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一級建築士環境設備音響遮音吸音残響時間2026年

一級建築士【環境・設備】音(音響・遮音・吸音)を丁寧に解説|残響時間・距離減衰・透過損失

環境・設備シリーズ第5弾は**音(音響・遮音・吸音)**です。

音は「デシベル(対数)」「残響」「遮音」と、なじみの薄い概念が続いて苦手になりがち。でも、それぞれが”何を表す数字か”を押さえれば整理できます。計算(距離減衰・残響時間)も手順は単純なので、一歩ずつ進めましょう。

⚠️ 内容は建築環境工学・建築音響の一般的な解説に基づきます。数値は理解のための代表値です。


音の基本——3つの要素と「デシベル」

音には3つの要素があります。

要素物理量単位
大きさ音圧(音の強さ)dB(デシベル)
高さ周波数Hz(ヘルツ)
音色波形・倍音構成

ここで最重要なのがデシベル(dB)は対数だということ。音のエネルギーは桁違いに幅が広いので、対数で圧縮して扱います。対数ゆえに、足し算が普通とは違うのがポイント。

同じ大きさの音を2つ重ねても、2倍(+3dB)にしかならない。10倍のエネルギーで+10dB。

「60dB+60dB=120dB」ではなく「63dB」。ここが直感と違う最初の関門です。


音の距離減衰——点音源は6dB、線音源は3dB

音源から離れると音は小さくなります。音源の種類で減衰の仕方が変わるのが頻出。

点音源と線音源の距離減衰 点音源は球状に広がるため距離2倍で−6dB(音の強さは1/4)。線音源は円筒状に広がるため距離2倍で−3dB(1/2)。 距離が2倍になると…(点音源−6dB/線音源−3dB) 点音源(スピーカー1個) 球状に広がる −6dB 距離2倍で音は1/4 線音源(道路の車列) 円筒状に広がる −3dB 距離2倍で音は1/2 広がり方の違い:球(面積4倍→1/4)と円筒(2倍→1/2)
音源距離2倍での減衰
点音源スピーカー1個・機械1台−6dB(球状に広がり、逆2乗で薄まる)
線音源道路の連続する車列−3dB(円筒状に広がる)

なぜ違うのか。点音源は球状に広がるので距離2倍で表面積4倍→エネルギー1/4→−6dB。線音源は円筒状なので距離2倍で2倍に広がる→1/2→−3dB。「広がり方の違い」で理由づけできます。

計算例

点音源から1mで80dBの音は、

  • 2m(2倍)で 80−6=74dB
  • 4m(さらに2倍)で 74−6=68dB

距離が2倍になるたびに6dBずつ引く、と覚えれば計算は簡単です。


室内音響①:残響時間とセービンの式

室内で音源を止めても、音は壁で反射を繰り返してしばらく残ります。これが残響

残響時間=音源を止めてから、音圧レベルが60dB減衰するまでの時間。

セービンの式

残響時間は次の式で計算します。計算問題で頻出です。

残響時間 T = 0.161 × 室容積V ÷ 室の吸音力A [秒]
  • 室容積V[m³]が大きいほど、残響時間は長くなる
  • 吸音力A[m²]が大きい(よく吸う)ほど、残響時間は短くなる
  • 吸音力 A = Σ(各面の吸音率α × 面積S)
残響時間=音が60dB下がるまでの時間 音圧 音源停止 60dB低下 ↓ 60dB この時間が残響時間 T

計算例

室容積V=3000m³、吸音力A=600m²の室の残響時間:

T = 0.161 × 3000 ÷ 600 = 0.805 秒

用途で最適な残響時間は違います。講演・会議室は短め(言葉が明瞭に)、音楽ホールは長め(豊かな響き)。「言葉は短く、音楽は長く」と覚えます。


室内音響②:吸音——材料で効く周波数が違う

吸音材は、種類によって効く周波数帯が違うのが頻出ポイントです。

吸音材:効く周波数が違う 低音 高音 多孔質材(高音に効く) 板・膜振動(低音に効く)
吸音のしくみ材料例効く周波数
多孔質材グラスウール・ロックウール中〜高音
板(膜)振動合板・石こうボードを張り、背後に空気層低音
共鳴器(孔あき板)有孔ボード+背後空気層特定周波数(中音中心)
  • 多孔質材は、細かい穴で空気が摩擦され高い音をよく吸う。背後に空気層を設けると低音側にも効く
  • 板振動は、板が低い音で揺れて低音を吸う

「多孔質=高音・板膜=低音」が最頻出の対比です。


遮音①:透過損失と質量則

ここからは「音を伝えない(遮音)」話。壁がどれだけ音を遮るかを透過損失TL[dB]で表します。TLが大きいほど遮音性能が高い

質量則

質量則:透過損失と面密度・周波数 透過損失TLは、壁の面密度(重さ)が2倍・周波数が2倍になるごとに約6dB増える。重い壁ほど線が上(遮音性能が高い)で、いずれも高音ほど右上がり。 質量則:壁が重いほど・音が高いほど遮音できる(透過損失TL) 低音 高音 透過損失 TL(遮音) 重い壁 軽い壁 重いほど大 高音ほど大(+6dB/oct) 質量則=面密度(重さ)が2倍・周波数が2倍ごとに約+6dB

質量則:壁の面密度(重さ)が大きいほど、また音の周波数が高いほど、透過損失は大きい(遮音性能が高い)。面密度を2倍、または周波数を2倍にすると、透過損失は約6dB増える。

「重い壁・高い音は遮りやすい/軽い壁・低い音は漏れやすい」——だから低音(重低音)は遮りにくいのが現実です。

コインシデンス効果

質量則の例外。特定の周波数で壁が共振し、透過損失が低下(音が漏れやすくなる)する現象をコインシデンス効果といいます。「質量則どおりにいかず、ある周波数で性能が落ちる」と押さえます。

単層壁より二重壁

同じ重さなら、間に空気層をはさんだ二重壁のほうが遮音に有利。ただし空気層が特定周波数で共鳴して性能が落ちる低音域共鳴透過に注意。


遮音②:床衝撃音と遮音等級

集合住宅で重要な床衝撃音は2種類あります。

種類原因対策
軽量床衝撃音(LL)スプーンの落下・スリッパなど軽く高い音**表面材(カーペット・緩衝材)**で効果的
重量床衝撃音(LH)子どもの飛び跳ねなど重く低い音床躯体の質量・剛性を上げる(表面材では効きにくい)

「軽い音は表面材、重い音は躯体」が対策の使い分け。

遮音等級——D値とL値

等級何を表すか良いのは
D値室間の音圧レベル差(壁などの遮音性能)大きいほど良い
L値床衝撃音レベル(下階に伝わる音)小さいほど良い

ここが最頻出のひっかけ。D値は大きいほど良い/L値は小さいほど良い。L値は「下に伝わる音の大きさ」なので、小さいほど静か=高性能、と理由で覚えます。


室内騒音の評価——NC値とA特性

室内の静けさ(暗騒音の許容値)を表す指標です。

指標内容
NC値室内騒音の許容値。小さいほど静か(音楽ホール・病院は小さく、工場は大きくてよい)
A特性音圧レベル(dB(A))人の聞こえ方(低音を割り引く)に合わせて補正した騒音レベル
等価騒音レベル LAeq変動する騒音を一定時間で平均化した代表値。道路交通騒音などの評価に使う

NC値・L値は小さいほど良い/D値・透過損失は大きいほど良い」。良し悪しの向きをセットで整理。

その他の音響現象

現象内容
エコー(反響)反射音が遅れて届き、はっきり聞こえる現象
フラッターエコー平行な壁・床天井の間で音が往復し、ビーンと響く多重反射
マスキング効果ある音が別の音をかき消して聞こえにくくする。BGMで会話を聞こえにくくする等に応用
カクテルパーティ効果雑音の中でも聞きたい声を選んで聞き取れる

フラッターエコー対策は平行面をなくす/拡散・吸音。劇場の音響計画とも共通。

空気音と固体音、吸音率の意味

用語内容
空気音(空気伝搬音)空気を伝わる音(話し声・TV)。**遮音(重い壁)**で対応
固体音(固体伝搬音)躯体を伝わる振動音(足音・設備振動)。防振・絶縁で対応
吸音率入射音のうち反射せず吸収+透過した割合。1に近いほどよく吸う。完全な開口(窓全開)は吸音率1とみなす

「空気音=重さで止める/固体音=振動を切る(防振)」。設備配管・機械は固体音対策が要る、が頻出。


○×で総チェック

Q1. 同じ大きさの音を2つ重ねると、音圧レベルは2倍(+6dB)になる。

×。エネルギーが2倍で**+3dB**。デシベルは対数。

Q2. 点音源では、音源からの距離が2倍になると音圧レベルは約6dB低下する。

。線音源は3dB低下。

Q3. 残響時間は、室容積が大きいほど短くなる。

×。容積が大きいほど長くなる(T=0.161V/A)。吸音力が大きいほど短い。

Q4. 会議室は、音楽ホールより残響時間を長くするのが望ましい。

×。言葉の明瞭さのため会議室は短め、音楽ホールは長め。

Q5. 多孔質吸音材は、低音域の吸音に最も効果的である。

×。多孔質は中〜高音に効く。低音は板(膜)振動。

Q6. 壁の透過損失は、面密度が大きいほど、また周波数が高いほど大きい(質量則)。

。面密度2倍or周波数2倍で約+6dB。

Q7. 重量床衝撃音は、床の表面にカーペットを敷くことで効果的に低減できる。

×。カーペットは軽量衝撃音に有効。重量衝撃音は躯体の質量・剛性で対応。

Q8. 床衝撃音のL値は、値が大きいほど遮音性能が高い。

×。L値は小さいほど良い。D値は大きいほど良い。

Q9. 室内騒音の許容値を表すNC値は、値が大きいほど静かな室であることを示す。

×。NC値は小さいほど静か。音楽ホール・病院は小さく設定する。

Q10. フラッターエコーは、平行な壁面や床天井の間で音が往復することで生じる。

。対策は平行面をなくす・拡散・吸音。

Q11. 足音や設備振動などの固体伝搬音は、壁を重くする遮音より防振・絶縁が有効である。

。固体音は振動を切る(防振)。空気音は重さ(遮音)。


まとめ——音は「何を表す数字か」で攻略

  • dBは対数。同じ音2つで**+3dB**
  • 距離減衰:点音源−6dB/線音源−3dB(距離2倍ごと)
  • 残響時間 T=0.161V/A。容積大で長く・吸音力大で短く。会議室短め・ホール長め
  • 吸音:多孔質=高音/板膜=低音/共鳴器=特定周波数
  • 遮音:質量則(重い・高音ほどTL大、2倍で+6dB)、例外がコインシデンス
  • 床衝撃音:軽量=表面材/重量=躯体D値・透過損失は大きく/L値・NC値は小さくが高性能
  • 騒音評価:NC値・LAeq・dB(A)/音響現象:フラッターエコー(平行面)・マスキング/空気音=遮音・固体音=防振

音は概念が抽象的ですが、「対数」「広がり方」「重さ」「効く周波数」という具体イメージに落とすと、計算もひっかけも怖くありません。

次回は環境・設備シリーズ最終回、**設備(空調・給排水・電気)**を取り上げます。


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