宅建【民法】錯誤とは?取消しの要件・動機の錯誤・第三者への効力を図解で丁寧に解説
意思表示シリーズの3回目は「錯誤」です。
錯誤とは、勘違いをして行った意思表示のこと。前回までの心裡留保・通謀虚偽表示は「嘘だとわかって行った」意思表示でしたが、錯誤は本人が気づいていない点が大きく異なります。
また、2020年(令和2年)の改正民法で「無効」から「取消し」に変わった重要テーマです。
錯誤とは
錯誤とは、表意者の**「頭の中の考え(真意)」と「実際に表示した内容」が食い違っている**状態のことです(民法95条)。
【錯誤のイメージ】
頭の中:「100万円で売ろう」と思っていた
↓ 勘違い・ミス
表示した内容:「10万円で売ります」と言ってしまった
→ 本人は10万円が「本心ではない」と気づいていない
(気づいていたら心裡留保になる)
錯誤の2つの種類
錯誤には大きく2つの種類があります。この区別が試験で頻繁に問われます。
【2種類の整理】
① 表示の錯誤
→ 言い間違い・書き間違いなどの「表示上のミス」
→ 重要な錯誤であれば取消し可
② 動機の錯誤
→ 「〜だと思って」という契約の前提・理由の勘違い
→ 動機を相手方に「表示」していた場合のみ取消し可
→ 頭の中だけで思っていただけでは取消し不可
★ 動機の錯誤で一番ひっかかりやすいポイント:
「相手に言っていた(表示していた)か」が分かれ目
取消しの要件
錯誤が取消しになるには、次の要件をすべて満たす必要があります。
【取消しの4つの要件】
① 錯誤の種類に応じた要件を満たすこと
・表示の錯誤 → そのまま適用
・動機の錯誤 → 動機が相手方に表示されていること
② 錯誤が「重要な」ものであること
→ 「その錯誤がなければ契約しなかった」と
社会通念上言えるレベルのもの
→ 些細な間違いは対象外
③ 表意者に「重大な過失」がないこと
→ 少し注意すれば気づけたはずのド忘れ・ミスは
「重大な過失」として取消し不可
④ ③の例外(重過失があっても取消せるケース)
→ 後述
重大な過失がある場合の扱い
【重大な過失がある場合のまとめ】
原則:取消し不可(自分のミスは自分が責任を取る)
例外①:相手方が悪意または有過失
→ 相手も悪い(知っていた・気づけたのに黙っていた)
だから被害者(表意者)を守る
例外②:相手方も同一の錯誤に陥っていた(共通錯誤)
→ お互い同じ勘違いをしていた
だから一方だけを保護しないのは不公平
この2つの例外に当てはまれば重大な過失があっても取消し可
第三者が登場するパターン
「A が錯誤で B に売る → B が C に転売」というケースです。
【場面の設定】
A が「100万円で売ろう」と思っていたのに
書類に「10万円」と書いてしまい B に売った(錯誤)
↓
B が C にこの不動産を転売した
C は A-B 間の錯誤を知らず、落ち度もない(善意無過失)
→ A は C に「あの売買は取消す」と言えるか?
【錯誤の第三者ルール】
第三者 C が善意かつ無過失
→ A は取消しを C に対抗できない(C は保護される)
第三者 C が悪意 または 有過失
→ A は取消しを C に対抗できる(C は保護されない)
★ 心裡留保・虚偽表示との大きな違い
心裡留保・虚偽表示 → 善意(無過失は不要)で保護
錯誤・詐欺 → 善意「かつ無過失」でないと保護されない
★ なぜ錯誤は「無過失」まで必要か?
表意者(A)には一定の落ち度がある(勘違いした)
だから第三者が「少し気をつければわかった(有過失)」
程度では A より保護する必要がない。
完全に知る手がかりがなかった(無過失)場合のみ保護。
2020年改正のポイント(試験で狙われる)
改正民法(2020年4月施行)で錯誤のルールが大きく変わりました。
【改正で変わった3つのポイント】
① 「無効」から「取消し」へ
改正前:錯誤があれば誰でも無効を主張できた
改正後:取消権者(表意者 or その承継人)のみが主張できる
② 「要素の錯誤」→「重要な錯誤」
表現が変わっただけで意味はほぼ同じ
③ 動機の錯誤が条文に明記された
改正前:判例で認められていたが条文にはなかった
改正後:95条に明文化
★ 取消しになったことで
→ 取消権の時効(追認できるときから5年 or 行為から20年)が適用される
→ 追認すれば確定的に有効になる
条文の確認(民法95条)
【民法95条(改正後)】
第1項:
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、
その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に
照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示の錯誤)
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についての
認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)
第2項:
前項第二号の規定による取消しは、その事情が
法律行為の基礎とされていることが表示されていた
ときに限り、することができる。
↑
動機の錯誤は「表示」が必要
第3項:
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合、
原則として取消し不可
(例外:相手方の悪意・有過失、または共通錯誤)
第4項:
第一項の規定による意思表示の取消しは、
善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
試験問題パターン
Q1. A は「この土地は値上がりする」と思って買ったが
実際は値下がりした。取消しできるか?
A1. 原則:取消し不可
→ 動機(「値上がりすると思って」)を
相手方 B に表示していなければ取消し不可
もし B に「値上がりするから買う」と伝えていた
なら → 動機の錯誤として取消し可(重要性も必要)
Q2. A に重大な過失がある場合でも取消しできるケースは?
A2. ① 相手方 B が A の錯誤を知っていた(悪意)
または知ることができた(有過失)
② A と B が同じ錯誤に陥っていた(共通錯誤)
Q3. 錯誤で A が取消し後、善意有過失の第三者 C は
保護されるか?
A3. 保護されない
→ 錯誤は「善意かつ無過失」の第三者のみ保護
有過失の C は保護対象外
意思表示シリーズ:第三者保護の条件まとめ
| 類型 | 第三者が保護される条件 |
|---|---|
| 心裡留保 | 善意(無過失は不要) |
| 通謀虚偽表示 | 善意(無過失は不要) |
| 錯誤 | 善意かつ無過失 |
| 詐欺 | 善意かつ無過失(次回解説) |
| 強迫 | 保護なし(次回解説) |
まとめ
宅建【民法】意思表示シリーズ: