一級建築士【製図試験】独学・資格学校・通信講座の比較|ストレートか翌年以降か戦略も解説
学科試験に合格したとき、次に立ちはだかるのが製図試験です。
「製図って何をするの?」「資格学校に行かないと受からないの?」「今年受けるべき?来年に回すべき?」
学科とは性質が大きく異なる製図試験について、勉強方法の選び方から受験戦略まで整理します。
まず製図試験の特徴を把握する
製図試験は学科試験とは根本的に異なります。
【製図試験の基本情報】
試験時間 ── 6時間30分(通しのため学科よりさらに体力必要)
出題形式 ── 指定の建物を設計し、図面+計画説明を手描きで完成させる
課題発表 ── 毎年7月下旬 学科試験数日前に発表(例:集合住宅、図書館、福祉施設など)
試験日 ── 毎年10月第2日曜日
合格率 ── 例年35〜40%前後(学科合格者の中からさらに絞られる)
学科が「知識の正確さ」を問う試験なのに対し、製図は「設計の実力と図面を完成させる力」を問います。
製図試験の合格率推移
| 年度 | 製図合格率 |
|---|---|
| 令和2年 | 34.9% |
| 令和3年 | 40.9% |
| 令和4年 | 33.0% |
| 令和5年 | 35.7% |
| 令和6年 | 36.3% |
一見、学科よりも合格率が高く見えますが、学科を通過した人の中での数字です。
一級建築士試験全体の最終合格率は10%前後であることを念頭に置いてください。
製図試験ならではの「失格」リスク
製図試験には、採点以前に失格になる条件があります。
【主な失格・大きな減点要因】
✗ 未完成(図面が描き切れていない)
✗ 重大な法令違反(採光・避難・高さ制限など)
✗ 要求室の欠落(課題で指定された部屋がない)
✗ 構造的に成立しない計画
✗ 記述の欠落
「とにかく完成させること」が最低条件です。
今年は、法令集の持ち込みがありになったことにより更に厳しくみられる可能性もあります。
製図試験 受験資格の有効期限と受験回数
製図試験を受けられる期間は無期限ではありません。
【製図試験の受験ルール(現行制度)】
学科試験合格 → その年度を含む5年以内に製図試験に合格する必要がある
└─ 5年間で最大3回受験可能
受けにいかなれば、申込をしていたとしてもカウントされません
⚠️ 「年を飛ばす」は戦略的に考える必要があります。
3つの勉強方法を比較する
製図試験における3方式の全体比較
| 独学 | 資格学校 | 通信講座 | |
|---|---|---|---|
| 費用目安 | 3〜5万円 | 30〜70万円 | 10〜25万円 |
| 添削 | ✗ なし | ◎ 毎週対面 | ○ 郵送・データ |
| エスキス指導 | ✗ なし | ◎ 徹底的 | △ 限定的 |
| 課題の豊富さ | △ 自力で集める | ◎ 毎年作成 | ○ 複数課題あり |
| 本番環境の模擬 | △ | ◎ | △ |
| 難易度感 | 非常に高い | 取り組みやすい | 中程度 |
① 独学
製図試験の独学は「ほぼ不可能」に近い
はっきり書きます。
製図試験の独学は、学科試験の独学とは比べものにならないほど難しいです。
理由はシンプルで、製図には採点できる他者(添削者)が必要だからです。
自分で描いた図面が「合格レベルか」「どこが問題か」を客観的に判断するのは、かなりの経験がないと不可能です。
初学者が独学で合格レベルに到達するのは、現実的ではありません。
それでも独学を選ぶ場合の工夫
① SNS・オンラインコミュニティで添削を求める
(Xのタグ活用、建築士受験生コミュニティ)
② 製図試験の合格者に個人的に添削を依頼する
③ 市販テキストと過去の合格図面を徹底的に模写する
④ 建築系YouTubeで描き方を学ぶ
それでも難しい。独学で製図を突破できる人は、かなり例外的なケースと考えてください。
独学が現実的な人
✅ 実務で設計を日常的にしており、図面力が高い
✅ 過去に製図試験を受験した経験があり感覚がある
✅ 添削してくれる合格者の知人がいる
✅ 本当に費用をかけられない事情がある
② 資格学校(総合資格学院・日建学院・TACなど)
製図試験における主な費用目安
| 学校 | 製図のみコース目安 | 学科+製図セット |
|---|---|---|
| 総合資格学院 | 40〜70万円 | 100万円超 |
| 日建学院 | 35〜60万円 | 90万円超 |
| TAC | 20〜40万円 | 50〜80万円 |
資格学校が製図試験で強い理由
① 毎週の課題提出と添削サイクル
資格学校の製図カリキュラムの核心は「週1課題→講師添削→解説→次の課題」のサイクルです。
自分の図面の癖・弱点を毎週フィードバックされることで、確実に力がつきます。
② エスキス(平面計画)の徹底訓練
製図試験で多くの受験生が苦労するのが「エスキス」、つまり図面を描く前の平面計画です。
- 与えられた敷地に何をどう配置するか
- 動線は成立しているか
- 法規をクリアできているか
これを1〜2時間で決める訓練を、資格学校は繰り返し行います。
③ 課題テーマへの的中対策
7月に課題テーマが発表されてから試験まで約3ヶ月。資格学校はその期間に課題テーマに特化した演習を集中的に行います。
「今年の課題でよく出るパターン」を大量に練習できるのは資格学校ならではです。
資格学校のデメリット
✗ 費用が高い(製図だけで数十万円)
✗ 週1〜2回の通学が必須
✗ 仕事との両立が体力的にきつい
③ 通信講座
製図試験の主な通信講座
| サービス | 費用目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 総合資格・日建の通信部 | 20〜40万円 | 大手の通信版 |
| 一級建築士.com 等 | 5〜15万円 | 個人塾・オンライン添削型 |
通信講座で製図を学ぶ現実
メリット
- 場所・時間を選ばず学習できる
- 資格学校より費用を抑えられる
- データ送信での添削が可能なサービスが増えた
デメリット
- 対面添削ほど細かいフィードバックが難しい
- 質問・相談のリアルタイム性が低い
- 仲間と一緒に図面を描く環境がない(孤独)
- エスキスの指導が手薄になりがち
結論として:通信講座は「資格学校に通えない事情がある人の次善策」という位置づけです。独学よりは格段にマシですが、資格学校の対面添削には及びません。
受験戦略:ストレートか、翌年以降か
学科に合格した人が次に考えるのは「今年の製図を受けるか、翌年以降に回すか」という戦略です。
ストレート受験(学科合格年に製図も受ける)
スケジュールイメージ:
7月第4日曜 ── 学科試験
↓ 2週間後
8月上旬 ── 合格発表、課題テーマ確認
↓
10月第2日曜 ── 製図試験
【準備期間:約2〜3ヶ月】
メリット
- 学科の知識が新鮮なまま製図に入れる(法規・構造の理解が活きる)
- 最短で一級建築士を取得できる
- 試験の緊張感が続いているうちに突入できる
**デメリット
- 準備期間が約2〜3ヶ月と短い
- 学科の疲れが残っている状態でスタート
- 合格点ギリギリ判定の場合身が入らない ⇦ 私はこれだったためストレート受験していません。
ストレートが向いている人
✅ 設計の実務経験が豊富で図面力がある
✅ とにかく早く取得したい、受験勉強を終わらせたい
✅ 精神的・体力的に余裕がある
✅ 学科で余裕を持って点数を取れた
翌年以降に製図を受ける(製図専念型)
スケジュールイメージ(翌年受験の場合):
学科合格年10月 ── 製図試験をあえてパス
↓
翌年2〜6月 ── じっくり製図対策を開始
↓
翌年7月上旬 ── 課題テーマ発表
↓
翌年10月 ── 製図試験
【準備期間:半年〜1年】
メリット
- 製図に集中できる準備期間が長い
- 学科の疲弊から回復した状態で取り組める
- 課題テーマに特化した対策を十分に行える(それ以前で製図の練習を積めるため)
- 仕事が繁忙期でも学科免除で余裕を持てる
デメリット
- 1年間のタイムロス(その分年収や機会損失が生じる可能性)
- 学科知識の鮮度が落ちる(特に法規・構造)
- モチベーション維持が難しい
翌年以降が向いている人
✅ 学科合格年が仕事の超繁忙期で製図準備が絶対に無理
✅ 製図試験の難しさをよく理解しており、しっかり準備したい
✅ 学科の点数がギリギリで集中できない
✅ 図面を描く経験がなく、基礎から練習が必要
まとめ
【製図試験の勉強方法まとめ】
独学 ─── 現実的には非常に厳しい(添削なしでは限界がある)
資格学校 ─── 費用はかかるが、製図は最も信頼できる選択
通信講座 ─── 通えない事情がある人の有力な次善策
【受験タイミングまとめ】
ストレート ─── 最短合格、準備期間は短いが勢いで突破
翌年以降 ─── 万全の準備、ただし1回分の受験を消費する
製図試験は「やみくもに頑張る」より「戦略を持って取り組む」ことが重要です。
製図初学者は、ストレート合格を狙うには相当な努力が必要なため
仕事を調整でき、時間をしっかり確保できる方または、二級建築士試験などである程度製図経験がある方でないと厳しいです。
私の個人的な意見でいうと、時間を取れない・学科点数が十分に取れておらず不安なひとは次年度に回すのをお勧めします。
ストレート合格は最高ですが、最善とは限りません。
自分の仕事の状況・図面力・残りの受験回数を冷静に見て、最適なプランを選んでください。
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