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宅建民法意思表示錯誤動機の錯誤権利関係2026年

宅建【民法】錯誤とは?取消しの要件・動機の錯誤・第三者への効力を図解で丁寧に解説

意思表示シリーズの3回目は「錯誤」です。

錯誤とは、勘違いをして行った意思表示のこと。前回までの心裡留保・通謀虚偽表示は「嘘だとわかって行った」意思表示でしたが、錯誤は本人が気づいていない点が大きく異なります。

また、2020年(令和2年)の改正民法で「無効」から「取消し」に変わった重要テーマです。


錯誤とは

錯誤とは、表意者の**「頭の中の考え(真意)」と「実際に表示した内容」が食い違っている**状態のことです(民法95条)。

【錯誤のイメージ】

頭の中:「100万円で売ろう」と思っていた
 ↓ 勘違い・ミス
表示した内容:「10万円で売ります」と言ってしまった

→ 本人は10万円が「本心ではない」と気づいていない
 (気づいていたら心裡留保になる)

錯誤の2つの種類

錯誤には大きく2つの種類があります。この区別が試験で頻繁に問われます。

① 表示の錯誤 表示行為そのものの勘違い ・書き間違い ・言い間違い ・計算ミス 例)「100万」と言うつもりが 「10万」と言ってしまった ② 動機の錯誤 契約を結んだ「前提・理由」の勘違い ・「値上がりすると思って」買った ・「駅近と聞いて」買った ・「再開発があると思って」買った 動機を相手方に表示していた 場合のみ → 取消し可
【2種類の整理】

① 表示の錯誤
  → 言い間違い・書き間違いなどの「表示上のミス」
  → 重要な錯誤であれば取消し可

② 動機の錯誤
  → 「〜だと思って」という契約の前提・理由の勘違い
  → 動機を相手方に「表示」していた場合のみ取消し可
  → 頭の中だけで思っていただけでは取消し不可

★ 動機の錯誤で一番ひっかかりやすいポイント:
 「相手に言っていた(表示していた)か」が分かれ目

取消しの要件

錯誤が取消しになるには、次の要件をすべて満たす必要があります。

【取消しの4つの要件】

① 錯誤の種類に応じた要件を満たすこと
  ・表示の錯誤 → そのまま適用
  ・動機の錯誤 → 動機が相手方に表示されていること

② 錯誤が「重要な」ものであること
  → 「その錯誤がなければ契約しなかった」と
    社会通念上言えるレベルのもの
  → 些細な間違いは対象外

③ 表意者に「重大な過失」がないこと
  → 少し注意すれば気づけたはずのド忘れ・ミスは
    「重大な過失」として取消し不可

④ ③の例外(重過失があっても取消せるケース)
  → 後述

重大な過失がある場合の扱い

表意者に 重大な過失あり 原則:取消し不可 (自分の不注意の責任) ただし例外として取消し可 例外① 相手方が錯誤を知っていた(悪意) または知ることができた(有過失) 例外② 相手方も同じ錯誤に陥っていた (共通錯誤・双方が勘違い) 🔑 「重大な過失あり → 取消し不可」が原則。例外①②を覚えておく。 (2020年改正で明文化されたポイント)
【重大な過失がある場合のまとめ】

原則:取消し不可(自分のミスは自分が責任を取る)

例外①:相手方が悪意または有過失
 → 相手も悪い(知っていた・気づけたのに黙っていた)
   だから被害者(表意者)を守る

例外②:相手方も同一の錯誤に陥っていた(共通錯誤)
 → お互い同じ勘違いをしていた
   だから一方だけを保護しないのは不公平

この2つの例外に当てはまれば重大な過失があっても取消し可

第三者が登場するパターン

「A が錯誤で B に売る → B が C に転売」というケースです。

【場面の設定】

A が「100万円で売ろう」と思っていたのに
書類に「10万円」と書いてしまい B に売った(錯誤)
 ↓
B が C にこの不動産を転売した
C は A-B 間の錯誤を知らず、落ち度もない(善意無過失)

→ A は C に「あの売買は取消す」と言えるか?
A(表意者) 錯誤で B に売った (取消し可能) 錯誤で売買 B(相手方) 取得後、C に転売 転売 C(第三者) 善意 かつ無過失 「取消す!」と C に主張しようとする A C が善意かつ無過失 → A は取消しを C に対抗できない (C の取引は有効。C は保護される)
【錯誤の第三者ルール】

第三者 C が善意かつ無過失
 → A は取消しを C に対抗できない(C は保護される)

第三者 C が悪意 または 有過失
 → A は取消しを C に対抗できる(C は保護されない)

★ 心裡留保・虚偽表示との大きな違い
 心裡留保・虚偽表示 → 善意(無過失は不要)で保護
 錯誤・詐欺        → 善意「かつ無過失」でないと保護されない

★ なぜ錯誤は「無過失」まで必要か?
 表意者(A)には一定の落ち度がある(勘違いした)
 だから第三者が「少し気をつければわかった(有過失)」
 程度では A より保護する必要がない。
 完全に知る手がかりがなかった(無過失)場合のみ保護。

2020年改正のポイント(試験で狙われる)

改正民法(2020年4月施行)で錯誤のルールが大きく変わりました。

改正前(2020年3月まで) 改正後(2020年4月から) 錯誤 → 無効 錯誤 → 取消し 「要素の錯誤」という言葉 「重要な錯誤」という言葉に変更 動機の錯誤の規定なし(判例で対応) 動機の錯誤が条文に明記された 🔑「無効→取消し」の変更は最重要!取消しは取消権者しか主張できない
【改正で変わった3つのポイント】

① 「無効」から「取消し」へ
 改正前:錯誤があれば誰でも無効を主張できた
 改正後:取消権者(表意者 or その承継人)のみが主張できる

② 「要素の錯誤」→「重要な錯誤」
 表現が変わっただけで意味はほぼ同じ

③ 動機の錯誤が条文に明記された
 改正前:判例で認められていたが条文にはなかった
 改正後:95条に明文化

★ 取消しになったことで
 → 取消権の時効(追認できるときから5年 or 行為から20年)が適用される
 → 追認すれば確定的に有効になる

条文の確認(民法95条)

【民法95条(改正後)】

第1項:
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、
その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に
照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示の錯誤)
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についての
  認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)

第2項:
前項第二号の規定による取消しは、その事情が
法律行為の基礎とされていることが表示されていた
ときに限り、することができる。
          ↑
     動機の錯誤は「表示」が必要

第3項:
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合、
原則として取消し不可
(例外:相手方の悪意・有過失、または共通錯誤)

第4項:
第一項の規定による意思表示の取消しは、
善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

試験問題パターン

Q1. A は「この土地は値上がりする」と思って買ったが
    実際は値下がりした。取消しできるか?

A1. 原則:取消し不可
    → 動機(「値上がりすると思って」)を
      相手方 B に表示していなければ取消し不可
    
    もし B に「値上がりするから買う」と伝えていた
    なら → 動機の錯誤として取消し可(重要性も必要)

Q2. A に重大な過失がある場合でも取消しできるケースは?

A2. ① 相手方 B が A の錯誤を知っていた(悪意)
       または知ることができた(有過失)
    ② A と B が同じ錯誤に陥っていた(共通錯誤)

Q3. 錯誤で A が取消し後、善意有過失の第三者 C は
    保護されるか?

A3. 保護されない
    → 錯誤は「善意かつ無過失」の第三者のみ保護
      有過失の C は保護対象外

意思表示シリーズ:第三者保護の条件まとめ

類型第三者が保護される条件
心裡留保善意(無過失は不要)
通謀虚偽表示善意(無過失は不要)
錯誤善意かつ無過失
詐欺善意かつ無過失(次回解説)
強迫保護なし(次回解説)

まとめ

錯誤まとめ 効力(改正後) 取消し(改正前は無効) 動機の錯誤の条件 動機を相手方に表示していること 重過失ありの場合 原則取消し不可(例外あり) 第三者への対抗 善意無過失の第三者には対抗不可 🔑 「善意無過失」が必要(心裡留保・虚偽表示より条件が厳しい)

宅建【民法】意思表示シリーズ: