一級建築士【計画】住宅・集合住宅の計画を攻略|食寝分離・住棟形式・メゾネット・SI
計画シリーズの第1弾は、出題の核となる住宅・集合住宅の計画です。
住宅・集合住宅は、用語の意味と各方式の長所・短所の対比がそのまま問われます。「中廊下型はなぜ採光・通風で不利か」「メゾネット型のメリットは何か」——理由(趣旨)まで押さえると、似た用語のひっかけに強くなります。今回は住宅計画の基本理念から住棟アクセス形式、住戸断面形式、集合住宅の各種方式、SI(スケルトン・インフィル)まで一気に整理します。
⚠️ 内容は建築計画の一般的な解説です。寸法・年代は学習用の代表値で、細かい条件や例外があります。受験・実務では最新の資料で確認してください。
1. 住宅計画の基本理念(食寝分離・就寝分離・公私室分離)
戦後の住宅計画の出発点が、生活の質を高めるための「分離」の考え方です。**西山夘三(にしやま うぞう)**の住生活調査がもとになっています。
| 理念 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 食寝分離(しょくしんぶんり) | 食事をする場所と寝る場所を分ける | 衛生・生活時間の独立 |
| 就寝分離 | 親(夫婦)と子、子どうしの寝室を分ける | プライバシー・教育上の配慮 |
| 公私室分離(こうししつぶんり) | だんらん・接客の場(公室=LDK)と、寝室など私的な場(私室)を分ける | 来客動線と家族の生活動線を分ける |
これらを具体化したのが、1951年の**公営住宅標準設計「51C型」です。吉武泰水(よしたけ やすみ)らの研究室が設計し、狭い面積(約40㎡前後)でも食寝分離・就寝分離を実現した2DKで、後のnLDK(n+LDK)**の原型になりました。
食寝分離・就寝分離=西山夘三/それを具体化した51C型=吉武泰水ら。この対応はそのまま問われます。
居住面積水準(数値が問われる)
住生活基本計画で定める、住宅面積の目安です。最低限と、豊かに暮らす誘導目標の2段階で覚えます。
| 水準 | 内容(目安) |
|---|---|
| 最低居住面積水準 | 健康で文化的な生活に必要な最低限。単身25㎡、2人以上は10㎡×世帯人数+10㎡ |
| 誘導居住面積水準 | より豊かな住生活の目標。都市居住型(共同住宅)と一般型(戸建)で値が異なる |
計算の軸:最低水準=「10㎡×人数+10㎡」(単身のみ25㎡)。誘導水準は「都市型」と「一般型」の2本立て、と押さえる。
2. 住棟アクセス形式(最重要の比較)
住戸へどう到達するか(共用部の取り方)による分類です。長所・短所が表裏一体なので、対比で覚えます。
| 形式 | 特徴 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| 階段室型(ホール型) | 階段室ごとに左右の住戸へ。EVなしの低・中層に多い | 各住戸のプライバシー・通風・採光が良い/共用部が少ない | 階段室ごとにEVが必要で高層化・EV効率が悪い |
| 片廊下型 | 片側に廊下、反対側に住戸。中高層の主流 | 採光・通風を確保しやすい/EVを効率よく使える | 廊下側の居室はプライバシー・採光に配慮が必要 |
| 中廊下型 | 中央の廊下の両側に住戸 | 敷地利用効率(住戸密度)が高い | 住戸が振り分けられ日照が不均一/廊下が暗く通風が悪い/プライバシー△ |
| 集中型(コア型) | 中央コア(EV・階段・設備)の周囲に住戸を配置 | 超高層・狭小敷地に適しEV効率が最良 | 方位により採光・通風に差が出る |
| スキップフロア型 | 共用廊下を数階おきに設ける | 廊下のない階は通風・プライバシーが良い/共用廊下面積を減らせる | 廊下のない階は階段移動となり高齢者・バリアフリーに不利/避難計画に注意 |
| ツインコリダー型 | 2列の廊下の間に吹抜けを設ける | 中廊下型の採光・通風の弱点を改善 | 構成が複雑 |
| リビングアクセス型 | 居間(リビング)側を共用廊下に向ける | 廊下と住戸の生活が交わりコミュニティが生まれやすい | 居間のプライバシー確保に配慮が必要 |
暗記の軸:「効率(住戸密度)を上げる形式ほど、採光・通風・プライバシーが犠牲になりやすい」。中廊下型・集中型は効率型、階段室型は居住性型。
住棟の配置形式
複数の住棟を敷地にどう並べるか、も問われます。
| 配置 | 特徴 |
|---|---|
| 平行(並行)配置 | 同方向に平行に並べる。日照は揃うが単調になりやすい |
| 雁行(がんこう)配置 | ジグザグにずらして配置。各戸の眺望・プライバシー・採光を得やすい |
| 囲み型(中庭型)配置 | 住棟で中庭を囲む。コミュニティ空間ができるが、向きにより日照差 |
| ポイント(点)配置 | 塔状住棟を点在。開放感・通風を得やすい |
3. 住戸断面形式(フラット型とメゾネット型)
1住戸が何層を占めるかの違いです。
| 形式 | 内容 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| フラット型 | 1住戸が1層で完結 | 平面計画が単純/小住戸・バリアフリーに有利 | 上下階のプライバシー分離はしにくい |
| メゾネット型 | 1住戸が2層(住戸内に専用階段) | 共用廊下を1層おきにでき廊下面積減・プライバシー向上/上下で居間と寝室を分離でき戸建感覚 | 住戸内階段で面積ロス/小住戸に不向き/高齢者には階段が負担 |
| トリプレット型 | 1住戸が3層 | メゾネットの利点を強化 | さらに小住戸に不向き |
メゾネット型の最大の利点は、共用廊下を1層おきにできること。これにより廊下面積が減り、廊下に面さない階の住戸はプライバシー・通風が良くなります。
4. 集合住宅のさまざまな方式
接地のしかたや、居住者の関わり方による分類です。用語の定義がそのまま問われます。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| テラスハウス | 各戸が専用の庭を持つ接地型(低層)の連続住宅。戸境壁を共有する |
| タウンハウス | テラスハウスに、**共用の屋外空間(コモンスペース/コモンガーデン)**を加えた形式。土地を共有する |
| コートハウス | 各戸が**中庭(コート)**を囲んで配置される住宅。プライバシーと採光を両立 |
| コレクティブハウス | 各住戸は独立しつつ、共用のキッチン・食堂・居間などを持ち、家事・育児・食事を居住者が協同して行う |
| コーポラティブハウス | 入居希望者が組合をつくり、企画・設計の段階から参加して建設する方式。要望を反映しやすい |
ひっかけ注意:テラスハウス=専用庭/タウンハウス=+共用地(コモン)。「協同で暮らす」のがコレクティブ、「協同で建てる」のがコーポラティブ。語感が似ているので定義で区別します。
代表的な集合住宅の事例
事例名と特徴の対応も出題されます。
| 事例 | ポイント |
|---|---|
| 同潤会アパート | 関東大震災後の日本初期の鉄筋コンクリート集合住宅(現存せず) |
| ユニテ・ダビタシオン | ル・コルビュジエ。メゾネット+内部商店街を持つ大型集合住宅 |
| 代官山ヒルサイドテラス | 槇文彦。長期にわたり段階的に整備された低層の街並み |
| NEXT21 | **SI(スケルトン・インフィル)**と環境共生を実験した実証集合住宅 |
「日本初期のRC集合住宅=同潤会アパート」「メゾネット+商店街の大型住棟=コルビュジエのユニテ」は対応で覚える。
5. スケルトン・インフィル(SI)と可変性
長寿命化と、ライフスタイルの変化への対応の考え方です。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| スケルトン・インフィル(SI) | 建物を**スケルトン(躯体・共用設備=長寿命で固定)とインフィル(内装・住戸内設備=可変)**に分けて考える方式。インフィルだけを更新でき、長寿命化・可変性に有利 |
| フレキシビリティ | 間取り変更などに柔軟に対応できる性質。可動間仕切り・大スパン化で確保 |
| フリーアクセスフロア(二重床) | 床を二重にして配管・配線を通す。設備更新やレイアウト変更が容易 |
SIの考え方は「変わらないもの(スケルトン)と変わるもの(インフィル)を分ける」。これにより躯体を長く使いつつ、住戸内は世帯の変化に合わせて更新できます。
6. ○×でチェック
- 中廊下型は、敷地利用効率が高い反面、住戸の採光・通風やプライバシーで不利になりやすい。
- 階段室型は、EVを効率よく配置できるため高層住宅に最も適している。
- メゾネット型は、共用廊下を1層おきにできるため廊下面積を減らせる。
- スキップフロア型は、すべての階に共用廊下が面するためバリアフリーに優れる。
- テラスハウスは共用の屋外空間(コモン)を持つ点でタウンハウスと区別される。
- コーポラティブハウスは、入居希望者が組合をつくり企画・設計段階から参加して建設する方式である。
- 最低居住面積水準は、2人以上の世帯では「10㎡×世帯人数+10㎡」を目安とする。
- 雁行配置は住棟をジグザグにずらすことで、各戸の眺望やプライバシー、採光を得やすい。
答え
- ○:効率型の典型。採光・通風・プライバシーは犠牲になりやすい。
- ×:階段室型は各階段室にEVが必要で高層化・EV効率が悪い。高層の主流は片廊下型・集中型。
- ○:メゾネット型の最大の利点。
- ×:逆。共用廊下は数階おきで、廊下のない階は階段移動となりバリアフリーに不利。
- ×:説明が逆。共用の屋外空間を持つのはタウンハウス。テラスハウスは各戸の専用庭が特徴。
- ○:「協同で建てる」のがコーポラティブハウス。
- ○:最低居住面積水準の計算式(単身は25㎡)。
- ○:雁行配置の利点。平行配置は単調になりやすい。
まとめ
| テーマ | 押さえどころ |
|---|---|
| 基本理念 | 食寝分離・就寝分離=西山夘三/具体化した51C型=吉武泰水ら・nLDKの原型/最低居住面積水準=10㎡×人数+10㎡(単身25㎡) |
| 住棟アクセス | 効率(中廊下・集中)⇔居住性(階段室)のトレードオフ/片廊下型が中高層の主流/リビングアクセス型はコミュニティ重視 |
| 住棟配置 | 平行(単調)/雁行(眺望・採光◎)/囲み型(中庭・コミュニティ)/ポイント型(開放感) |
| 断面形式 | メゾネット=共用廊下が1層おきで廊下減・プライバシー向上、ただし小住戸・高齢者に不向き |
| 集合住宅の方式 | テラス(専用庭)/タウン(+コモン)/コレクティブ(協同で住む)/コーポラティブ(協同で建てる) |
| SI | スケルトン(固定・長寿命)とインフィル(可変)を分離 |
次回は計画分野の続き(事務所・商業建築、または各種建築の計画)に進みます。用語は「定義」と「長所・短所の理由」をセットで押さえるのが得点の近道です。