建築学科の就職先一覧|設計・施工以外も視野に入れると選択肢が一気に広がる
「建築学科を出たら設計事務所かゼネコンだよね?」
そう思っている建築学生は多いですが、実はこれは選択肢のほんの一部にすぎません。
建築の知識・スキルが活かせる就職先は驚くほど多岐にわたります。視野を広げないまま就活を始めると、自分に合ったキャリアを見逃す可能性があります。
この記事では、建築学科卒が進める就職先を業種別に網羅的に整理します。年収・採用情報も合わせて掲載しますので参考にしてください。
データについての注記
本記事の年収・採用数は有価証券報告書・OpenWork・就職四季報などの公開情報をもとにした目安です。年収は採用年度・職種・個人評価・残業代により変動します。最新・正確なデータは必ず各社採用ページ・OpenWork・就職四季報でご確認ください。
まず「建築系就職先」を大きく分類する
① 設計系
組織設計事務所
日建設計・日本設計・梓設計・久米設計など。大規模プロジェクトを手がける設計専業の大手事務所です。
【年収の推移目安(日建設計・主要組織設計)】
入社1年目(22〜24歳) ── 420〜450万円(月給22〜25万円)
入社3年目(24〜26歳) ── 470〜530万円
入社5年目(26〜28歳) ── 530〜610万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 590〜680万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)全社平均 ── 800〜900万円台(管理職含む・OpenWork口コミベース)
※ 修士卒は初任給が学部卒より月1〜2万円高いのが一般的
【採用人数目安(年間)】
日建設計 ── 30〜60名(建築・設備・デジタル職種合計)
日本設計 ── 10〜20名
梓設計・久米設計 ── 各5〜15名程度
採用傾向: 旧帝大・早慶・東工大の建築系が中心。修士卒が7〜8割を占める。ポートフォリオの質が選考に直結します。
アトリエ系設計事務所
著名建築家が主宰する小規模事務所。コンペ参加や独創的な設計が特徴です。
【年収の推移目安(アトリエ系)】
入社1年目(22〜24歳) ── 200〜280万円(最低賃金ギリギリのケースも)
入社3年目(24〜26歳) ── 240〜320万円
入社5年目(26〜28歳) ── 270〜370万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 300〜430万円 ← 20代末〜30歳前後
※ 著名アトリエ(隈研吾・SANAA・伊東豊雄など)でも
業界平均を大幅に下回るケースが多い
実態として: 残業は月80〜150時間超も珍しくなく、3〜5年で転職・独立する人が多数。「設計修行の場」として位置づける人が選ぶキャリアです。
ゼネコン設計部
大手ゼネコン(鹿島・大林・竹中・清水・大成)の社内設計部門です。
【年収の推移目安(スーパーゼネコン設計職)】
入社1年目(22〜24歳) ── 440〜480万円
入社3年目(24〜26歳) ── 490〜550万円
入社5年目(26〜28歳) ── 560〜640万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 640〜730万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)全社平均 ── 950〜1,100万円(有価証券報告書ベース・管理職含む)
※ 竹中工務店は非上場のため推計値
【採用人数(年間・5社計)】
設計職 ── 各社30〜40名程度(総合職全体の1〜2割)
竹中工務店設計部 は「建築家を目指す」学生に特に人気が高く、採用倍率は100倍超とも言われます。
② 施工管理系
「設計ではない」と敬遠する学生も多いですが、現場を知っている人材は業界全体で希少かつ重宝されます。
【年収の推移目安(スーパーゼネコン施工管理職)】
入社1年目(22〜24歳) ── 440〜480万円
入社3年目(24〜26歳) ── 500〜570万円(現場手当・資格手当が加算され始める)
入社5年目(26〜28歳) ── 580〜660万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 660〜750万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)全社平均 ── 950〜1,100万円(有価証券報告書ベース・管理職含む)
現場手当・単身赴任手当・資格手当が別途加算されるため
実収入はさらに上振れるケースが多い。
【採用人数目安(各社・年間)】
鹿島・大林・竹中・清水・大成 ── 各社80〜120名(施工管理系)
【働き方の実態】
2024年4月から建設業にも時間外労働上限規制が適用(月45時間・
特別条項でも月100時間未満)。各社が週休2日推進・ICT化を加速中。
繁忙期は月60〜100時間程度の残業が残るケースも(OpenWork口コミより)。
現場手当・単身赴任手当が別途加算されるため実収入はさらに上振れ。
③ ハウスメーカー系
積水ハウス・住友林業・ダイワハウス・一条工務店など。採用規模が大きく間口の広い選択肢です。
設計職 vs 営業職
【設計職 年収の推移目安】
入社1年目(22〜24歳) ── 380〜430万円
入社3年目(24〜26歳) ── 430〜490万円
入社5年目(26〜28歳) ── 480〜560万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 540〜630万円 ← 20代末〜30歳前後
業務:注文住宅・分譲住宅の間取り設計、お客様対応
特徴:規格化された商品ベースで効率よく設計できる
【営業職 年収の推移目安(インセンティブ込み)】
入社1年目(22〜24歳) ── 350〜420万円(固定給主体・まず慣れる時期)
入社3年目(24〜26歳) ── 480〜620万円(契約実績が積み上がり跳ねる)
入社5年目(26〜28歳) ── 580〜800万円 ← 個人差が大きく出る
入社8年目(29〜31歳) ── 650〜950万円以上(トップ営業は1,000万円超も)
建築学科の強み:
✅ 構造・断熱・耐震の説明が技術的にできる
✅ 図面を読めるため要望を設計に正確に反映できる
✅ 競合他社との差別化説明ができる
④ 不動産・デベロッパー系
大手デベロッパー
三菱地所・三井不動産・住友不動産・東急不動産・野村不動産など。高収入ですが採用倍率は業界最高水準です。
【デベロッパーで建築学科卒が活きる場面】
設計監理発注 ── 図面が読め、設計事務所・ゼネコンと対等に話せる
法規確認 ── 建築基準法・都市計画法の理解がある
コスト管理 ── 建物のコスト感覚があり、工事費の妥当性を判断できる
DD(建物調査)── デューデリジェンスで構造・劣化度を自分で判断できる
⑤ 建材・設備メーカー系
見落とされがちですが、建材・設備メーカーは建築学科卒を積極的に採用しており、働き方も安定しています。
【年収の推移目安(大手建材・設備メーカー)】
入社1年目(22〜24歳) ── 380〜430万円
入社3年目(24〜26歳) ── 430〜510万円
入社5年目(26〜28歳) ── 490〜590万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 560〜680万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)全社平均年収
LIXIL ── 約730万円(有報2024年3月期)
TOTO ── 約690万円(有報2024年3月期)
YKK AP ── 約600〜650万円(非上場・推計)
パナソニック ── 約800万円(パナソニックHD全体)
三菱電機 ── 約860万円(有報2024年)
ダイキン工業 ── 約850万円(有報2024年)
※ 全社平均は管理職含む。若手のうちは上記推移目安が実態に近い
【建築学科卒が活きる職種】
技術営業 ── 設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカーへの製品提案
建築的な知識がそのまま商談で活きる
製品開発 ── 建築基準法・省エネ基準への適合設計
LIXIL・TOTO・YKK APは建築系を積極採用
ショールーム ── 建築士向けセミナー講師・空間提案
【メーカー系のメリット】
✅ 土日休み(製造業カレンダー)
✅ 大手は福利厚生が充実
✅ 転勤はあるが現場常駐なし
✅ 一級建築士資格が技術営業の強みになる
⑥ 公務員・行政系
建築職の地方公務員は建築学科卒を専門職として採用しており、倍率も民間大手と比べて現実的です。
【地方公務員(建築職)年収の推移目安】
入社1年目(22〜24歳) ── 330〜380万円(月給22〜23万円)
入社3年目(24〜26歳) ── 370〜430万円
入社5年目(26〜28歳) ── 410〜490万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 460〜550万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)係長クラス ── 550〜650万円
(参考)課長・参事クラス ── 700〜800万円
※ 東京都・大阪市・横浜市など政令指定都市は高め
【採用試験の倍率目安】
都道府県・政令市(建築職) ── 3〜10倍
市区町村(建築職) ── 2〜5倍
国家公務員 一般職(建築) ── 3〜8倍
国家公務員 総合職(建築) ── 5〜15倍
【主な業務】
・確認申請の審査・建築指導
・公共建築物(学校・庁舎・公営住宅)の設計・維持管理
・都市計画・用途地域の管理
・国庁舎・研究所などの設計監理(官庁営繕)
【一級建築士取得後の扱い】
資格手当:月2,000〜10,000円程度(自治体による)
昇進・業務の幅に間接的に効くが、民間ほどの年収増加はない
⑦ IT・建設テック系
建設業界はデジタル化が急加速しています。「建築知識 × IT」の人材は今最も需要が高い分野のひとつです。
【年収の推移目安(建設テック・BIM系)】
入社1年目(22〜24歳) ── 380〜480万円
入社3年目(24〜26歳) ── 460〜600万円
入社5年目(26〜28歳) ── 540〜750万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 620〜900万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)主要企業の年収水準
Autodesk Japan(外資) ── 750〜1,000万円(全社平均目安)
ダッソー・システムズ(外資) ── 800〜1,100万円
グラフィソフト(ArchiCAD) ── 600〜800万円
福井コンピュータアーキテクト ── 500〜650万円
ゼネコン系IT子会社 ── 550〜700万円
国内建設テックスタートアップ ── 450〜700万円 + ストックオプション
※ 外資系は実力次第で上振れしやすい。スタートアップはSOが魅力
【建築学科卒がIT系で活きる理由】
・「現場がわかる人間がプロダクトを作る・売る」ことへのニーズが高い
・BIM・3Dモデリング・CADスキルがそのまま活かせる
・Revit・ArchiCADの操作経験者はBIM企業で即戦力扱い
【キャリアパス例】
ルートA:ゼネコン・設計事務所で実務経験 → 建設テック企業へ転職
ルートB:新卒でBIM・CAD企業に入社 → 建築事務所へのコンサルタント
ルートC:不動産テック企業でプロダクト開発(建築知識がユーザー理解に直結)
⑧ コンサルタント・金融系
建設コンサルタント
道路・橋梁・河川・都市インフラの調査・設計が中心。都市計画・まちづくり分野では建築系も活躍します。
【年収の推移目安(主要建設コンサルタント)】
入社1年目(22〜24歳) ── 340〜400万円
入社3年目(24〜26歳) ── 390〜470万円
入社5年目(26〜28歳) ── 450〜560万円 ← 20代後半
入社8年目(29〜31歳) ── 530〜660万円 ← 20代末〜30歳前後
(参考)全社平均年収
パシフィックコンサルタンツ ── 約650〜730万円
日本工営 ── 約650〜750万円(有報2024年3月期)
オリエンタルコンサルタンツ ── 約600〜680万円
技術士(建設部門)取得で月3〜5万円の資格手当が多くの企業に設定。
不動産ファンド・不動産投資
【不動産ファンドの年収目安】
⚠️ ほぼ中途採用のみ。新卒での直接入社はほぼない。
【転職後の年収水準目安(入社〇年目ではなく経験年数ベース)】
ゼネコン等3〜5年経験後に転職(28〜30歳前後)
外資系ファンド(ブラックストーン・GICなど) ── 700〜1,200万円
国内系ファンド・不動産投資顧問 ── 600〜900万円
REIT系アセットマネジメント ── 550〜800万円
さらに経験を積んだ後(30代後半〜40代)
外資系ファンド ── 1,500〜3,000万円以上(インセンティブで上振れ大)
国内系ファンド ── 1,000〜1,800万円
【定番の到達ルート】
ゼネコン施工管理 or 設計事務所(3〜5年) → ファンドへ転職
→ 建築知識が活きる場面:DD(建物調査)・修繕計画・設計者との交渉
→ 金融・宅建士・不動産鑑定士の知識も求められる
業種別「年収・働き方」比較
【働き方・安定性の比較】
安定性 ワークライフ 設計関与度 建築知識の必要性
─────────────────────────────────────────────────────
外資系ファンド △ ○〜◎ ✗ ○(あると差別化)
大手デベロッパー ◎ ○ △ ○(あると有利)
スーパーゼネコン ◎ △(改善中) ○〜◎ ◎(必須)
大手メーカー ◎ ◎ △ ○(分野次第)
ハウスメーカー ◎ ○ ○ ○(必要)
建材メーカー ◎ ◎ △ ○(必要)
建設コンサル ○ ○ △ ○(分野次第)
組織設計事務所 ○ △〜○ ◎ ◎(必須)
地方公務員 ◎◎ ◎ △ ○(必要)
アトリエ △ ✗ ◎◎ ◎(必須)
就職先を選ぶときの「軸」の整理
どこに行くべきか迷ったとき、以下の4つの軸で考えると整理しやすいです。
よくある「思い込み」を解除する
❌「建築学科を出たら設計事務所に行くべき」
✅ 設計以外でも建築知識は十分に活きる。
何をしたいかより「何が得意で何で貢献できるか」で考える。
❌「ゼネコンは体育会系でつらそう」
✅ スーパーゼネコンは待遇・年収が国内最高水準で働き方改革も進行中。
体力面より「大きなものを作り上げる充実感」を評価する人が多い。
❌「設計を諦めたら負けだ」
✅ 設計はキャリアの一形態にすぎない。
デベロッパー・メーカー・公務員でも「建物に関わる仕事」は無数にある。
❌「建築は給料が安い」
✅ ゼネコン・デベロッパー・不動産ファンドは高水準。
「アトリエ設計事務所」が低いのは事実だが、
建築業界全体が低いわけではない。
❌「建築以外の業界に行ったら建築が無駄になる」
✅ 建築で培った「空間認識」「図面読解力」「コスト感覚」は
どの業界でも希少スキルとして評価される。
まとめ
【建築学科の就職先 8分類まとめ】
① 設計系 ── 組織設計・アトリエ・ゼネコン設計部
入社8年目目安:300〜730万円(アトリエ〜組織設計で幅大)
② 施工管理系 ── ゼネコン・サブコン
入社8年目目安:660〜750万円(現場手当別途)
③ ハウスメーカー ── 設計・営業
入社8年目目安:540〜950万円以上(営業インセンティブ次第)
④ 不動産・デベ ── 三菱地所など大手は平均年収1,000万円超
入社8年目目安:800〜950万円(採用倍率200倍超、超難関)
⑤ 建材メーカー ── 技術営業・製品開発(土日休み・安定)
入社8年目目安:560〜680万円
⑥ 公務員・行政 ── 建築職・都市計画(倍率3〜10倍・安定重視)
入社8年目目安:460〜550万円
⑦ IT・建設テック ── BIM・スタートアップ(外資大手は高年収)
入社8年目目安:620〜900万円
⑧ コンサル・金融 ── 建設コンサル・不動産ファンド
建設コンサル入社8年目:530〜660万円
不動産ファンドは中途転職がメイン(転職後700万円〜)
「建築学科=設計かゼネコン」という思い込みを外すと、
選択肢は一気に広がります。
大切なのは「建築学科で何を学んだか」より、「自分は何ができて、何をしたいのか」を就職先に重ねて考えることです。
設計の道を突き進む人も、まったく違う道を選ぶ人も、どちらも建築学科で学んだことは無駄にはなりません。
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