一級建築士【計画】建築史を攻略|西洋・日本・近代と巨匠・代表作の総整理
計画シリーズ第8弾は、**建築史(西洋・日本・近代)**です。
建築史は暗記量が多く見えますが、出るのは**「様式・建物・人物・キーワードの対応」**です。誰が・どこで・どんな構造的工夫をしたかを理由ごと押さえれば、似た名前のひっかけに強くなります。建物と人物の対応は毎年必ず出題され、近年は現代建築家の新顔も出やすいので、本記事では代表作リストと「予想ポイント」まで踏み込みます。
⚠️ 内容は建築史の一般的な解説です。年代や代表作は学習用の代表例で、諸説ある場合があります。受験・実務では最新の資料で確認してください。
1. 西洋建築史(古代〜近世)
時代を追って、構造の工夫と代表建築で覚えます。
| 様式 | 代表建築 | キーワード(構造・特徴) |
|---|---|---|
| 古代ギリシャ | パルテノン神殿 | オーダー(柱の様式)、柱中央のふくらみエンタシス、梁で支える架構(まぐさ式) |
| 古代ローマ | パンテオン、コロッセウム、ガール水道橋 | アーチ・ヴォールト・ドーム、ローマン・コンクリート、大空間 |
| ビザンチン | ハギア・ソフィア | ペンデンティブドーム(方形の上に円形ドームを載せる)、モザイク |
| ロマネスク | ピサ大聖堂 | 半円アーチ、厚い壁、小さな窓、重厚 |
| ゴシック | ノートルダム、シャルトル、ケルン大聖堂 | **尖頭(とがり)アーチ・リブヴォールト・フライングバットレス(飛梁)**で高く広い窓、ステンドグラス |
| ルネサンス | フィレンツェ大聖堂(ブルネレスキのドーム)、テンピエット(ブラマンテ) | 古典回帰・左右対称・比例、人間中心 |
| バロック | サン・ピエトロ大聖堂(ドームはミケランジェロ、広場はベルニーニ)、ヴェルサイユ宮殿 | 動的・曲線・豪華、劇的な明暗 |
オーダー(柱の様式)
ギリシャ建築の「柱と上部の様式」がオーダー。柱頭(キャピタル)の形で見分けます。
暗記の軸:ドリス=簡素/イオニア=渦巻/コリント=葉飾り(最も装飾的)。古い順もこの並び。ローマ時代にトスカナ式・コンポジット式が加わり「5種」になる、と押さえると応用問題に強い。
ゴシックの3点セット**「尖頭アーチ・リブヴォールト・フライングバットレス」は、壁を薄くして大きなステンドグラス**を可能にした構造的工夫。「ロマネスク=半円・厚壁・暗い/ゴシック=尖頭・薄壁・明るい」と対比で覚える。
2. 日本建築史(神社・寺院・住宅・庭園)
神社建築
| 様式 | 代表 | 特徴 |
|---|---|---|
| 神明造(しんめいづくり) | 伊勢神宮 | 平入り、直線的、簡素。式年遷宮 |
| 大社造(たいしゃづくり) | 出雲大社 | 妻入り、最古級、力強い |
| 住吉造 | 住吉大社 | 妻入り、直線的、古い形式 |
| 流造(ながれづくり) | 賀茂神社など | 平入り、屋根の前面が長く流れる。神社で最も多い形式 |
| 春日造 | 春日大社 | 妻入り、前面に庇 |
| 権現造(ごんげんづくり) | 日光東照宮 | 本殿と拝殿を石の間(相の間)でつなぐ霊廟建築。装飾豊か |
軸:伊勢=神明造(平入り)/出雲=大社造(妻入り)。「平入り=屋根の流れと平行な面に入口」「妻入り=三角の妻側に入口」。**日光東照宮=権現造(石の間でつなぐ)**も頻出。
寺院建築(様式)
| 様式 | 代表 | 特徴 |
|---|---|---|
| 飛鳥様式 | 法隆寺 | 現存最古の木造建築。柱にエンタシス |
| 和様(わよう) | 平等院鳳凰堂、三十三間堂 | 平安期に日本化した穏やかな様式 |
| 大仏様(だいぶつよう) | 東大寺南大門 | 重源が導入。貫(ぬき)を多用した豪快・力強い構造 |
| 禅宗様(ぜんしゅうよう) | 円覚寺舎利殿 | 禅宗とともに伝来(唐様)。細部が繊細・装飾的、扇垂木 |
| 折衷様 | — | 和様に大仏様・禅宗様を混ぜた様式 |
住宅建築の流れ
| 様式 | 時代・代表 | 特徴 |
|---|---|---|
| 寝殿造(しんでんづくり) | 平安・貴族 | 中央の寝殿と対屋を渡殿でつなぐ。開放的・間仕切り少ない |
| 書院造(しょいんづくり) | 室町〜・武家 | 床の間・違い棚・付書院・畳敷き。銀閣寺東求堂同仁斎が源流 |
| 数寄屋造(すきやづくり) | 桂離宮 | 茶室の自由・簡素さを住宅へ。装飾を抑えた洗練 |
流れは寝殿造(貴族・開放)→書院造(武家・床の間/和室の原型)→数寄屋造(茶室の簡素さ)。「現代和室の元=書院造」がポイント。
庭園(おまけだが頻出)
| 形式 | 代表 | 特徴 |
|---|---|---|
| 浄土式庭園 | 平等院、毛越寺 | 池の対岸に阿弥陀堂。極楽浄土を表す |
| 枯山水(かれさんすい) | 龍安寺石庭、大徳寺大仙院 | 水を使わず石と砂で山水を抽象表現(禅の影響) |
| 回遊式庭園 | 桂離宮、後楽園、兼六園 | 園路を歩いて景色の変化を楽しむ。江戸期の大名庭園 |
3. 近代建築の潮流と三大巨匠
鉄・ガラス・コンクリートという新材料が、建築を大きく変えました。
| 出来事・運動 | 代表 | キーワード |
|---|---|---|
| 産業革命 | クリスタルパレス(パクストン)、エッフェル塔 | 鉄とガラスの大空間、プレファブ |
| アーツ・アンド・クラフツ | ウィリアム・モリス | 産業化による粗悪品に反発、手仕事の復権 |
| アール・ヌーヴォー | ガウディ(サグラダ・ファミリア)、オルタ(タッセル邸)、ワグナー | 曲線・植物的な装飾、鉄の装飾的利用 |
| シカゴ派 | サリヴァン | 鉄骨で高層化。「形態は機能に従う」 |
| ウィーン/装飾批判 | アドルフ・ロース | 「装飾は罪悪」、装飾を排した近代へ |
| ドイツ工作連盟・バウハウス | ベーレンス、グロピウス(バウハウス校舎) | 芸術と技術の総合、機能主義・モダンデザインの源流 |
| デ・ステイル | リートフェルト(シュレーダー邸) | 直線・原色の構成(モンドリアン的) |
ガウディはアール・ヌーヴォー(スペインではモデルニスモ)。サグラダ・ファミリアやカサ・ミラなどバルセロナの作品群は世界遺産。「曲線の有機的造形=ガウディ」で即答できるように。
近代建築の三大巨匠
| 建築家 | 代表作 | キーワード |
|---|---|---|
| ル・コルビュジエ | サヴォア邸、ロンシャン教会、ユニテ・ダビタシオン、国立西洋美術館 | 近代建築の5原則、寸法体系モデュロール、ドミノシステム |
| ミース・ファン・デル・ローエ | ファンズワース邸、シーグラムビル、バルセロナ・パビリオン | Less is more、ユニバーサルスペース、鉄とガラス |
| フランク・ロイド・ライト | 落水荘(カウフマン邸)、グッゲンハイム美術館、旧帝国ホテル | 有機的建築、プレーリーハウス |
※ベーレンスの事務所からコルビュジエ・ミース・グロピウスが育った、という系譜も問われる。グロピウスを加えて「四大巨匠」とすることもある。日本にある巨匠作品=コルビュジエの国立西洋美術館(世界遺産)/ライトの旧帝国ホテル・自由学園明日館は頻出。
ル・コルビュジエの近代建築5原則
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| ピロティ | 1階を柱で開放し、地面を空ける |
| 屋上庭園 | 屋根を平らにして庭に使う |
| 自由な平面 | 柱で支えるので、間仕切りを自由に配置 |
| 自由な立面(ファサード) | 壁が荷重を負わないので、外観も自由 |
| 水平連続窓 | 横長の連続した窓で採光 |
5原則は**「柱で支える(ドミノシステム)」が前提。だから壁も間仕切りも自由**になる、という理由から覚えると忘れない。
4. 世界の近現代建築家(巨匠の次世代)
三大巨匠の後、各国に重要な建築家が続きます。「建築家=代表作」の一対一対応で問われます。
| 建築家(国) | 代表作 | キーワード |
|---|---|---|
| アルヴァ・アアルト(フィンランド) | マイレア邸、パイミオのサナトリウム、ヴィープリの図書館 | 北欧モダン、木と曲線の有機的デザイン |
| ルイス・カーン(米) | ソーク研究所、キンベル美術館、バングラデシュ国会議事堂 | サーブド/サーバント空間、光と幾何学 |
| エーロ・サーリネン(米) | TWAターミナル、ダレス空港、ゲートウェイ・アーチ | 彫塑的な曲面・シェル |
| ヨーン・ウツソン(デンマーク) | シドニー・オペラハウス | シェル屋根、世界遺産 |
| レンゾ・ピアノ+R・ロジャース | ポンピドゥー・センター | ハイテク建築(構造・設備を外部に露出)。ピアノは関西国際空港旅客ターミナルも |
| ノーマン・フォスター(英) | 香港上海銀行、大英博物館グレートコート | ハイテク建築 |
| フランク・O・ゲーリー(米) | ビルバオ・グッゲンハイム美術館 | チタンの自由曲面、脱構築 |
| ザハ・ハディド(英) | 各国の曲線建築(女性初のプリツカー賞) | 脱構築・流動的フォルム |
ハイテク建築は**「構造や設備をあえて外に見せる」のが特徴(ポンピドゥー)。ゲーリー/ザハはコンピュータを使った自由曲面**で対比。
5. 日本の近現代建築家
明治の「お雇い外国人」から現代まで、**系譜(誰の弟子か)**ごと押さえると整理できます。
明治〜大正(近代建築の導入)
| 建築家 | 代表作 |
|---|---|
| ジョサイア・コンドル(英・お雇い外国人) | 鹿鳴館、ニコライ堂、旧岩崎邸。日本人建築家を育てた師 |
| 辰野金吾(コンドルの弟子) | 東京駅(丸の内駅舎)、日本銀行本店 |
| 片山東熊(コンドルの弟子) | 迎賓館赤坂離宮、京都・奈良国立博物館 |
昭和(コルビュジエの弟子と戦後モダン)
| 建築家 | 代表作 |
|---|---|
| 前川國男(コルビュジエに師事) | 東京文化会館、神奈川県立音楽堂 |
| 坂倉準三(コルビュジエに師事) | パリ万博日本館、神奈川県立近代美術館(鎌倉) |
| 丹下健三 | 国立代々木競技場(吊り構造)、広島平和記念資料館、東京都庁舎 |
| 村野藤吾 | 世界平和記念聖堂、日生劇場 |
メタボリズム(1960〜:新陳代謝する建築)
成長・更新する都市と建築を提唱した日本発の運動です。
| 建築家 | 代表作 |
|---|---|
| 菊竹清訓 | スカイハウス、出雲大社庁の舎 |
| 黒川紀章 | 中銀カプセルタワービル、国立新美術館 |
| 槇文彦 | ヒルサイドテラス(代官山)、幕張メッセ |
現代(プリツカー賞世代)
| 建築家 | 代表作・キーワード |
|---|---|
| 磯崎新 | つくばセンタービル、群馬県立近代美術館(ポストモダン) |
| 安藤忠雄 | 住吉の長屋、光の教会、地中美術館(打放しコンクリート) |
| 谷口吉生 | 東京国立博物館法隆寺宝物館、MoMA新館 |
| 伊東豊雄 | せんだいメディアテーク、多摩美術大学図書館 |
| SANAA(妹島和世+西沢立衛) | 金沢21世紀美術館、ルーヴル・ランス |
| 坂茂 | 紙管(紙の建築)、ポンピドゥー・センター・メス |
| 隈研吾 | 国立競技場(新)、根津美術館(木材の活用) |
6. 頻出&「新規が出やすい」予想ポイント
建物・人物は毎年必出で、近年は現代建築家・最近の出来事から新顔が出やすい分野です。次の3点は特に要チェック。
① プリツカー賞の日本人受賞者(最多輩出国・狙われやすい)
| 受賞年 | 受賞者 |
|---|---|
| 1987 | 丹下健三 |
| 1993 | 槇文彦 |
| 1995 | 安藤忠雄 |
| 2010 | 妹島和世+西沢立衛(SANAA) |
| 2013 | 伊東豊雄 |
| 2014 | 坂茂 |
| 2019 | 磯崎新 |
| 2024 | 山本理顕(横須賀美術館、公立はこだて未来大学、埼玉県立大学) |
予想の核:直近受賞の山本理顕(2024)は出題リスクが高い。「地域社会圏」を唱え、横須賀美術館・公立はこだて未来大学などの代表作とセットで覚えておく。プリツカー賞は日本が世界最多級の受賞国である点も問われやすい。
② 世界遺産になった近代建築
- ル・コルビュジエの建築作品群(2016登録)に**国立西洋美術館(東京)**が含まれる——「日本にある世界遺産の近代建築=国立西洋美術館」は定番かつ再出題されやすい。
- ガウディの作品群、シドニー・オペラハウス(ウツソン)、バウハウス関連遺産なども世界遺産。
③ 最近の話題作・物故建築家
- 新国立競技場(隈研吾、2019竣工)——木材を多用した大屋根。ザハ・ハディドの当初案が見直された経緯も含め話題性が高い。
- **中銀カプセルタワービル(黒川紀章)**の解体(2022)——メタボリズムの象徴として出題誘発。
- 著名建築家の逝去(磯崎新2022、槇文彦2024 ほか)後は、追悼的にその人物・代表作が問われやすい。
試験対策の優先度:**「最新のプリツカー賞」+「日本にある世界遺産建築」+「直近の話題作」**は、新規問題の3大ソース。この記事の表で代表作まで結びつけておけば、初見の建築家名にも対応しやすくなります。
7. ○×でチェック
- ゴシック建築は、尖頭アーチ・リブヴォールト・フライングバットレスにより壁を薄くし、大きなステンドグラスを可能にした。
- 神明造の代表は出雲大社であり、妻入りで最古級の力強い形式である。
- 東大寺南大門は禅宗様の代表で、繊細で装飾的な細部をもつ。
- 書院造は床の間・違い棚・付書院などをもち、現代の和室の原型とされる。
- ル・コルビュジエの近代建築の5原則は、ピロティ・屋上庭園・自由な平面・自由な立面・水平連続窓である。
- フランク・ロイド・ライトの代表作に落水荘(カウフマン邸)があり、有機的建築を提唱した。
- レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによるポンピドゥー・センターは、構造や設備を外部に露出させたハイテク建築の代表である。
- 安藤忠雄は打放しコンクリートを多用し、住吉の長屋や光の教会を手がけた。
- ル・コルビュジエの建築作品として、世界遺産に登録された東京の国立西洋美術館がある。
- 2024年のプリツカー賞は山本理顕が受賞し、横須賀美術館などを手がけている。
答え
- ○:ゴシックの3点セット。ロマネスク(半円・厚壁)と対比。
- ×:神明造の代表は伊勢神宮(平入り)。出雲大社は大社造(妻入り)。
- ×:東大寺南大門は大仏様(貫を多用した豪快な構造)。禅宗様は円覚寺舎利殿など。
- ○:書院造が和室の原型。寝殿造(貴族・開放)→書院造の流れ。
- ○:コルビュジエの5原則。柱で支えるから平面・立面が自由になる。
- ○:ライト=落水荘・有機的建築。日本では旧帝国ホテル。
- ○:ハイテク建築=構造・設備を見せる。ピアノは関西国際空港も。
- ○:安藤忠雄=打放しコンクリート。住吉の長屋・光の教会・地中美術館。
- ○:コルビュジエ作品群(2016世界遺産)に国立西洋美術館が含まれる。
- ○:2024年プリツカー賞=山本理顕。新規出題に注意。
まとめ
| 区分 | 押さえどころ |
|---|---|
| 西洋 | オーダードリス・イオニア・コリント/ゴシック=尖頭・薄壁・明るい(ロマネスク=半円・厚壁と対比)/ルネサンス=古典回帰(ブルネレスキ・ブラマンテ) |
| 日本(神社) | 伊勢=神明造(平入り)/出雲=大社造(妻入り)/流造が最多/日光東照宮=権現造 |
| 日本(寺院・住宅・庭園) | 法隆寺=最古の木造/大仏様=東大寺南大門・貫/禅宗様=円覚寺舎利殿/寝殿造→書院造→数寄屋造/枯山水=龍安寺 |
| 近代の巨匠 | コルビュジエ=5原則・国立西洋美術館/ミース=Less is more・ユニバーサルスペース/ライト=落水荘・有機的建築 |
| 世界の現代 | アアルト=北欧/カーン=サーブド・サーバント/ウツソン=シドニー/ピアノ・ロジャース=ハイテク/ゲーリー・ザハ=自由曲面 |
| 日本の現代 | コンドル→辰野(東京駅)/メタボリズム(菊竹・黒川・槇)/安藤=打放し/SANAA=金沢21世紀/隈=新国立競技場 |
| 予想ポイント | 最新プリツカー賞(山本理顕2024)+世界遺産(国立西洋美術館)+話題作(新国立競技場) が新規問題の三大ソース |
次回は計画の続きとして、環境配慮・省エネ計画に進む予定です。建築史は「様式・建物・人物」の対応を表で結びつけ、さらに最新の受賞・世界遺産・話題作を押さえると、新規問題まで含めて得点が安定します。