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一級建築士構造構造力学全塑性モーメント崩壊荷重塑性ヒンジ勉強法2026年

一級建築士【構造】全塑性モーメントと崩壊荷重を図解で完全解説

はじめに

全塑性モーメント(Mp)と崩壊荷重は、一級建築士試験の「構造」分野で近年出題頻度が上がっているテーマです。弾性理論だけでは構造物の限界耐力を把握できないため、塑性設計の考え方は実務でも非常に重要です。この記事では断面の塑性化プロセスから崩壊機構の種類、仮想仕事法による崩壊荷重の導出まで、図解を交えながら丁寧に解説します。試験対策はもちろん、構造力学の理解を深めたい方にも役立つ内容となっています。


全塑性モーメント(Mp)とは

断面に曲げモーメントが作用するとき、断面内の応力分布は荷重の大きさによって次の3段階で変化します。

① 弾性 σmax σmax My = σy·Z (降伏モーメント) ② 弾塑性 σy σy 弾性コア残存 ③ 全塑性 +σy −σy Mp = σy·Zp (全塑性モーメント) 形状係数 f = Mp / My = Zp / Z (矩形断面: f = 1.5、I形断面: f ≈ 1.1〜1.15)

各ステージの説明

① 弾性状態

断面に作用する曲げモーメントが小さいうちは、応力分布は中立軸を境に線形(三角形分布)になります。最外縁の応力が降伏応力 σy に達したときのモーメントを降伏モーメント My といいます。

My = σy × Z

ここで Z は弾性断面係数で、矩形断面では Z = bh² / 6 です。

② 弾塑性状態

My を超えると、断面外縁部から塑性化が始まります。外縁部は降伏応力 σy で一定となり、内部には弾性的な「弾性コア」が残存します。この状態が弾塑性状態です。

③ 全塑性状態

さらに曲げモーメントが増大すると、断面全体が降伏応力に達します。これが全塑性状態であり、このときのモーメントが全塑性モーメント Mp です。

Mp = σy × Zp

ここで Zp は塑性断面係数で、矩形断面では Zp = bh² / 4 です。

形状係数

形状係数 f は弾性断面係数に対する塑性断面係数の比であり、断面形状の余裕度を示します。

f = Mp / My = Zp / Z

  • 矩形断面: Zp = bh²/4、Z = bh²/6 → f = 1.5
  • I形断面: f ≈ 1.1〜1.15(フランジに応力が集中するため形状係数は小さい)

塑性ヒンジとは

全塑性モーメント Mp に達した断面は、それ以上のモーメントを負担できなくなり、回転剛性がゼロになります。この状態を「塑性ヒンジ(plastic hinge)」といいます。

塑性ヒンジのポイントは次の2点です。

  1. 回転は自由:ヒンジを中心に自由に回転できる(機械的ヒンジと同じ)
  2. Mp は保持:回転しながらも曲げモーメントは Mp を維持し続ける(完全弾塑性体の仮定)

この「Mp を保ちながら回転する」という特性が、崩壊荷重の計算で重要な役割を果たします。


崩壊条件(必要ヒンジ数 = 不静定次数 + 1)

構造物が崩壊機構(メカニズム)を形成するためには、塑性ヒンジが一定数以上必要です。

崩壊に必要な塑性ヒンジ数 = 不静定次数 n + 1

これは、不静定構造物が崩壊するには、不静定拘束を解除するための追加ヒンジが必要なためです。

構造種別不静定次数 n必要ヒンジ数
単純梁01個
一端固定一端ピン12個
両端固定梁23個
片持ち梁0(固定端1個)1個

各梁の崩壊機構

3種類の梁について、崩壊機構と崩壊荷重 Pu を比較します。

① 単純梁 Pu δ Pu = 4Mp / L ② 両端固定梁 Pu Pu = 8Mp / L ③ 一端固定一端ピン Pu Pu = 6Mp / L

各崩壊機構の解説

① 単純梁(中央集中荷重)

単純梁は不静定次数 n = 0 なので、塑性ヒンジが1個形成されると崩壊します。中央の荷重点にヒンジが生じ、梁は折れ曲がって崩壊します。崩壊荷重は Pu = 4Mp / L です。

② 両端固定梁(中央集中荷重)

両端固定梁は不静定次数 n = 2 なので、塑性ヒンジが3個必要です。最初に両端固定端(最大曲げモーメント位置)にヒンジが生じ、次に中央荷重点にヒンジが生じた時点で崩壊します。崩壊荷重は Pu = 8Mp / L です。単純梁の2倍であり、固定端の拘束効果がよくわかります。

③ 一端固定一端ピン(中央集中荷重)

一端固定一端ピンは不静定次数 n = 1 なので、塑性ヒンジが2個必要です。固定端にヒンジが生じ、続いて荷重点にヒンジが生じると崩壊します。崩壊荷重は Pu = 6Mp / L で、単純梁と両端固定梁の中間の値となります。


仮想仕事法で崩壊荷重を求める

崩壊荷重を求める最も体系的な方法が**仮想仕事法(virtual work method)**です。ここでは両端固定梁の例を使って手順を解説します。

両端固定梁(中央集中荷重)の崩壊荷重を仮想仕事法で求める Pu δ θA θB L/2 L/2 仮想仕事の原理:外力の仮想仕事 = 内力の仮想仕事 Pu × δ = Mp × θA + Mp × θB + Mp × (θA + θB) (θA = θB = 2δ/L なので)Pu × δ = Mp × 8δ/L ∴ Pu = 8Mp / L ✓

仮想仕事法の手順(ステップバイステップ)

Step 1: 崩壊機構を仮定する

両端固定梁(中央集中荷重)では、不静定次数 n = 2 なので 3個の塑性ヒンジが必要です。崩壊機構は「両端固定端 + 中央荷重点」の3箇所にヒンジが生じる形です。

Step 2: 仮想変位を設定する

中央点に仮想変位 δ を与えます。スパン L = L なので、左右のスパンはそれぞれ L/2 です。

Step 3: 各ヒンジの回転角を求める

変位 δ が小さい(微小変位)とき、各ヒンジの回転角 θ は幾何学的に求められます。

  • 左固定端のヒンジ回転角 θA = δ / (L/2) = 2δ/L
  • 右固定端のヒンジ回転角 θB = δ / (L/2) = 2δ/L
  • 中央ヒンジの回転角 = θA + θB = 4δ/L(左右から合計)

Step 4: 外力の仮想仕事を計算する

外力 Pu が仮想変位 δ の方向に作用するので:

外力の仮想仕事 = Pu × δ

Step 5: 内力の仮想仕事を計算する

各塑性ヒンジでの仮想仕事の合計(各ヒンジで Mp × 回転角):

内力の仮想仕事 = Mp × θA + Mp × θB + Mp × (θA + θB)        = Mp × (2δ/L) + Mp × (2δ/L) + Mp × (4δ/L)        = Mp × 8δ/L

Step 6: 仮想仕事の原理を適用する

外力の仮想仕事 = 内力の仮想仕事

Pu × δ = Mp × 8δ/L

両辺を δ で割って:

Pu = 8Mp / L


崩壊荷重まとめ表

試験で頻出の崩壊荷重公式を一覧にまとめます。

梁の種類荷重崩壊荷重 Puヒンジ数
単純梁集中荷重P(中央)4Mp/L1個
単純梁等分布荷重w8Mp/L²1個
片持ち梁集中荷重P(先端)Mp/L1個
一端固定一端ピン集中荷重P(中央)6Mp/L2個
両端固定集中荷重P(中央)8Mp/L3個
両端固定等分布荷重w16Mp/L²3個

覚え方のポイント:

  • 単純梁の崩壊荷重 = 4Mp/L を基準に考える
  • 両端固定は単純梁の2倍(固定端の拘束が荷重分担を高める)
  • 一端固定一端ピンは単純梁の1.5倍

まとめ

この記事では、全塑性モーメントと崩壊荷重について以下の内容を解説しました。

ポイント整理

  1. 全塑性モーメント Mp:断面全体が降伏応力 σy に達したときのモーメント。Mp = σy × Zp
  2. 形状係数 f = Mp / My:矩形断面では f = 1.5、I形断面では f ≈ 1.1〜1.15
  3. 塑性ヒンジ:Mp に達した断面は回転剛性がゼロになるが Mp を保持し続ける
  4. 崩壊条件:必要ヒンジ数 = 不静定次数 n + 1
  5. 仮想仕事法の手順:①崩壊機構仮定 → ②仮想変位設定 → ③回転角計算 → ④外力・内力の仮想仕事を等置 → ⑤崩壊荷重を算出

試験対策チェックリスト

  • Mp = σy × Zp、My = σy × Z の違いを説明できる
  • 矩形断面の形状係数 f = 1.5 を導出できる
  • 各梁の不静定次数と必要ヒンジ数を即答できる
  • 仮想仕事法の手順をスムーズに実行できる
  • 両端固定梁の崩壊荷重 Pu = 8Mp/L を自力で導ける

全塑性モーメントと崩壊荷重は、一度原理を理解すれば応用が効く分野です。仮想仕事法の手順をしっかりマスターして、試験本番でも確実に得点できるようにしておきましょう。