一級建築士【構造】地盤と基礎の知識まとめ|許容応力度・杭基礎・液状化のポイント
構造文章題シリーズ第4弾は地盤と基礎です。
建物がどれだけ頑丈でも、支える地盤と基礎が弱ければ意味がありません。このテーマは令第93条の数値と、杭・液状化の知識が二本柱です。
地盤の長期許容応力度(令第93条)——大小関係で覚える
地盤の種類ごとに、長期に生じる力に対する許容応力度が定められています。
| 地盤 | 長期許容応力度(kN/㎡) |
|---|---|
| 岩盤 | 1,000 |
| 固結した砂 | 500 |
| 土丹盤 | 300 |
| 密実な礫層 | 300 |
| 密実な砂質地盤 | 200 |
| 砂質地盤(液状化のおそれのないもの) | 50 |
| 堅い粘土質地盤 | 100 |
| 粘土質地盤 | 20 |
| 堅いローム層 | 100 |
| ローム層 | 50 |
全部の暗記は大変なので、試験対策としては——
- 最大は岩盤1,000・最小は粘土質地盤20
- 「堅い」が付くと数倍に跳ね上がる(粘土20→堅い粘土100)
- 大小比較で出されたら「岩>砂礫系>ローム>粘土」の順
なお短期許容応力度は長期の2倍です(地盤・基礎ぐい共通の原則)。
直接基礎——浅く支える
建物の荷重を基礎スラブから直接地盤に伝える形式です。
| 形式 | 特徴 |
|---|---|
| 独立基礎 | 柱ごとに独立したフーチング |
| 布基礎 | 壁の下に連続して設ける |
| べた基礎 | 建物全体を一枚のスラブで支える。軟弱地盤に有利(接地圧が小さくなる) |
試験で狙われる知識
- 基礎の底面は、支持地盤まで根入れする。根入れを深くするほど支持力は大きくなる
- 直接基礎の接地圧は、地盤が砂質か粘土質かで分布形状が異なる
- 同一建物に異種の基礎(直接基礎と杭基礎など)を併用することは、不同沈下の原因になるため原則として避ける
- 圧密沈下:粘土質地盤で、長期間かけて水が絞り出されて沈む現象。砂質地盤では生じにくい(沈下は即時に近い)
杭基礎——深く支える
浅い地盤が弱い場合、杭で深部の支持層まで荷重を届けます。
支持杭と摩擦杭
| 種類 | 支持のしくみ |
|---|---|
| 支持杭 | 杭の先端を硬い支持層に到達させ、先端支持力で支える |
| 摩擦杭 | 杭の周面と土の摩擦力で支える(支持層が深すぎる場合など) |
実際の杭の許容支持力は「先端支持力+周面摩擦力」で評価しますが、種類としてはどちらを主とするかで区別されます。
負の摩擦力(ネガティブフリクション)——最頻出!
通常、周面摩擦力は杭を上向きに支える力です。
ところが、軟弱地盤が圧密沈下すると、沈む地盤が杭を下向きに引きずり込む力に変わります。これが負の摩擦力です。
負の摩擦力が生じると、杭の先端部に作用する軸力(圧縮力)は増大する。
特に支持杭で問題になります(摩擦杭は地盤と一緒に沈むため影響が小さい)。「負の摩擦力で杭の軸力が増える」「支持杭で顕著」——この2点がそのまま出ます。
杭の工法
| 工法 | 特徴 |
|---|---|
| 打込み杭 | 既製杭を打撃で打ち込む。締固め効果で支持力は大きめだが、騒音・振動が大きい |
| 埋込み杭 | 掘った孔に既製杭を入れる。低騒音・低振動 |
| 場所打ちコンクリート杭 | 現場で孔を掘り、鉄筋かごを入れてコンクリートを打つ。大径・大支持力が可能 |
同じ地盤なら、一般に支持力の大小は打込み杭>埋込み杭・場所打ち杭の傾向(施工時の締固め効果の差)です。
液状化——砂が水に浮く
地震の揺れで、水で飽和した緩い砂地盤が一時的に液体のようにふるまう現象です。
液状化が起こりやすい3条件
① 緩い「砂質」地盤である(粘土では起こらない)
② 地下水位が高い(水で飽和している)
③ 強い地震動を受ける
埋立地・旧河道・海岸沿いの緩い砂地盤が典型です。
対策
- 締固め(地盤を密にする)
- 地下水位を下げる
- 薬液注入などによる固化
- 杭で液状化層より深い支持層に支持させる
「粘土質地盤は液状化しやすい」という選択肢は誤り。液状化は砂の現象です(粘土の問題は圧密沈下)。この対比が定番のひっかけです。
地盤調査——「どんな地盤か」を先に知る
基礎・杭の計画には、地盤を調べることが大前提。主な調査方法を押さえます。
| 調査 | 内容 |
|---|---|
| ボーリング | 地中を掘り、土を採取して地層構成を調べる。試料採取・各種試験の基本 |
| 標準貫入試験 | サンプラーをおもり(63.5kg)を76cm落下させて打ち込み、30cm貫入に要する打撃回数=N値を測る |
| スウェーデン式サウンディング | 小規模建物向けの簡易な地盤調査 |
| 平板載荷試験 | 地盤に直接荷重をかけ、支持力・沈下を調べる |
最重要はN値。
N値が大きいほど地盤は硬い(締まっている)。砂質地盤・粘土質地盤で同じN値でも意味合いは異なるが、まず「N値大=硬い=支持力大」と押さえる。
支持層を「N値が十分大きい層」と判断し、そこまで杭を届かせる——調査と杭の計画はつながっています。
地盤改良——「弱い地盤を強くする」
軟弱地盤をそのまま使えないとき、地盤自体を改良します。
| 工法 | 内容 |
|---|---|
| 表層改良 | 浅い軟弱層をセメント系で固める |
| 柱状改良(深層混合処理) | 地中にセメント系の柱を造って支える |
| 締固め(サンドコンパクションパイル等) | 砂を打ち込んで地盤を締め固める。液状化対策にもなる |
| サンドドレーン | 砂柱で水を抜き、圧密を促進して沈下を先に終わらせる |
「固める(表層・柱状)/締める(締固め)/水を抜く(ドレーン)」と目的で整理します。締固めは液状化対策、ドレーンは圧密促進、と現象(液状化=砂・圧密=粘土)に対応しているのがポイントです。
擁壁・地下と土圧の基礎知識
- 土圧には主働土圧・受働土圧・静止土圧があり、大小は 受働>静止>主働
- 擁壁の設計では、一般に壁が土から離れる方向にわずかに動いたときの主働土圧を用いる
- 地下水位が高いと、地下室の床には**浮力(揚圧力)**が作用する(建物が軽いと浮き上がりに注意)
○×で総チェック
Q1. 地盤の長期許容応力度は、岩盤より粘土質地盤の方が大きい。
→ ×。岩盤1,000kN/㎡に対し粘土質地盤は20kN/㎡。50倍の差がある。
Q2. 地盤の短期許容応力度は、長期の2倍とすることができる。
→ ○。
Q3. べた基礎は、独立基礎に比べて軟弱地盤に適している。
→ ○。底面積が大きく接地圧を小さくできる。
Q4. 同一建築物では、直接基礎と杭基礎を併用することが望ましい。
→ ×。異種基礎の併用は不同沈下の原因になるため原則避ける。
Q5. 負の摩擦力が生じると、杭先端部の軸力は減少する。
→ ×。地盤が杭を引きずり下ろすため、先端部の軸力(圧縮力)は増大する。
Q6. 負の摩擦力は、摩擦杭よりも支持杭で問題になりやすい。
→ ○。支持杭は先端が固定されているため、沈下する地盤との相対変位が大きくなる。
Q7. 液状化は、地下水位の高い緩い砂質地盤で生じやすい。
→ ○。「緩い砂+高い地下水位+強い揺れ」の3条件。
Q8. 粘土質地盤では、地震時に液状化が生じやすい。
→ ×。液状化は砂質地盤の現象。粘土の問題は長期の圧密沈下。
Q9. 標準貫入試験のN値が大きいほど、地盤は軟らかい。
→ ×。N値が大きいほど**硬い(締まった)**地盤。
Q10. サンドドレーン工法は、砂柱で水を抜いて圧密沈下を促進させる。
→ ○。圧密を早く終わらせる。締固め(液状化対策)とは目的が異なる。
Q11. 土圧の大小関係は、主働土圧>静止土圧>受働土圧である。
→ ×。受働>静止>主働。擁壁設計では主働土圧を用いる。
まとめ
- 地盤の許容応力度は岩盤1,000〜粘土20。「堅い」で跳ね上がる。短期は長期の2倍
- べた基礎は軟弱地盤向き。異種基礎の併用はNG(不同沈下)
- 杭は支持杭(先端)と摩擦杭(周面)
- 負の摩擦力:圧密沈下が杭を引きずり込む→先端軸力が増大、支持杭で顕著
- 液状化は緩い砂+高地下水位。粘土は液状化せず圧密沈下する
「砂は液状化、粘土は圧密沈下」——地盤の問題はこの対比を軸に整理すると、選択肢の正誤が見抜きやすくなります。
構造の関連記事:
📚 構造の全範囲を体系的に学ぶなら → 一級建築士【構造】完全ガイド