一級建築士【構造】座屈の公式と解き方|有効座屈長さ・細長比を図解で完全解説
一級建築士の構造問題で、座屈は毎年必ずといってよいほど出題される超頻出テーマです。
「オイラーの公式は知っているけど、有効座屈長さの選び方で迷う」「細長比の計算で符号を間違える」——そういった受験生が多い分野でもあります。
この記事では、境界条件ごとの有効座屈長さを図解で整理し、試験本番で即答できるレベルに仕上げます。
1. 座屈とは
座屈(buckling) とは、圧縮力が限界値(座屈荷重 Pcr)を超えた瞬間に、柱が急激に横方向にたわむ不安定現象です。
梁の曲げ破壊と混同しないことが重要です。
| 破壊モード | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 曲げ破壊 | 曲げ応力が強度を超える | 材料の強度依存 |
| 座屈 | 圧縮力が Pcr を超える | 剛性(EI)と長さ依存 |
座屈は材料が降伏する前に起きることもあり、長くて細い柱ほど危険です。短くて太い柱(短柱)は材料強度で破壊しますが、長くて細い柱(長柱)は座屈で破壊します。
2. オイラーの座屈荷重
座屈荷重を求める基本公式がオイラーの座屈公式です。
Pcr = π²EI / lk²
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Pcr | 座屈荷重(臨界荷重) | N, kN |
| π² | 約 9.87(定数) | — |
| E | ヤング係数(弾性係数) | N/mm² |
| I | 断面二次モーメント | mm⁴ |
| lk | 有効座屈長さ(座屈長さ) | mm |
この公式から読み取れる重要な関係:
Pcr ∝ EI / lk²
- EI が大きい(剛性が高い) → 座屈しにくい
- lk が小さい(拘束が強い) → 座屈しにくい
- lk が2倍になると Pcr は 1/4 に激減
- lk が 1/2 になると Pcr は 4倍になる
「lk の2乗に反比例する」——この感覚が試験問題を解くカギです。
3. 境界条件と有効座屈長さ lk(最重要)
有効座屈長さ lk は、実際の柱の長さ L に境界条件ごとの係数をかけて求めます。4パターンを丸暗記しましょう。
| 境界条件 | lk の値 | Pcr の大小 |
|---|---|---|
| 両端ピン | L | 基準(1倍) |
| 両端固定 | L/2 | 4倍(最も安全) |
| 一端固定・他端自由 | 2L | 1/4倍(最も危険) |
| 一端固定・他端ピン | 0.7L | 約2倍 |
境界条件の見分け方
- ピン → 三角形の支持(回転自由、移動拘束)
- 固定 → 壁に埋め込まれた支持(回転も移動も拘束)
- 自由端 → 何もない(回転も移動も自由)
試験のコツ: 建物の柱では、基礎が固定ならば基部は「固定端」です。建物高さ方向の拘束(床・梁による)を確認して lk を決定します。
4. 細長比 λ(ラムダ)
細長比 λ は、柱の「細長さ」を無次元で表す指標です。
λ = lk / i
i = √(I / A) ← 断面二次半径(断面二次モーメントを断面積で割った値の平方根)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| λ | 細長比(スレンダーネス比) |
| lk | 有効座屈長さ |
| i | 断面二次半径 |
| I | 断面二次モーメント |
| A | 断面積 |
細長比と破壊モードの関係
λ が小さい(短くて太い柱) → 材料強度で破壊(圧縮降伏)
λ が大きい(長くて細い柱) → 座屈で破壊
一般的な目安:
| 細長比 λ | 分類 | 主な破壊モード |
|---|---|---|
| λ < 50〜60 | 短柱 | 材料降伏 |
| λ > 100〜120 | 長柱 | 弾性座屈 |
| その中間 | 中間柱 | 非弾性座屈 |
計算例
H-200×200×8×12(H形鋼)の断面を仮定:
I = 4,720 cm⁴(強軸)、A = 63.53 cm²
i = √(4720 / 63.53) = √74.3 ≈ 8.62 cm
lk = 500 cm(両端ピン、L = 5 m)とすると
λ = 500 / 8.62 ≈ 58
この場合は中間柱に近い領域です。細長比が大きくなるほど座屈荷重は急激に低下します。
5. 座屈荷重の比較問題(試験頻出)
試験では「境界条件が変わったとき Pcr はどう変わるか」という比較問題が頻出です。
核心は lk の2乗に反比例するという関係だけです。
Pcr = π²EI / lk²
lk が 1/2 になる → lk² は 1/4 → Pcr は 4倍
lk が 2倍になる → lk² は 4倍 → Pcr は 1/4
代表的なパターン
| 変化 | lk の変化 | Pcr の変化 |
|---|---|---|
| 両端ピン → 両端固定 | L → L/2(1/2倍) | 4倍 |
| 両端ピン → 一端固定・他端自由 | L → 2L(2倍) | 1/4倍 |
| 両端固定 → 一端固定・他端自由 | L/2 → 2L(4倍) | 1/16倍 |
解き方の手順(試験本番)
- 各ケースの境界条件から lk を読み取る
Pcr ∝ 1/lk²で比を計算する- 数値で答える場合は
π²EI/lk²に代入する
例題: 同じ断面・同じ長さ L の柱を両端ピンから両端固定に変えた。座屈荷重は何倍になるか?
両端ピン:lk1 = L
両端固定:lk2 = L/2
Pcr2 / Pcr1 = lk1² / lk2² = L² / (L/2)² = L² / (L²/4) = 4
→ 4倍になる
6. 梁の横座屈
柱の座屈だけでなく、梁にも座屈が起きます。 これを横座屈(Lateral Torsional Buckling) といいます。
横座屈の発生条件
- スパンが長く、断面が細長い梁(幅に対して高さが大きい断面)
- 圧縮フランジが横方向に拘束されていない場合
- フランジ幅が小さいH形鋼や I 形鋼
試験での押さえ方
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 横座屈(Lateral Torsional Buckling) |
| 発生部位 | 梁(特に圧縮フランジ) |
| 防止策 | 横補剛(lateral bracing)の設置、フランジ幅を大きくする |
| 細長梁ほど危険 | スパン/フランジ幅 が大きいほど横座屈しやすい |
7. 試験頻出パターン
パターン①「有効座屈長さを求めよ」
→ 境界条件を見て lk を決める
両端ピン → lk = L
両端固定 → lk = L/2
一端固定・他端自由 → lk = 2L
一端固定・他端ピン → lk ≈ 0.7L
パターン②「座屈荷重の比を求めよ」
→ Pcr ∝ 1/lk² を使う
条件が変わったとき:Pcr の比 = (lk_before)² / (lk_after)²
パターン③「細長比を求めよ」
→ λ = lk / i、i = √(I/A)
① lk を境界条件から求める
② i = √(I/A) を計算する
③ λ = lk / i
パターン④「どちらの柱が座屈しやすいか」
→ lk が大きい(または λ が大きい)ほど座屈しやすい
座屈荷重が小さい = 座屈しやすい = lk が大きい
8. まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 座屈荷重の公式 | Pcr = π²EI / lk² |
| lk の決め方 | 境界条件(両端ピン=L、両端固定=L/2、片持ち=2L、固定-ピン=0.7L) |
| Pcr の変化 | lk が半分 → Pcr は4倍、lk が2倍 → Pcr は1/4 |
| 細長比 | λ = lk/i、i = √(I/A) |
| 梁の横座屈 | 細長い梁で面外ねじれ変形、圧縮フランジの横拘束が有効 |
暗記の優先順位
- lk の4パターン(両端ピン・両端固定・片持ち・固定-ピン)
- Pcr は lk の2乗に反比例
- λ = lk/i の計算手順
この3つを押さえれば、座屈の出題パターンのほとんどに対応できます。