一級建築士【法規】容積率を計算手順で攻略|前面道路の低減・特定道路の緩和・不算入規定
法規の集団規定シリーズ、今回は容積率です。
容積率は法規で最も計算が重い分野。「指定容積率を使うだけ」では済まず、前面道路の幅員による低減、特定道路の緩和、**容積率に算入しない部分(不算入)**まで絡みます。手順を一つでも飛ばすと答えが合いません。
そこで今回は、容積率を求める計算手順を1ステップずつ追いながら、例外(緩和・不算入)まで網羅します。
⚠️ 内容は建築基準法・施行令等に基づく一般的な解説です。条文番号・数値は学習用の代表値で、受験・実務では最新の法令集で確認してください。
容積率とは——「敷地に対する延べ面積の割合」
容積率 = 延べ面積 ÷ 敷地面積
建蔽率が「平面(建築面積)」の制限なら、容積率は「立体(延べ面積)」の制限。建物のボリュームの総量を抑え、人口・交通量を道路インフラに見合う範囲に保つための規定です。
容積率の限度は、次の2つを比べて小さいほうで決まります。これが最大のポイント。
ステップ1:指定容積率
まず用途地域ごとに都市計画で定められた指定容積率を確認します(50%〜1300%)。商業地域は大きく、住居専用系は小さい、という傾向です。
前面道路の幅員が12m以上なら、原則この指定容積率がそのまま限度になります(次のステップ2は不要)。
ステップ2:前面道路幅員による低減(12m未満のとき)
前面道路の幅員が12m未満のときは、指定容積率とは別に、道路幅員から計算した値を求め、小さいほうを採用します。
前面道路幅員(m)× 法定乗数
- 住居系の用途地域:4/10
- その他(商業系・工業系等):6/10
計算例①:第一種住居地域(住居系)、指定容積率300%、前面道路の幅員6m。
② 道路による値 = 6 × 4/10 = 2.4 = 240%
① 指定容積率 = 300%
→ 小さいほうの 240% が限度
敷地100m² → 延べ面積の上限 = 100 × 2.4 = 240 m²
指定が300%でも、前面道路が狭ければ240%に抑えられる。「指定容積率=そのまま使える」と思い込むのが最大の失点パターンです。
⚠️ 前面道路が2つ以上あるとき
前面道路が複数ある場合は、最も広い幅員を使って計算します(狭いほうではない)。角地などで有利になる方向です。
ステップ2の例外——特定道路による緩和(法52条9項)
ここが容積率で最も複雑な緩和。前面道路が幅員6m以上12m未満で、その道路が幅員15m以上の道路(特定道路)に接続し、敷地から特定道路までの距離が70m以内のとき、前面道路の幅員に一定の数値 Wa を加算できます。
Wa = (12 − Wr) × (70 − L) ÷ 70 Wr=前面道路の幅員(m)、L=特定道路までの距離(m)
計算例②:商業地域(その他=6/10)、指定容積率600%、前面道路の幅員8m、特定道路(15m)までの距離35m。
Wa = (12 − 8) × (70 − 35) ÷ 70
= 4 × 35 ÷ 70 = 4 × 0.5 = 2 m
みなし前面道路幅員 = 8 + 2 = 10 m
② 道路による値 = 10 × 6/10 = 6.0 = 600%
① 指定容積率 = 600%
→ 小さいほう(同じ)の 600% が限度
Waを足さなければ「8×6/10=480%」に抑えられていたところ、特定道路の緩和で600%まで使えるようになる、というのが効果です。式に12と70という固定値が入る点を押さえます。
ステップ3:不算入規定——延べ面積に「数えない」部分
容積率の分子は「延べ面積」ですが、一定の部分は延べ面積に算入しません(不算入)。ここを知らないと、容積率に余裕があるのに無いと誤判断します。
全部不算入(限度なし)
| 部分 | 内容 |
|---|---|
| エレベーターの昇降路 | シャフト部分は全部不算入(各階で重複して数えない) |
| 共同住宅・老人ホーム等の共用廊下・階段 | 共用の通路・階段・エントランス・EVホール等は全部不算入 |
限度ありの不算入
| 部分 | 限度(延べ面積に対する割合) |
|---|---|
| 自動車車庫等(駐車場・駐輪場) | 1/5 |
| 地階の住宅・老人ホーム等(天井が地盤面から1m以下) | 住宅部分の床面積の1/3 |
| 備蓄倉庫 | 1/50 |
| 蓄電池の設置部分 | 1/50 |
| 自家発電設備の設置部分 | 1/100 |
| 貯水槽の設置部分 | 1/100 |
| 宅配ボックスの設置部分 | 1/100 |
数字の覚え方:車庫1/5・地下住宅1/3が大きめ。設備系は備蓄倉庫・蓄電池=1/50、自家発電・貯水槽・宅配ボックス=1/100。「1/50か1/100か」を入れ替える出題が頻出です。
計算例③(駐車場の不算入):延べ面積に算入する床面積を計算する。各階床面積の合計(駐車場含む実面積)が600m²、うち駐車場が150m²。
車庫の不算入限度 = 600 × 1/5 = 120 m²
駐車場150m²のうち、120m²までを不算入にできる
容積率算定用の延べ面積 = 600 − 120 = 480 m²
(駐車場150m²全部ではなく、1/5の120m²までしか引けない点に注意)
敷地が容積率の異なる地域にまたがるとき——按分
容積率も建蔽率と同じく、**異なる指定容積率の地域にまたがる場合は加重平均(按分)**で求めます(過半ではない)。
計算例④:敷地300m²のうち、容積率200%の部分が200m²、容積率400%の部分が100m²。
許容延べ面積 = 200×2.0 + 100×4.0
= 400 + 400 = 800 m²
(敷地全体では 800 ÷ 300 ≒ 267%)
なお、前面道路の幅員による低減は、またがる場合も敷地全体に対して同じ前面道路幅員で判断する点に注意します(用途地域ごとに乗数が変わる場合は各部分で)。
○×で総チェック
Q1. 前面道路の幅員が12m以上ある場合は、原則として指定容積率がそのまま限度となる。
→ ○。前面道路による低減は12m未満のとき。12m以上なら指定容積率で判断する。
Q2. 住居系用途地域における前面道路幅員の法定乗数は6/10である。
→ ×。住居系は4/10、その他(商業系・工業系等)が6/10。
Q3. 前面道路が2つあるときは、狭いほうの幅員で容積率を計算する。
→ ×。最も広い前面道路の幅員で計算する。
Q4. 特定道路の緩和では、前面道路幅員に Wa=(12−Wr)×(70−L)÷70 を加算できる。
→ ○。特定道路は幅員15m以上、前面道路は6m以上12m未満、距離Lは70m以内が条件。
Q5. エレベーターの昇降路の部分は、延べ面積の1/5を限度として不算入となる。
→ ×。エレベーターの昇降路は全部不算入(限度なし)。1/5は自動車車庫等。
Q6. 備蓄倉庫の不算入限度は延べ面積の1/100である。
→ ×。備蓄倉庫は1/50。1/100は自家発電・貯水槽・宅配ボックスなど。
Q7. 敷地が指定容積率の異なる2地域にまたがる場合、過半の属する地域の容積率を敷地全部に適用する。
→ ×。容積率は加重平均(按分)。過半で判断するのは用途制限など。
まとめ——容積率は「手順」で外さない
- 指定容積率を確認(前面道路12m以上ならこれで決まり)
- 12m未満なら 前面道路幅員 × 乗数(住居系4/10・その他6/10) を計算し、指定容積率と小さいほう
- 特定道路があれば Wa=(12−Wr)×(70−L)÷70 で前面道路幅員を割り増し
- 分子の延べ面積から 不算入(昇降路・共用廊下=全部、車庫1/5・地下住宅1/3・備蓄倉庫/蓄電池1/50・自家発電/貯水槽/宅配ボックス1/100)を差し引く
- またがりは 按分(加重平均)
容積率は知識量より手順の正確さで差がつきます。「小さいほう」「最大幅員」「不算入の限度」を取り違えないことが、そのまま得点になります。次回は高さ制限・斜線制限を、後退距離の緩和と天空率による適用除外まで掘り下げます。
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