← 記事一覧へ
一級建築士構造免震制振耐震積層ゴムダンパー文章題2026年

一級建築士【構造】免震・制振・耐震の違いをわかりやすく解説|しくみと特徴を比較

構造文章題シリーズ第6弾は免震・制振です。

近年の試験で存在感を増しているテーマで、「耐震・制振・免震の違い」を問う問題が定番化しています。考え方の違いさえつかめば、確実に得点できる分野です。


3つの戦略——地震とどう付き合うか

地震に対する構造の戦略は、大きく3つに分かれます。

方式戦略例えるなら
耐震構造体の強さと粘りで耐える正面から受け止める
制振ダンパーで揺れのエネルギーを吸収する衝撃を逃がすクッション
免震建物を地盤から切り離し、揺れを伝えない絶縁する
耐震・制振・免震の違い 耐震 固めて耐える 揺れは大きい 制振 ダンパー 揺れを吸収 やや低減 免震 積層ゴムで絶縁 揺れを伝えない

免震構造——「揺れを伝えない」

しくみ

建物と基礎の間(または中間階)に免震層を設け、2種類の装置を置きます。

装置役割
アイソレータ(積層ゴムなど)建物を支えつつ、水平方向に柔らかく変形して地震動を伝えにくくする
ダンパー(鉛・鋼材・オイルなど)揺れのエネルギーを吸収し、変位が大きくなりすぎるのを抑える

積層ゴムは「ゴムと鋼板を交互に重ねた」もの。鉛直方向には硬く(建物の重さをしっかり支える)、水平方向には柔らかいという都合のよい性質を持ちます。

免震の原理は「周期をずらす」

免震層が水平に柔らかいため、建物の固有周期が大幅に長くなります

地震動の主要な周期帯(短周期)から建物の周期を遠ざけることで共振を避け、建物に伝わる加速度(揺れの激しさ)を大幅に低減します。

試験で狙われる免震の特徴

  • 上部構造の加速度応答は小さくなるが、免震層には大きな水平変位が生じる
  • そのため建物の周囲に**クリアランス(隙間)**が必要。配管・エレベーター・エキスパンションジョイントも変位に追従できる仕様にする
  • 軟弱地盤では効果が出にくい(地盤の揺れ自体が長周期になり、免震建物と共振するおそれ)
  • 強風時にも建物が動かないよう、ダンパー等で風揺れ対策が必要
  • 免震は新築だけでなく既存建物の改修(レトロフィット)にも適用できる

なぜ「周期を長くする」と揺れが減るのか

地震動には、その地盤ごとに揺れやすい卓越周期(多くは短周期=0.1〜1秒程度)があります。建物の固有周期がこれに近いと共振して激しく揺れます。

免震で固有周期を3〜5秒程度に長くすると、地震動の卓越周期から離れて共振を避けられる。結果、上部構造に伝わる加速度(揺れの激しさ)が減る——ただし、ゆっくり大きく動くため変位は増える。「加速度は減るが変位は増える」のトレードオフが免震の本質です。

免震部材

部材役割
アイソレータ(積層ゴム)建物を支え、水平に柔らかく変形して周期を伸ばす
鉛プラグ入り積層ゴム積層ゴムに鉛を入れ、支持+減衰を兼ねる
すべり支承・転がり支承滑り・転がりで水平移動を許す
ダンパー変位を抑え、エネルギーを吸収する

免震層は維持管理(定期点検)が前提。地震後・経年で部材を点検・交換できることも特徴です。


制振構造——「揺れを吸収する」

しくみ

建物の骨組の中に**ダンパー(制振部材)**を組み込み、地震や風のエネルギーを吸収させます。

ダンパーの種類しくみ
鋼材ダンパー鋼材の塑性変形でエネルギー吸収(低降伏点鋼など)
オイルダンパー油の粘性抵抗で吸収
粘弾性ダンパーゴム系材料の変形で吸収
マスダンパー(TMD)屋上などに置いたおもりの揺れで建物の揺れを打ち消す

試験で狙われる制振の特徴

  • 主体構造の損傷を抑え、ダンパーに損傷を集中させる(ダンパーは交換できる)
  • 免震ほど大掛かりな工事が不要で、既存建物の耐震改修に使いやすい
  • 風による揺れ(居住性)の改善にも有効——超高層建物でよく使われる理由
  • 制振は地震動を遮断するわけではないので、免震ほど加速度を下げられるわけではない

制振ダンパーの2つの効きどころ

ダンパーは「効くしくみ」で2系統に分けると整理できます。

系統効きやすい揺れ
変位依存型鋼材ダンパー(塑性変形)大きく変形する大地震で効く
速度依存型オイルダンパー(粘性)小さくても速い揺れ・風揺れにも効く

鋼材ダンパーは「大きく曲げられて初めて効く」、オイルダンパーは「速度に応じて効く(小さな揺れ・風でも)」。だから居住性(風揺れ)改善には速度依存型が向く、という理由が見えてきます。


耐震・制振・免震の比較まとめ

耐震制振免震
考え方強度・靭性で耐えるエネルギーを吸収揺れを伝えない
建物の揺れ(加速度)大きいやや低減大幅に低減
家具の転倒・内部被害起こりやすいやや抑える起こりにくい
コスト(免震層・維持管理)
主な適用すべての建物の基本超高層・改修病院・庁舎・マンション等

「免震にすれば耐震性が不要になる」わけではありません。免震建物でも上部構造には所定の耐震性が必要です。3つは対立ではなく組み合わせの関係です。


○×で総チェック

Q1. 免震構造は、建物の固有周期を短くすることで地震の影響を低減する。

×長くする。地震動の卓越周期から遠ざけて共振を避ける。

Q2. 積層ゴムは、鉛直方向には硬く、水平方向には柔らかい性質をもつ。

。だから建物を支えながら水平の揺れを絶縁できる。

Q3. 免震構造を採用すると、免震層の水平変位は小さくなる。

×。加速度は減るが、免震層には大きな変位が生じる。クリアランスが必要。

Q4. 免震構造は、軟弱地盤に建つ建物ほど効果を発揮しやすい。

×。軟弱地盤は揺れが長周期化し、免震建物と共振するおそれがあるため効果が出にくい。

Q5. 制振ダンパーは、主体構造より先にエネルギーを吸収し、損傷を集中的に受け持つ。

。損傷をダンパーに集め、本体を守る設計思想。

Q6. 制振構造は、地震時だけでなく強風時の揺れの低減にも有効である。

。超高層建物の居住性改善に広く使われる。

Q7. 免震構造は新築の建物にしか採用できない。

×。既存建物の免震レトロフィットも行われている。

Q8. 免震構造では、上部構造の加速度応答は小さくなるが、免震層の変位は大きくなる。

。「加速度減・変位増」が免震のトレードオフ。クリアランスが必要。

Q9. オイルダンパー(速度依存型)は、風による小さな揺れの低減には効果がない。

×。速度依存型は小さく速い揺れ・風揺れにも効く。鋼材ダンパーは大変形で効く。

Q10. 鉛プラグ入り積層ゴムは、建物の支持と減衰(エネルギー吸収)を兼ねる。

。積層ゴムに鉛を入れ、支持+減衰の両方を担う。


まとめ

  • 3つの戦略:耐える(耐震)・吸収する(制振)・伝えない(免震)
  • 免震=周期を長くして共振を避ける。加速度は減るが変位は大きい→クリアランス必須
  • 積層ゴムは鉛直に硬く水平に柔らかい。ダンパーが変位を抑える相棒
  • 軟弱地盤×免震は相性が悪い
  • 制振はダンパーに損傷を集中させて本体を守る。風揺れ対策・改修にも有効

これで構造文章題シリーズは荷重・RC・S造・地盤基礎・木構造・免震制振と、主要分野が出揃いました。計算系の記事とあわせて、構造30問を得点源にしていきましょう。


構造の関連記事:

📚 構造の全範囲を体系的に学ぶなら一級建築士【構造】完全ガイド