一級建築士【環境・設備】日照・日射を「理由」で覚える|方位別日射量・日影規制を図解
ここからは環境・設備シリーズに入ります。範囲が広いので、
- 日照・日射(←この記事)
- 採光・照明
- 換気・通風
- 伝熱・結露
- 音(音響・遮音)
- 設備(空調・給排水・電気)
と分けて掘り下げます。第1弾は、すべての光・熱環境の出発点である日照・日射です。
このテーマは数字や方位の関係が多く混乱しがちですが、「太陽がどう動くか」を理解すれば、季節・方位の日射量はすべて導けます。丸暗記ではなく、太陽の動きから考えていきましょう。
⚠️ 内容は建築環境工学の一般的な解説と建築基準法(日影規制)に基づきます。
まず太陽の動き——「夏は高く、冬は低い」
すべての出発点は、太陽が季節によって通り道(高度)を変えること。
南中(正午ごろ)の太陽の高さ=南中高度は、計算で出せます。
| 季節 | 南中高度 |
|---|---|
| 夏至 | 90° − 緯度 + 23.4° |
| 春分・秋分 | 90° − 緯度 |
| 冬至 | 90° − 緯度 − 23.4° |
「夏至は+23.4°で高く、冬至は−23.4°で低い」。地球の地軸が23.4°傾いているのが理由です。この高度差が、季節・方位の日射量のすべてを決めます。
可照時間・日照時間・日照率
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 可照時間 | 日の出から日の入りまでの、理論上日が照りうる時間(障害物なし)。夏至が最長・冬至が最短 |
| 日照時間 | 実際に日が照った時間(雲などで変わる) |
| 日照率 | 日照時間 ÷ 可照時間 |
可照時間は「太陽が空にいる長さ」なので夏至が最長。日照率は実績の割合、と区別します。
日射の3種類——直達・天空・全天
地表に届く日射は、届き方で3つに分けます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 直達日射 | 太陽から直接、まっすぐ届く日射。入射角が小さい(垂直に近い)ほど大きい |
| 天空(拡散)日射 | 大気で散乱して青空全体から届く日射。曇天時はこれが主 |
| 全天日射 | 水平面が受ける直達+天空の合計 |
大気透過率——澄んだ空は直達が強い
大気透過率が高い(空気が澄んでいる)ほど、直達日射は増え、天空日射は減ります。
冬は空気が乾燥して澄むため大気透過率が高く、直達日射が強くなりやすい——これも南面が冬に有利な一因です。
方位別の終日日射量——最頻出テーマ
ここが日射の山場。**1日に各面が受ける日射の合計(終日日射量)**は、季節と方位で大小が変わります。理由は「太陽の高度」です。
覚えるべき結論
| 面 | 終日日射量が最大の季節 | 理由 |
|---|---|---|
| 水平面 | 夏至 | 太陽が高く、真上から当たる |
| 南鉛直面 | 冬至 | 太陽が低く、正面から当たる(夏は高すぎて浅く当たる) |
| 東・西鉛直面 | 夏至 | 朝夕に低い太陽が正面から当たる |
特に頻出のひっかけが2つ。
- 南面は冬至が最大(夏至ではない)。夏は太陽が高すぎて南の壁には浅くしか当たらない
- 夏至の方位順は「水平>東西>南>北」——夏は南より東西の壁のほうが日射が多い(朝夕の低い日射)。だから夏の暑さ対策は東西面が重要
「太陽が高い夏は水平面・東西面、太陽が低い冬は南面」と、高度から考えれば暗記不要です。
日射の遮蔽——方位で庇の形が変わる
夏の日射を防ぐ(日射遮蔽)には、方位ごとに有効な形が違います。これも太陽高度で説明できます。
- 南面:夏の太陽は高いので、水平の庇(ひさし)・水平ルーバーが有効
- 東・西面:朝夕の太陽は低いので、水平庇では防げない。縦(垂直)ルーバーが有効
「高い太陽=水平で切る、低い太陽=縦で切る」と、太陽高度に対応させて覚えます。日射はガラスの内側(カーテン)より外側(庇・外付けブラインド)で遮るほうが効果的(室内に入る前に止める)、というのも頻出です。
ガラスの日射遮蔽性能——遮蔽係数とLow-E
開口部からどれだけ熱が入るかは、ガラスの種類で決まります。指標と建材をセットで押さえます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 日射熱取得率(η値・SHGC) | 入射する日射のうち、室内に侵入する熱の割合。小さいほど日射を遮る |
| 日射遮蔽係数(SC) | 厚さ3mmの透明ガラスを1.0とした相対値。小さいほど遮蔽性能が高い |
| Low-E複層ガラス | 特殊金属膜で放射(輻射)熱を反射。遮熱型(日射を抑える)と断熱型(暖房熱を逃がさない)がある |
| 外付けブラインド・庇 | ガラスの屋外側で遮るので、室内側ブラインドより遮蔽効果が高い |
指標の軸:η値・SCは「小さいほど日射を遮る」。前回の計画記事で扱ったUA値・ηAC値が小さいほど高性能と同じ向きで覚える。
隣棟間隔——冬至の日照を確保する
集合住宅などでは、前の建物の影で日が入らないことを防ぐため隣棟間隔をとります。
- 基準は冬至日(影が最も長い)。一般に冬至に4時間以上の日照を確保できる間隔が目安とされる。
- 必要な間隔は緯度が高い(北に行く)ほど太陽が低くなり、広くとる必要がある。
- 隣棟間隔比=**D(隣棟距離)/H(建物高さ)**で表し、計画記事のD/H比とも関係する。
「冬至・4時間」「北ほど広く」。太陽が低い条件(冬至・高緯度)ほど影が長く、間隔が必要になる、と高度から考える。
日影——日影曲線と規制
建物がつくる影の問題も重要です。
日影の用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 日影曲線 | ある点が一日でつくる影の先端の軌跡 |
| 終日日影 | 一日中、日が当たらない部分 |
| 永久日影 | 一年で最も影が短い夏至でも終日日影になる部分(=一年中日が当たらない) |
「永久日影は夏至でも日影になる所」。夏至で影にならなければ、他の季節でもどこかで日が当たる、という理屈です。
日影規制(建築基準法第56条の2)
近隣の日照を守るため、建物がつくる日影の時間を規制します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基準日 | 冬至日(影が最も長い日) |
| 時間帯 | 真太陽時の8時〜16時(北海道の区域は9時〜15時) |
| 測定ライン | 敷地境界線から水平距離5m・10mのライン(5m超〜10m、10m超で許容時間が異なる) |
| 測定面の高さ | 地域・建物に応じた平均地盤面からの一定高さ |
なぜ冬至・8〜16時か——冬至は一年で影が最も長く、最も厳しい条件。さらに早朝・夕方(8時前・16時後)の太陽は低すぎて日照の意味が小さいため、8〜16時で評価します。「最も厳しい日・意味のある時間帯で守る」という発想です。
○×で総チェック
Q1. 南向き鉛直面の終日日射量は、夏至に最大となる。
→ ×。冬至が最大。夏は太陽が高すぎて南面には浅くしか当たらない。
Q2. 夏至の終日日射量は、南向き鉛直面より東・西向き鉛直面のほうが大きい。
→ ○。夏至は「水平>東西>南>北」。朝夕の低い太陽が東西面に当たる。
Q3. 水平面の終日日射量は、夏至に最大となる。
→ ○。太陽が高く真上から当たるため。
Q4. 大気透過率が高いほど、直達日射は減り天空日射が増える。
→ ×。逆。透過率が高い(澄んだ空)ほど直達日射が増え、天空日射は減る。
Q5. 南面の日射遮蔽には、縦(垂直)ルーバーが最も有効である。
→ ×。南面は高い太陽なので水平の庇・ルーバーが有効。縦ルーバーは東西面向き。
Q6. 可照時間は、冬至に最も長くなる。
→ ×。可照時間は夏至が最長・冬至が最短。
Q7. 永久日影は、夏至においても終日日影となる部分である。
→ ○。一年中日が当たらない部分。
Q8. 日影規制は、夏至日の8時から16時までの日影で規制する。
→ ×。冬至日の8〜16時(北海道は9〜15時)。影が最も長い日で評価する。
Q9. 日射は、ガラスの室内側のカーテンより、屋外側の庇で遮るほうが遮蔽効果が高い。
→ ○。室内に入る前に止めるほうが効果的。
Q10. 日射熱取得率(η値)が大きいガラスほど、室内への日射の侵入が少なく遮蔽性能が高い。
→ ×。逆。η値・日射遮蔽係数SCは小さいほど日射を遮る。
Q11. 隣棟間隔は、緯度が高い地域ほど狭くてよい。
→ ×。緯度が高いほど冬の太陽が低く影が長いので、隣棟間隔は広くとる必要がある。
まとめ——日照・日射は「太陽の高度」で導ける
- 太陽は夏に高く(+23.4°)・冬に低い(−23.4°)。これが全ての基
- 可照時間は夏至最長。日照率=日照時間÷可照時間
- 日射は直達+天空=全天。大気透過率が高いと直達↑・天空↓
- 終日日射量:水平面=夏至最大/南面=冬至最大/夏至は水平>東西>南>北
- 日射遮蔽:南は水平庇・東西は縦ルーバー、屋外側で遮るのが有効/η値・SCは小さいほど遮る・Low-E複層ガラス
- 隣棟間隔:冬至に4時間以上の日照を確保、北(高緯度)ほど広く
- 日影規制:冬至・8〜16時(北海道9〜15時)・境界から5m/10m
数字や方位の大小は丸暗記しようとすると混乱しますが、**「太陽が高いか低いか」**に立ち返れば、その場で導けます。これが環境工学を得点源にするコツです。
次回は採光・照明(昼光率・照度・色温度)を取り上げます。
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