一級建築士【法規】日影規制を攻略|対象区域・対象建築物・測定面と冬至日の測定時間
法規の集団規定シリーズ、今回は日影規制です。
前回の斜線制限と並ぶ高さ制限ですが、日影規制は考え方が独特。斜線が「建物の形を直接決める」のに対し、日影規制は「冬至日にできる影の時間」で間接的に高さ・形を縛ります。「対象区域」「対象建築物」「測定面」「測定時間」と要素が多く、それぞれの数字を取り違えると失点します。
今回も「原則 → 例外 → 例外の例外」で、混同ポイントを整理します。
⚠️ 内容は建築基準法・別表第4等に基づく一般的な解説です。具体的な区域指定・規制時間は地方公共団体の条例で定まります。条文番号・数値は学習用の代表値で、受験・実務では最新の法令集で確認してください。
1. 日影規制とは——「冬至日の影の時間」を縛る
日影規制(法56条の2):中高層の建築物が、冬至日に周囲の敷地に一定時間以上の日影を生じさせないようにする制限。
最も影が長くなる冬至日を基準に、「隣の敷地にこれ以上長い時間、影を落としてはいけない」という考え方です。これにより、周囲の住宅の**日照(冬の日当たり)**を守ります。
斜線制限が建物の輪郭を直接削るのに対し、日影規制は「影の時間」という結果で縛るので、同じ高さでも建物の配置・形で結論が変わるのが特徴です。
2. 対象区域——「商業・工業・工専は対象外」
日影規制は全国一律ではなく、地方公共団体が条例で指定する区域にだけかかります。指定できる地域は次のとおり。
商業地域・工業地域・工業専用地域は、日影規制の対象外。
理由は、これらが住環境より商業・生産活動を優先する地域だから。「商業地域のタワーマンションに日影規制は(原則)かからない」が頻出ポイントです。
3. 対象建築物——地域で基準が違う
対象区域内でも、すべての建物がかかるのではなく、一定以上の規模のものだけが対象です。基準が地域で2通りに分かれます。
| 地域 | 対象となる建築物 |
|---|---|
| 低層住専・田園住居 | 軒の高さが7mを超える、または地階を除く階数が3以上 |
| その他の対象区域(中高層住専・住居・近商・準工等) | 高さが10mを超える |
低層住専は「軒高7m超 or 3階以上」、それ以外は「高さ10m超」。
低層住専は背の低い建物が前提なので、より低い基準(軒高7m・3階)で対象になる、と理屈で覚えます。「低層住専で高さ10m超を基準にする」と書くと誤りです。
4. 測定面と測定時間——数字の核心
日影は「どの高さの面で」「いつ」測るかが決まっています。
測定面(平均地盤面からの高さ)
測定する水平面の高さは、平均地盤面から 1.5m/4m/6.5m のいずれか(地域・条例による)。
| 地域 | 測定面の高さ |
|---|---|
| 低層住専・田園住居 | 1.5m(1階の窓の高さ=低い) |
| 中高層住専・住居・近商・準工等 | 4m または 6.5m(2階・3階の窓の高さ) |
低層住専は1階の日照を守るので1.5mと低く、中高層地域は上階の日照を想定して4m/6.5mと高い位置で測る、という違いです。基準は平均地盤面(建物が建つ地盤の平均の高さ)。
測定時間(冬至日)
冬至日の真太陽時で午前8時〜午後4時(8時間)の間の日影を測る。
「夏至」ではなく冬至、「8〜16時」が基本。**北海道だけ9〜15時(6時間)**になる点も問われます。
5. 規制範囲——5m・10mの2段階
影の時間を測るのは、敷地境界線から離れた2つの範囲です。
- 敷地境界線から5m以内:規制の対象外(自分の建物のすぐ足元なので測らない)
- 5m超〜10m以内:許容日影時間が長め(例:3〜5時間)
- 10m超:許容日影時間が短め(例:2〜3時間)=遠くまで影を伸ばさないほど厳しい
具体的な許容時間(別表第4から条例で選択)は地域で異なりますが、「境界に近い5〜10mは長め、遠い10m超は短め」という大小関係が重要です。
6. 例外の例外——区域外でも対象になる「みなし規定」
ここが最頻出のひっかけ。
対象区域外にある建築物でも、高さが10mを超え、冬至日に対象区域内に日影を生じさせるものは、対象区域内にある建築物とみなして日影規制を適用する(法56条の2第4項)。
「自分の敷地は商業地域(対象外)だから日影規制は関係ない」と判断すると誤り。隣の対象区域に影を落とすなら、規制がかかるのです。「区域外=無関係」ではない、が決定的なポイントです。
その他の注意点
- 同一敷地内に2以上の建築物がある場合は、1つの建築物とみなして日影を合算する(法56条の2第2項)
- 日影規制の対象区域となる中高層住居専用地域では、北側斜線制限が適用されないことがある(日影規制が代わりに日照を守るため)
○×で総チェック
Q1. 日影規制は、商業地域においても適用される。
→ ×。商業・工業・工業専用地域は対象外。対象は住居系・近商・準工・無指定区域など。
Q2. 第一種低層住居専用地域では、高さが10mを超える建築物が日影規制の対象となる。
→ ×。低層住専・田園住居は「軒高7m超 または 階数3以上」が対象。高さ10m超はその他の地域の基準。
Q3. 日影規制の測定は、夏至日の午前8時から午後4時までの間で行う。
→ ×。冬至日の8〜16時(真太陽時)。最も影が長い冬至が基準。北海道は9〜15時。
Q4. 測定面の高さは、低層住居専用地域では平均地盤面から1.5mである。
→ ○。低層住専・田園は1.5m、その他は4mまたは6.5m。
Q5. 日影規制は、敷地境界線から5m以内の範囲についても日影時間を測定する。
→ ×。規制範囲は5m超〜10mと10m超。5m以内は対象外。
Q6. 日影規制の対象区域外にある建築物は、いかなる場合も日影規制を受けない。
→ ×。高さ10m超で対象区域内に日影を生じさせる場合は、区域内にあるものとみなして規制を受ける(法56条の2第4項)。
Q7. 同一敷地内に2以上の建築物がある場合、それぞれ別に日影を測定する。
→ ×。1つの建築物とみなして日影を合算する。
まとめ——日影規制は「4要素+みなし」で整理
- 対象区域:条例指定。商業・工業・工専は対象外
- 対象建築物:低層住専・田園は軒高7m超 or 3階以上/その他は高さ10m超
- 測定面:平均地盤面から1.5m(低層)/4m・6.5m(中高層)
- 測定時間:冬至日 8〜16時(北海道は9〜15時)
- 規制範囲:5m超〜10m(長め)/10m超(短め)、5m以内は対象外
- みなし:区域外でも高さ10m超で区域内に日影を落とせば規制、同一敷地の複数棟は合算
日影規制は数字の取り違え(夏至/冬至、10m/7m、測定面の高さ)が失点に直結します。4要素を地域とセットで覚え、最後にみなし規定で詰めるのが攻略法です。次回は防火・耐火・防火区画を整理します。
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