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建設業の残業・熱中症問題、現場からの本音|学生アンケートと企業の動きから考える

建設業の「働き方」を巡る議論が、ここにきて再び熱を帯びている。

残業規制の緩和、学生の意識調査、そして過去最多を記録した熱中症死傷者数——。

数字と現場の声を重ねると、この業界が抱える構造的な問題が浮かび上がってくる。


学生300人のアンケートが示したこと

建通新聞社が18〜25歳の学生300人を対象に行ったアンケート調査によると、80%以上が一定の残業を受け入れる姿勢を示した。

また「若いうちの長時間労働」にも80%が肯定的だという。

一見すると「若者も残業を許容している」と読める数字だ。

「月の残業時間、どの程度まで受け入れられますか?」という設問への回答がこちらだ。

月の許容残業時間(学生300人アンケート) 受け入れられない 15時間まで 30時間まで 45時間まで 60時間まで 75時間以上 15.0% 残業ゼロを望む声も 38.0% ←最多 31.3% 9.7% 3.7% 2.3% 出典:建通新聞社 学生300人アンケート(18〜25歳)

最多は「15時間まで」(38%)。これは週4時間弱に相当する。

決して多くを望んでいるわけではない。

建築業界に勤めるものなら誰もが思うだろう。 

15時間はホワイトだと、、、、

実際の現場では45時間ギリギリは当たり前(正直超えてるやろな、、、)

それでも会社は工夫しながら残業を減らしている段階なのです


残業規制緩和は「逆行」ではないか

近年、建設業の時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)が適用されたばかりだ。それに対して一部では残業規制の緩和を求める声も上がっている。

正直に言う。他の先進国と比較して、これは逆行していると思う。

欧州では週労働時間の上限を厳格に定め、違反すれば企業に重いペナルティが課される。

残業を「当たり前」とする文化は、すでに国際的には時代遅れとされている。

問題の本質は「残業時間の上限」ではなく、残業なしでも生活できるだけの基本給・生産性の向上にあるはずだ。

規制を緩めることで短期的な人手不足は補えるかもしれない。

しかし長期的には担い手離れを加速させるだけになりかねない。

緩和を求める人たちも本当の理由は働きたいじゃないよ。

お金がないから、仕事が終わらない量あるから残業するんです。

ここで戻せば悪き風習はそのまま残るのではないかと感じます。

一方で、確実に変わっている現場もある

現場の実態をすべて悲観的に見ているわけではない。

私自身、仕事で多数のゼネコンとやり取りをする。その中で感じるのは、交代勤務や週休2日・3日制の導入によって、残業を着実に抑えている会社が増えているという事実だ。

以前は「現場は休めない」が常識だったが、今は「現場でも休める」体制をつくっている企業が確実に増えてきた。

制度が整っても文化が変わらなければ意味がない——その点も含めて、少しずつではあるが風向きは変わっていると感じる。

こう言った動きも踏まえてもう少し様子を見るべきだと私は思います。


熱中症:2025年は過去最多、そして義務化へ

もうひとつ、深刻な問題が熱中症だ。

建通新聞の報道によると、2025年の建設業における熱中症死傷者数は292人で、前年比28.1%増と過去最多を記録した。鴻池組の幹部は「25年は例年の2倍になった」とコメントしている。

これに対し、2025年6月1日からは労働安全衛生規則の改正により、建設現場の熱中症対策が義務化された。WBGT(暑さ指数)28度以上の環境での作業管理が法令上の義務となり、各社の対応が一気に加速している。


企業の取り組み:どう変わってきたか

主要ゼネコン・自治体の動きをまとめると、すでにかなり踏み込んだ対策が始まっている。

建設業 熱中症対策の主な取り組み(2025年) 企業・自治体 主な取り組み 鴻池組 酷暑対策ロードマップ策定 サマータイム導入・月単位の閉所 週休3日の実施 大林組 7〜8月の作業を7時〜13時に前倒し 全国現場へ拡大予定 安藤ハザマ AI暑熱対策カメラ「カオカラ」全社導入 高リスク判定をリアルタイム通知 静岡県 作業時間を早朝5時〜午後2時に変更 高知県 午前11時〜午後2時を休憩とする 「建設工事クールワークタイム」実施 出典:建通新聞・各種報道をもとに作成(2025年)

特に注目したいのが作業時間の大幅な前倒しだ。大林組の「7時〜13時」、静岡県の「5時〜14時」はいずれも従来の常識を覆す取り組みで、炎天下の午後作業を回避するという発想の転換が見える。

また安藤ハザマのAIカメラ活用は、「管理する人間が気づく前に技術が察知する」という新しいアプローチだ。体調の変化を客観的に把握できるこの仕組みは、現場監督の負担軽減にもつながる。


課題はまだある——早朝化の副作用

一方で、作業時間の早朝化には新たな課題も生じている。

近隣への騒音問題だ。早朝5時・7時からの作業開始は、住宅地に近い現場では近隣住民への配慮が不可欠になる。これは建設会社単体では解決しにくい問題で、発注者・行政を巻き込んだルール整備が求められる。


まとめ:変わるべきは「稼ぎ方の構造」

建設業の残業問題と熱中症問題。どちらも根っこには同じ課題がある。

働く人が、無理をしなくても報われる構造になっているか。

残業しないと稼げない賃金体系、炎天下でも止まれない工程管理——これらは個人の努力や意識改革だけでは変えられない。制度・文化・発注慣行がセットで変わらなければ、学生のアンケート結果がどれだけポジティブに見えても、担い手は離れていく。

変化の兆しは確実にある。ゼネコン各社の取り組みはその証拠だ。

ただ、その変化が業界全体に広がるスピードが、問われている。


参考:

  • 建通新聞「いま考える 建設業の働き方(1)若者が求めるのは納得感」
  • 建通新聞「いま考える 建設業の働き方(2)夏季の労働環境を変える」
  • 労働安全衛生規則改正(2025年6月1日施行)
  • 株式会社アンドパッド「建設業における熱中症対策義務化後の実態調査」