鮮であることを示す。
→ ○。入ってからの経過時間が短い=新鮮。
まとめ——換気・通風は「薄める・動かす」で整理
- 換気は汚染(CO₂が代表)を外気で薄める。1人約30m³/hでCO₂1000ppm以下
- 必要換気量=発生量÷濃度差。換気回数=換気量÷室容積(住宅居室0.5回/h)
- 機械換気3方式:第2種=正圧(清浄室)/第3種=負圧(トイレ浴室)/第1種=両方機械(熱交換可・全熱は湿気も回収)
- 自然換気:温度差換気(温度差・高低差が大きいほど)/風力換気(風速比例・風上正圧)
- 汚染源が明確なら局所換気/質の指標は置換換気・空気齢(小さいほど新鮮)
- シックハウス:24時間換気0.5回・F☆☆☆☆無制限・クロルピリホス禁止
「何を薄めたいか(汚染)」「どう空気を動かすか(機械・温度差・風)」の2軸で、換気はすっきり整理できます。
次回は伝熱・結露(熱貫流・断熱・結露)を取り上げます。
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