一級建築士【構造】ラーメン構造の解き方|M図・Q図・N図を図解で完全解説
一級建築士の構造分野において、**ラーメン構造の応力図(M図・Q図・N図)**は最頻出テーマの一つです。毎年必ずと言っていいほど出題され、確実に得点できる分野でもあります。
この記事では、門型ラーメンを題材に、反力計算から各応力図の描き方まで、図解を交えて完全解説します。
ラーメン構造とは
ラーメン(Rahmen) とはドイツ語で「骨組み」を意味します。建築構造においては、柱と梁の接合部が剛接合(ピン接合ではなく回転不可) になっている骨組みのことを指します。
| 構造種別 | 接合部 | 曲げモーメントの伝達 |
|---|---|---|
| トラス構造 | ピン接合 | 伝わらない(軸力のみ) |
| ラーメン構造 | 剛接合 | 伝わる(曲げ・せん断・軸力) |
剛接合であるため、荷重が作用すると接合部(節点)で曲げモーメントが連続的に伝達されます。これがトラスとの本質的な違いです。
門型ラーメンの基本形
最も基本的な形状が 門型ラーメン(Portal Frame) です。2本の柱と1本の梁で構成され、柱脚の境界条件(ピン・固定)によって静定・不静定が変わります。
上図の門型ラーメンでは、A・B節点が剛接合(青い四角記号)、C・D節点がピン支点です。
静定・不静定の判別
ラーメン構造を解く前に、静定構造か不静定構造かを判別することが重要です。
判別式
r + m = 3n + h → 静定
r + m > 3n + h → 不静定(超過分が不静定次数)
r + m < 3n + h → 不安定
各記号の意味:
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| r | 反力数(ピン支点=2、ローラー=1、固定端=3) |
| m | 部材数 |
| n | 剛節点数 |
| h | ヒンジ(内部ピン)数 |
門型ラーメン(両端ピン)の場合
r = 2 + 2 = 4(両端ピン支点)
m = 3(左柱・梁・右柱)
n = 2(A節点・B節点が剛接合)
h = 0(内部ヒンジなし)
左辺: r + m = 4 + 3 = 7
右辺: 3n + h = 3×2 + 0 = 6
7 > 6 → 1次不静定
試験のポイント:両端ピン支点の門型ラーメンは1次不静定です。一方、片端をローラーにすると r=3、左辺=6=右辺となり静定になります。試験では静定ラーメンが頻出です。
例題①:門型ラーメン(水平荷重 H)
問題設定
- 柱高:l(左柱 C-A、右柱 D-B)
- 梁スパン:L(梁 A-B)
- 支持条件:C点はピン支点(水平・鉛直反力あり)、D点はローラー支点(鉛直反力のみ)
- 荷重:左柱の中間高さ(C点からl/2の高さ)に水平荷重 H(右向き)
ステップ1:反力を求める
C点はピン支点(水平反力 R_Ch、鉛直反力 R_Cv)、D点はローラー支点(鉛直反力 R_Dv のみ)。未知数は3つで静定です。
(1)水平方向の力の釣り合い:
ΣX = 0:R_Ch + H = 0
∴ R_Ch = -H(左向き)
(2)D点まわりのモーメント釣り合い:
ΣM_D = 0:
R_Cv × L - H × (l/2) = 0
∴ R_Cv = Hl / (2L)(上向き)
(3)鉛直方向の力の釣り合い:
ΣY = 0:R_Cv + R_Dv = 0
∴ R_Dv = -Hl / (2L)(下向き)
整理した反力:
- R_Ch = -H(左向き)
- R_Cv = +Hl/(2L)(上向き)
- R_Dv = -Hl/(2L)(下向き)
ステップ2:M図・Q図・N図を描く
各部材(左柱 C-A、梁 A-B、右柱 D-B)について、切断法で応力を求めます。
左柱 C-A(下端 C から高さ y の断面):
区間 0 ≦ y < l/2(荷重作用点以下)
M(y) = -R_Ch × y = H × y
Q(y) = R_Ch = -H(左向き → せん断)
N(y) = -R_Cv = -Hl/(2L)(圧縮)
区間 l/2 ≦ y ≦ l(荷重作用点以上)
M(y) = H × y - H × (y - l/2) = Hl/2
Q(y) = R_Ch + H = -H + H = 0
N(y) = -Hl/(2L)(圧縮)
梁 A-B(左端 A から距離 x):
M(x) = Hl/2 - R_Cv × x = Hl/2 - (Hl/2L) × x
→ x=0 で M = Hl/2、x=L で M = Hl/2 - Hl/2 = 0
Q(x) = -R_Cv = -Hl/(2L)(一定)
N(x) = 0(左柱上半分でQ=0のため、梁に水平力は伝わらない)
右柱 D-B(下端 D から高さ y):
M(y) = 0(D点はローラー支点→水平反力ゼロ、柱全体で M=0)
Q(y) = 0(水平反力なし)
N(y) = -R_Dv = Hl/(2L)(引張)
M図・Q図・N図(例題①)
例題②:門型ラーメン(鉛直荷重 P)
問題設定
- 柱高:h(左柱 C-A、右柱 D-B)
- 梁スパン:L(梁 A-B)
- 支持条件:C点はピン支点、D点はローラー支点(静定)
- 荷重:梁中央(スパン L/2 の位置)に集中荷重 P(下向き)
反力を求める
C点には水平・鉛直反力、D点には鉛直反力のみ(ローラー)。
水平方向:
ΣX = 0:R_Ch = 0
D点まわりのモーメント:
ΣM_D = 0:
R_Cv × L - P × (L/2) = 0
∴ R_Cv = P/2(上向き)
鉛直方向:
ΣY = 0:R_Cv + R_Dv - P = 0
∴ R_Dv = P/2(上向き)
整理した反力:
- R_Ch = 0(水平反力なし)
- R_Cv = P/2(上向き)
- R_Dv = P/2(上向き)
M図・Q図・N図(例題②)
左柱 C-A(高さ y):
M(y) = 0(水平反力がないため)
Q(y) = 0
N(y) = -R_Cv = -P/2(圧縮)
梁 A-B(左端 A から距離 x):
0 ≦ x ≦ L/2:
M(x) = R_Cv × x = (P/2) × x
最大 M_max = PL/4(x = L/2 で)
Q(x) = +P/2(一定)
L/2 ≦ x ≦ L:
M(x) = (P/2) × x - P × (x - L/2) = P/2 × (L - x)
Q(x) = P/2 - P = -P/2(一定)
右柱 D-B(高さ y):
M(y) = 0(水平反力がないため)
Q(y) = 0
N(y) = -R_Dv = -P/2(圧縮)
鉛直荷重のみの場合のポイント:C点での水平反力がゼロなので、柱にはせん断力もモーメントも生じず、軸力(圧縮)のみが作用します。梁はシンプルビームと同じ応力状態になります。
M図の描き方のコツ
コツ① 剛節点でモーメントが釣り合う
剛節点では、各部材端のモーメントの和がゼロになります。
節点 A において:
M(左柱上端) + M(梁左端) = 0
これを利用すると、一方の部材のM値がわかれば他方が求まります。
コツ② M図は引張側に描く
- 部材の**引張側(繊維が伸びる側)**にM図を描くのが原則
- 柱の外側に山が来たら「外側引張」
- 梁が下に凸なら「下側引張(スパン中央付近で一般的)」
コツ③ 境界条件の確認
| 支持条件 | 端部モーメント |
|---|---|
| ピン支点 | M = 0(必ず) |
| ローラー支点 | M = 0(必ず) |
| 固定端 | M ≠ 0(支点反力モーメントあり) |
| 自由端 | M = 0 |
試験頻出パターン
パターン① 水平荷重の反力計算
水平荷重が柱に作用する問題では、ローラー側は鉛直反力のみ(水平反力ゼロ)であることを最初に確認します。次に荷重の作用高さを考慮したモーメント釣り合い式を立てます。
水平荷重 H(高さ a で作用)、スパン L の場合:
ΣM_D = 0:R_Cv × L = H × a
∴ R_Cv = Ha / L
パターン② 節点のモーメント釣り合い
剛節点でのモーメント釣り合いを使った問題は頻出です。
節点に集まる部材端モーメントの和 = 外力モーメント
例:外力なし剛節点では
M_柱上端 + M_梁端 = 0
パターン③ 対称性の活用
荷重・形状ともに対称(または逆対称)なラーメンでは:
- 対称荷重:対称軸上のせん断力 Q = 0、軸力 N と曲げモーメント M のみ
- 逆対称荷重:対称軸上の曲げモーメント M = 0、Q と N のみ
この性質を使って未知数を半分に減らせます。試験の時間短縮に直結します。
対称な門型ラーメンに等分布荷重 w が作用する場合:
中央断面での Q = 0(対称性から)
→ 梁の自由体図が単純化される
まとめ
| 確認事項 | チェックポイント |
|---|---|
| 静定判別 | r + m = 3n + h を確認 |
| 反力計算 | ΣX=0、ΣY=0、ΣM=0 の3式を立てる |
| M図 | 引張側に描く、ピン・ローラー端は必ず M=0 |
| Q図 | 集中荷重点でジャンプ、部材内は線形変化 |
| N図 | 圧縮→青(負)、引張→赤(正)で色分け |
| 剛節点 | 各部材端モーメントの和 = 0 を確認 |
ラーメン構造の問題は、反力計算 → 切断法 → 各部材の応力図という手順を体に染み込ませることが最短の合格への道です。過去問を繰り返し解いて、M図を見た瞬間にどの荷重パターンかわかるようなレベルを目指しましょう。