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一級建築士構造構造力学仮想仕事の原理単位荷重法たわみ勉強法2026年

一級建築士【構造】仮想仕事の原理・単位荷重法を図解で完全解説

はじめに

仮想仕事の原理は、たわみ・変位を求める強力な手法です。一級建築士試験では単位荷重法(バーチャルワーク法)として出題され、梁のたわみ計算や変位の求め方の核心となります。本記事では、概念の説明から図解・例題まで、試験に必要な内容をステップごとに丁寧に解説します。


仮想仕事の原理とは

仮想仕事の原理(Principle of Virtual Work)とは、「外力のなす仮想仕事 = 内力のなす仮想仕事」という力学の基本原理です。

構造力学では、これを変位計算に応用します。具体的には次の関係式が成り立ちます。

P̄ · δ = ∫ M̄ · M / EI dx

ここで、各記号の意味は以下のとおりです。

記号意味
仮想荷重(= 1 と置く)
δ求めたい変位(たわみ)
仮想荷重 P̄ による曲げモーメント
M実荷重による曲げモーメント
EI曲げ剛性(ヤング係数 × 断面二次モーメント)

P̄ = 1 と置くと、式は次のようにシンプルになります。

δ = ∫ M̄ · M / EI dx = (1/EI) ∫ M̄ · M dx

この式が単位荷重法の基本公式です。右辺の積分は「モーメント図の積算(グラフ積分)」と呼ばれ、図形的に計算できるため、試験での計算が大幅に効率化されます。


単位荷重法の手順

単位荷重法は、次の3ステップで変位を求めます。

  1. 実荷重のM図を描く → 実際に載っている荷重(P など)でモーメント図を描く
  2. 求めたい点に単位荷重 P̄ = 1 を載せてM̄図を描く → 変位を知りたい点に仮想の集中荷重 1 を載せてモーメント図を描く
  3. δ = (1/EI) ∫ M̄ · M dx を積算して求める → 2つのモーメント図を「積算」して変位を計算する

以下の図で2つの系を確認してください。

① 実荷重系 P PL/4 M図 ② 仮想単位荷重系(P̄ = 1) P̄=1 L/4 M̄図 δ = ∫ M̄ · M / EI dx (モーメント図の積算)

モーメント図の積算公式

∫ M̄ · M dx の積分は、モーメント図の形状(三角形・矩形など)によって公式化されています。試験では以下の2パターンが特に重要です。

モーメント図の積算公式 ①三角形×三角形 M₁ M₂ ∫M̄·M dx = ⅓ · L · M₁ · M₂ ②矩形×三角形 M₁ M₂ ∫M̄·M dx = ½ · L · M₁ · M₂

積算公式のまとめ

M図の組み合わせ積算公式備考
三角形 × 三角形(頂点が同じ側)⅓ · L · M₁ · M₂集中荷重の単純梁によく出る
矩形 × 三角形½ · L · M₁ · M₂等分布荷重と仮想荷重の組み合わせ
三角形 × 矩形½ · L · M₁ · M₂上と同じ(順序は無関係)

公式の根拠は、それぞれの図形の面積に重心位置の係数を掛けたものです。たとえば「三角形×三角形」では、三角形の面積(½ · L · M₁)と、もう一方の三角形の重心における高さ(M₂/3 × 2 = ⅔ M₂ではなく、積分の結果として ⅓ M₂ が出る)を掛け合わせた結果が ⅓ · L · M₁ · M₂ となります。積分を正確に展開すると

∫₀ᴸ (M₁/L · x) · (M₂/L · x) dx = (M₁ · M₂)/L² · [x³/3]₀ᴸ = (1/3) · L · M₁ · M₂

と求まり、公式が確認できます。


例題①:単純梁・中央集中荷重のたわみ

スパン L の単純梁の中央に集中荷重 P が作用するとき、最大たわみ δmax を仮想仕事法で求めます。

例題:単純梁(スパンL、中央集中荷重P)の最大たわみを仮想仕事法で求めよ STEP 1 実荷重のM図を描く P PL/4 M図 STEP 2 求めたい点に単位荷重P̄=1を載せてM̄図を描く P̄=1 L/4 M̄図 δmax = (1/EI) × ⅓ × L × PL/4 × L/4 = PL³/48EI ✓

計算の展開

STEP 1:実荷重のM図

単純梁の中央に P が作用するとき、支点反力は左右ともに P/2 です。モーメント図は中央で最大値 PL/4 をとる左右対称の三角形になります。

STEP 2:仮想荷重のM̄図

中央のたわみを求めたいので、同じ点(中央)に P̄ = 1 を載せます。M̄図も同様に左右対称の三角形で、中央の値は L/4 です。

STEP 3:積算

2つの三角形の積算公式(左半分と右半分にわけ、それぞれに ⅓ · (L/2) · M₁ · M₂ を適用して合計)を使います。

δmax = (1/EI) × [⅓ × (L/2) × PL/4 × L/4] × 2

     = (1/EI) × 2 × (1/3) × (L/2) × (PL/4) × (L/4)

     = (1/EI) × PL³/48

     = PL³ / 48EI

これは公式として覚えておく重要な値です。δmax = PL³/48EI


例題②:片持ち梁・先端集中荷重のたわみ

スパン L の片持ち梁の先端に集中荷重 P が作用するとき、先端のたわみ δmax を求めます。

実荷重のM図: 固定端(x=0)で最大値 PL、先端(x=L)で 0 になる右下がりの三角形です。

M(x) = P(L - x) (x は固定端からの距離)

仮想荷重のM̄図: 先端のたわみを求めたいので、先端に P̄ = 1 を載せます。

M̄(x) = 1 × (L - x) = L - x

積算:

2 つの図形はともに同じ向きの三角形(固定端が頂点)です。三角形 × 三角形の公式を使います。

δmax = (1/EI) ∫₀ᴸ M̄ · M dx

     = (1/EI) × ⅓ × L × PL × L

     = PL³ / 3EI

δmax = PL³/3EI は片持ち梁の先端たわみの基本公式として、必ず覚えておきましょう。


まとめ

項目ポイント
仮想仕事の原理の基本式P̄ · δ = ∫ M̄ · M / EI dx
P̄ = 1 と置いた式δ = (1/EI) ∫ M̄ · M dx
三角形 × 三角形の積算⅓ · L · M₁ · M₂
矩形 × 三角形の積算½ · L · M₁ · M₂
単純梁・中央集中荷重のたわみPL³/48EI
片持ち梁・先端集中荷重のたわみPL³/3EI

試験対策のポイント

  1. 2つの系を明確に分けて描く — 実荷重系と仮想荷重系を混同しない
  2. 求めたい変位の位置に P̄ = 1 を載せる — たわみを求めたい点と荷重点を一致させる
  3. 図形の組み合わせパターンを覚える — 三角形×三角形(⅓)と矩形×三角形(½)の2パターンが最重要
  4. 対称性を活用する — 左右対称な梁は半スパンで計算して2倍にする

仮想仕事の原理(単位荷重法)は、たわみだけでなく角変位(たわみ角)や水平変位の計算にも応用できます。仮想荷重を「求めたい変位方向に対応したもの」に置き換えるだけで同じ手順が使えるため、理解を深めておくと応用問題にも対応できます。