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一級建築士環境設備日照日射日影規制2026年

一級建築士【環境・設備】日照・日射を「理由」で覚える|方位別日射量・日影規制を図解

ここからは環境・設備シリーズに入ります。範囲が広いので、

  1. 日照・日射(←この記事)
  2. 採光・照明
  3. 換気・通風
  4. 伝熱・結露
  5. 音(音響・遮音)
  6. 設備(空調・給排水・電気)

と分けて掘り下げます。第1弾は、すべての光・熱環境の出発点である日照・日射です。

このテーマは数字や方位の関係が多く混乱しがちですが、「太陽がどう動くか」を理解すれば、季節・方位の日射量はすべて導けます。丸暗記ではなく、太陽の動きから考えていきましょう。

⚠️ 内容は建築環境工学の一般的な解説と建築基準法(日影規制)に基づきます。


まず太陽の動き——「夏は高く、冬は低い」

すべての出発点は、太陽が季節によって通り道(高度)を変えること。

太陽の通り道(夏至は高く・冬至は低い) 建物(南面) 夏至(南中高度 高い) 冬至(南中高度 低い) 西

南中(正午ごろ)の太陽の高さ=南中高度は、計算で出せます。

季節南中高度
夏至90° − 緯度 + 23.4°
春分・秋分90° − 緯度
冬至90° − 緯度 − 23.4°

「夏至は+23.4°で高く、冬至は−23.4°で低い」。地球の地軸が23.4°傾いているのが理由です。この高度差が、季節・方位の日射量のすべてを決めます。

可照時間・日照時間・日照率

用語意味
可照時間日の出から日の入りまでの、理論上日が照りうる時間(障害物なし)。夏至が最長・冬至が最短
日照時間実際に日が照った時間(雲などで変わる)
日照率日照時間 ÷ 可照時間

可照時間は「太陽が空にいる長さ」なので夏至が最長。日照率は実績の割合、と区別します。


日射の3種類——直達・天空・全天

地表に届く日射は、届き方で3つに分けます。

直達日射+天空日射=全天日射 直達日射 まっすぐ届く 天空(拡散)日射 大気で散乱し青空全体から 全天日射=直達(水平面成分)+天空
種類内容
直達日射太陽から直接、まっすぐ届く日射。入射角が小さい(垂直に近い)ほど大きい
天空(拡散)日射大気で散乱して青空全体から届く日射。曇天時はこれが主
全天日射水平面が受ける直達+天空の合計

大気透過率——澄んだ空は直達が強い

大気透過率が高い(空気が澄んでいる)ほど、直達日射は増え、天空日射は減ります。

冬は空気が乾燥して澄むため大気透過率が高く、直達日射が強くなりやすい——これも南面が冬に有利な一因です。


方位別の終日日射量——最頻出テーマ

ここが日射の山場。**1日に各面が受ける日射の合計(終日日射量)**は、季節と方位で大小が変わります。理由は「太陽の高度」です。

快晴時の終日日射量(方位×季節) 夏至 太陽が高い 水平 東西 水平>東西>南>北 冬至 太陽が低い 水平 東西 南>水平>東西(北≒0)

覚えるべき結論

終日日射量が最大の季節理由
水平面夏至太陽が高く、真上から当たる
南鉛直面冬至太陽が低く、正面から当たる(夏は高すぎて浅く当たる)
東・西鉛直面夏至朝夕に低い太陽が正面から当たる

特に頻出のひっかけが2つ。

  1. 南面は冬至が最大(夏至ではない)。夏は太陽が高すぎて南の壁には浅くしか当たらない
  2. 夏至の方位順は「水平>東西>南>北」——夏は南より東西の壁のほうが日射が多い(朝夕の低い日射)。だから夏の暑さ対策は東西面が重要

「太陽が高い夏は水平面・東西面、太陽が低い冬は南面」と、高度から考えれば暗記不要です。


日射の遮蔽——方位で庇の形が変わる

夏の日射を防ぐ(日射遮蔽)には、方位ごとに有効な形が違います。これも太陽高度で説明できます。

方位別の日射遮蔽 南面は断面で見ると、高い夏の日射は水平庇で遮られ窓は日影になり、低い冬の日射は庇の下から室内に入る。東西面は平面で見ると、横から来る朝夕の低い日射を縦ルーバーが遮る。 日射遮蔽:南=水平庇/東西=縦ルーバー(理由は太陽高度) 南面(断面で見る) 水平庇 夏(高い) 日影 冬(低い) 水平庇=夏の高い日射を遮り、冬の低い日射は採り入れる 東西面(上から見た平面) 室内 縦ルーバー 朝夕(低い・横から) 縦ルーバー=横から来る朝夕の低い日射を遮る
  • 南面:夏の太陽は高いので、水平の庇(ひさし)・水平ルーバーが有効
  • 東・西面:朝夕の太陽は低いので、水平庇では防げない。縦(垂直)ルーバーが有効

「高い太陽=水平で切る、低い太陽=縦で切る」と、太陽高度に対応させて覚えます。日射はガラスの内側(カーテン)より外側(庇・外付けブラインド)で遮るほうが効果的(室内に入る前に止める)、というのも頻出です。

ガラスの日射遮蔽性能——遮蔽係数とLow-E

開口部からどれだけ熱が入るかは、ガラスの種類で決まります。指標と建材をセットで押さえます。

用語意味
日射熱取得率(η値・SHGC)入射する日射のうち、室内に侵入する熱の割合。小さいほど日射を遮る
日射遮蔽係数(SC)厚さ3mmの透明ガラスを1.0とした相対値。小さいほど遮蔽性能が高い
Low-E複層ガラス特殊金属膜で放射(輻射)熱を反射。遮熱型(日射を抑える)と断熱型(暖房熱を逃がさない)がある
外付けブラインド・庇ガラスの屋外側で遮るので、室内側ブラインドより遮蔽効果が高い

指標の軸:η値・SCは「小さいほど日射を遮る」。前回の計画記事で扱ったUA値・ηAC値が小さいほど高性能と同じ向きで覚える。


隣棟間隔——冬至の日照を確保する

集合住宅などでは、前の建物の影で日が入らないことを防ぐため隣棟間隔をとります。

  • 基準は冬至日(影が最も長い)。一般に冬至に4時間以上の日照を確保できる間隔が目安とされる。
  • 必要な間隔は緯度が高い(北に行く)ほど太陽が低くなり、広くとる必要がある
  • 隣棟間隔比=**D(隣棟距離)/H(建物高さ)**で表し、計画記事のD/H比とも関係する。

「冬至・4時間」「北ほど広く」。太陽が低い条件(冬至・高緯度)ほど影が長く、間隔が必要になる、と高度から考える。


日影——日影曲線と規制

建物がつくる影の問題も重要です。

日影の用語

用語意味
日影曲線ある点が一日でつくる影の先端の軌跡
終日日影一日中、日が当たらない部分
永久日影一年で最も影が短い夏至でも終日日影になる部分(=一年中日が当たらない)

「永久日影は夏至でも日影になる所」。夏至で影にならなければ、他の季節でもどこかで日が当たる、という理屈です。

日影規制(建築基準法第56条の2)

近隣の日照を守るため、建物がつくる日影の時間を規制します。

項目内容
基準日冬至日(影が最も長い日)
時間帯真太陽時の8時〜16時(北海道の区域は9時〜15時
測定ライン敷地境界線から水平距離5m・10mのライン(5m超〜10m、10m超で許容時間が異なる)
測定面の高さ地域・建物に応じた平均地盤面からの一定高さ

なぜ冬至・8〜16時か——冬至は一年で影が最も長く、最も厳しい条件。さらに早朝・夕方(8時前・16時後)の太陽は低すぎて日照の意味が小さいため、8〜16時で評価します。「最も厳しい日・意味のある時間帯で守る」という発想です。


○×で総チェック

Q1. 南向き鉛直面の終日日射量は、夏至に最大となる。

×冬至が最大。夏は太陽が高すぎて南面には浅くしか当たらない。

Q2. 夏至の終日日射量は、南向き鉛直面より東・西向き鉛直面のほうが大きい。

。夏至は「水平>東西>南>北」。朝夕の低い太陽が東西面に当たる。

Q3. 水平面の終日日射量は、夏至に最大となる。

。太陽が高く真上から当たるため。

Q4. 大気透過率が高いほど、直達日射は減り天空日射が増える。

×。透過率が高い(澄んだ空)ほど直達日射が増え、天空日射は減る。

Q5. 南面の日射遮蔽には、縦(垂直)ルーバーが最も有効である。

×。南面は高い太陽なので水平の庇・ルーバーが有効。縦ルーバーは東西面向き。

Q6. 可照時間は、冬至に最も長くなる。

×。可照時間は夏至が最長・冬至が最短。

Q7. 永久日影は、夏至においても終日日影となる部分である。

。一年中日が当たらない部分。

Q8. 日影規制は、夏至日の8時から16時までの日影で規制する。

×冬至日の8〜16時(北海道は9〜15時)。影が最も長い日で評価する。

Q9. 日射は、ガラスの室内側のカーテンより、屋外側の庇で遮るほうが遮蔽効果が高い。

。室内に入る前に止めるほうが効果的。

Q10. 日射熱取得率(η値)が大きいガラスほど、室内への日射の侵入が少なく遮蔽性能が高い。

×。η値・日射遮蔽係数SCは小さいほど日射を遮る。

Q11. 隣棟間隔は、緯度が高い地域ほど狭くてよい。

×。緯度が高いほど冬の太陽が低く影が長いので、隣棟間隔は広くとる必要がある。


まとめ——日照・日射は「太陽の高度」で導ける

  • 太陽は夏に高く(+23.4°)・冬に低い(−23.4°)。これが全ての基
  • 可照時間は夏至最長。日照率=日照時間÷可照時間
  • 日射は直達+天空=全天。大気透過率が高いと直達↑・天空↓
  • 終日日射量:水平面=夏至最大/南面=冬至最大/夏至は水平>東西>南>北
  • 日射遮蔽:南は水平庇・東西は縦ルーバー、屋外側で遮るのが有効/η値・SCは小さいほど遮る・Low-E複層ガラス
  • 隣棟間隔:冬至に4時間以上の日照を確保、北(高緯度)ほど広く
  • 日影規制:冬至・8〜16時(北海道9〜15時)・境界から5m/10m

数字や方位の大小は丸暗記しようとすると混乱しますが、**「太陽が高いか低いか」**に立ち返れば、その場で導けます。これが環境工学を得点源にするコツです。

次回は採光・照明(昼光率・照度・色温度)を取り上げます。


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