一級建築士【構造】断面二次モーメントの求め方|公式・平行軸定理・組み合わせ断面を図解
構造の計算問題で「断面二次モーメント」は避けて通れません。公式を丸暗記するだけでは応用がきかず、組み合わせ断面で詰まる受験生が多い単元です。この記事では定義から平行軸定理・T形断面の計算手順までを図解で整理します。
1. 断面二次モーメントとは
梁に曲げモーメントが作用すると、断面に応力が生じます。このとき断面が曲げに対してどれだけ抵抗できるかを表す断面の性質が**断面二次モーメント(I)**です。
定義式
I = ∫ y² dA
y:中立軸(断面重心を通る軸)からの距離dA:微小面積要素
積分の意味は「中立軸から遠い位置にある面積ほど、重みを付けて足し合わせる」です。つまり同じ断面積でも、中立軸から遠い位置に材料が集中しているほど I は大きくなります。
曲げ剛性 EI との関係
梁のたわみを支配する方程式は以下の通りです。
EI × (d²y/dx²) = M(x)
E:ヤング係数(材料の硬さ)I:断面二次モーメント(断面形状の寄与)M:曲げモーメント
**I が大きいほど曲げ剛性 EI が高く、たわみが小さくなります。**試験では「I を2倍にすると最大たわみはどう変わるか」といった問いに直結します。
2. 基本断面の公式
矩形断面(長方形)
幅 b、高さ h の矩形断面について:
中立軸まわり:I = bh³ / 12
上端(下端)まわり:I = bh³ / 3
上端まわりの公式は「中立軸まわり + A·d²(平行軸定理)」で導けます。
I_上端 = bh³/12 + (bh)×(h/2)² = bh³/12 + bh³/4 = bh³/3
円断面
直径 d の円断面:
I = πd⁴ / 64
直径を2倍にすると I は 2⁴ = 16倍になります。
図解:矩形断面と中立軸
3. 断面係数 Z
定義
Z = I / y_max
y_max:中立軸から断面端(最も遠い点)までの距離
断面係数は最大曲げ応力を求めるための指標です。
最大曲げ応力
σ_max = M / Z = M × y_max / I
M(曲げモーメント)が同じ場合、Z が大きいほど最大応力が小さくなり、材料を効率的に使えます。
矩形断面の断面係数
y_max = h/2 なので
Z = (bh³/12) / (h/2) = bh² / 6
具体例(b = 100 mm、h = 200 mm)
I = 100 × 200³ / 12 = 100 × 8,000,000 / 12
= 66,666,667 mm⁴ ≈ 6.67 × 10⁷ mm⁴
Z = 100 × 200² / 6 = 100 × 40,000 / 6
= 666,667 mm³ ≈ 6.67 × 10⁵ mm³
4. 平行軸定理
定理の式
I = I₀ + A · d²
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| I₀ | 重心(図心)まわりの断面二次モーメント |
| A | 断面積 |
| d | 重心から、新しい軸までの距離 |
**平行軸定理は「重心軸まわりの I に、面積×距離の二乗を加える」だけです。**重心軸まわりの I が最小値になります。
図解:平行軸定理
応用のポイント
- 平行軸定理は重心軸から別の軸へ移すときにしか使えません
- 重心軸まわりの I₀ が最小値であり、そこから離れるほど I は大きくなります
- 組み合わせ断面の計算で必須の道具です
5. 組み合わせ断面(T形・I形)の計算手順
T形断面や I形断面は、矩形を組み合わせて平行軸定理を適用します。
手順
① 各部分(フランジ・ウェブ)の面積と重心位置を求める
部分 k の面積 :Aₖ
部分 k の重心位置:yₖ(基準点からの距離)
② 合成重心(全断面の中立軸)の位置を求める
ȳ = (A₁·y₁ + A₂·y₂ + …) / (A₁ + A₂ + …)
③ 平行軸定理で各部分の I を計算
Iₖ = I₀ₖ + Aₖ · dₖ²
I₀ₖ:部分 k 自身の重心まわりの I
dₖ :部分 k の重心から全体の中立軸までの距離
④ 合計する
I_total = I₁ + I₂ + …
図解と計算例:T形断面
以下のT形断面で具体的に計算します。
- フランジ:幅 200 mm、高さ 40 mm
- ウェブ:幅 40 mm、高さ 160 mm
計算まとめ(T形断面)
【① 面積と重心位置(上端を基準 y=0)】
A₁ = 200 × 40 = 8,000 mm², y₁ = 20 mm
A₂ = 40 × 160 = 6,400 mm², y₂ = 40 + 80 = 120 mm
【② 合成重心(中立軸の位置)】
ȳ = (8000 × 20 + 6400 × 120) / (8000 + 6400)
= 928,000 / 14,400
≈ 64.4 mm(上端から)
【③ 各部分の d を求める】
d₁ = 64.4 − 20 = 44.4 mm(フランジ重心→中立軸)
d₂ = 120 − 64.4 = 55.6 mm(ウェブ重心→中立軸)
【④ 平行軸定理で I を計算】
I₁ = (200×40³/12) + 8000×44.4²
= 1,067,000 + 15,762,000
≈ 1.68 × 10⁷ mm⁴
I₂ = (40×160³/12) + 6400×55.6²
= 13,653,000 + 19,783,000
≈ 3.34 × 10⁷ mm⁴
【⑤ 合計】
I_total = 1.68×10⁷ + 3.34×10⁷ ≈ 5.02 × 10⁷ mm⁴
6. 試験頻出パターン
パターン① 寸法を変えたときの I の変化
矩形断面 I = bh³/12 をベースに考えます。
| 変化 | I の変化 | 理由 |
|---|---|---|
| h を 2倍にする | 8倍(2³) | h³ に比例 |
| b を 2倍にする | 2倍 | b に比例 |
| h と b を入れ替える(横置き) | 大幅に減少 | 下記参照 |
パターン② 縦置き vs 横置き
縦置き(h > b):I_縦 = bh³/12
横置き(h と b 入れ替え):I_横 = hb³/12
比:I_縦 / I_横 = (bh³/12) / (hb³/12) = h²/b²
例:b = 100 mm、h = 300 mm の場合
I_縦 = 100 × 300³ / 12 = 225,000,000 mm⁴
I_横 = 300 × 100³ / 12 = 25,000,000 mm⁴
I_縦 / I_横 = 225,000,000 / 25,000,000 = 9倍
梁は縦長に使うのが断面効率の観点から合理的です。
パターン③ 中空断面(外形 − 内部)
I_中空 = I_外 − I_内
外形:B × H の矩形、内部くり抜き:b × h の矩形の場合
I = BH³/12 − bh³/12 = (BH³ − bh³) / 12
ポイント:それぞれの中立軸が一致しているときのみ引き算できます(中立軸が異なる場合は平行軸定理が必要)。
パターン④ 断面が大きいほど良いとは限らない
試験では「材積(断面積)が同じでも断面形状で I が変わる」という問いが出ます。同じ断面積でも I 形断面や箱形断面は重心から遠い位置に材料を配置できるため、矩形断面より I が大きくなります。
7. まとめ:公式一覧
| 項目 | 公式 | 備考 |
|---|---|---|
| 断面二次モーメントの定義 | I = ∫y² dA | — |
| 矩形(中立軸まわり) | I = bh³/12 | 最頻出 |
| 矩形(上端まわり) | I = bh³/3 | 平行軸定理で導出可 |
| 円断面 | I = πd⁴/64 | — |
| 断面係数 | Z = I / y_max | — |
| 最大曲げ応力 | σ_max = M / Z | — |
| 矩形の断面係数 | Z = bh²/6 | — |
| 平行軸定理 | I = I₀ + A·d² | 組み合わせ断面で必須 |
| 中空断面(同一中立軸) | I = (BH³ − bh³)/12 | — |
| h を2倍にすると I は | 8倍 | h³ に比例 |
| b を2倍にすると I は | 2倍 | b に比例 |